【Outer Wilds二次創作】無限軌道の奏者たち
センサーが文字光を検出し、翻訳プロンプトが実行された。
幾千の書記情報をおさめた記録テープが回転する。静まりかえった博物館の中でカタカタと音を響かせて、変換がはじまる。はるか古代の異種族の言語から、Hearthianの言語へと。
[CASSABA:あともう少しだ! FILIXと私で建設を終えた。FILIXはデバイスの調整にはそう長くはかからないと言っている]
いにしえの遺構の表面で細い曲線を描く光の文字と、翻訳機械のモニターが映し出す光の文字。ふたつを交互に見比べる。装置のボタンを押し続ける指を、一瞬たりとも緩めない。
ここまでは問題ない。あらかじめ翻訳されているとおりだ。隣でおなじものを見守るHalが、小さく息をのむ。
「……次は? いける?」
「やってみるよ」
私は『文末』を見つける。『送り』に照準を合わせ、所定の信号を送る。
光が走り出す。軌跡が繋がる。
[FILIX:ラッキーな事にアトルロックには大気がないから調整は簡単なはずよ。いろいろあったけれど、ようやく捜索を再開できてうれしいわ!]
装置のモニターにあらたに浮かんだ文章を、1文字ずつ読み取った。もう頭の中にすっかり刻み込まれているそのテキストを、プリントした資料とも念入りに照合した。
まちがいない。
「……完璧だ」
「うん」
どちらからともなくつぶやいた。数秒の沈黙。
それから間欠泉の噴出のごとく、私たちは歓声をあげた。あとで聞くところによると、それは2階で管制業務に従事していたHornfelsに飲み物を吹き出させたらしい。
「やった! やった!! 成功だ! お前は天才だよHal!」
「お前のおかげだよ、我が友! とうとう完成だ! 私たちの翻訳ツールが!」
周知のとおり、Nomaiのスクリプトの表記体系は、私たちHearthianの言語のそれとは大きく異なる。
一見、それはただのシンプルな曲線だ。けれどよく観察すると、一本の線に見えるその光は複雑な文様をもち、ひとまとまりごとに一定のパルスを発していることがわかる。その形、明滅の周期、大小などによって意味上の区別をつけることができる。
私たちHearthianは、炭や鉱物を材料にした筆記具を用いて文字記号を記録する。特別な記念碑(たとえば墓石だ)なら、頑丈な石に刻んで破損や紛失を防げるようにする。耐久度はそれより劣るけれど、木の板に焦げ目をつけて記す方法もある。
Nomaiの記述方法はそのどれでもない。例えるなら、私たちがコンピュータで情報を出入力するのに近いやりかたをしている。紙も使われていたけど長い歳月で風化して失われたのかもしれないと、Riebeckは仮説を立てている。実際がどうあれ存在を確認できているNomaiの文書は、なんらかの遺構や自然の岩壁に残されたものと、さまざまな種類の記録装置におさめられたものしかない。
そんなNomaiの文章は、読み手の反応を必要とする。
1本1本の文章曲線の終端には、特殊な作用素がある。これは、まさしくコンピュータのテキストを進めるやつと一緒だ。いわゆる「ページ送り」を実行するコマンドをそこに入力することで、次の文章が現れる。
Nomaiがこれをどうやっていたのかは正確にはわかっていない。これもRiebeckの仮説だけど、Nomaiの目には発光素子があったのかもしれない。つまり、私たちHearthianの目は光を受け取ることしかできないが、Nomaiは目を自分で光らせることができたんじゃないかということ。喉を使って声を出し、耳でそれを聞いて情報をやりとりするのと同じように、目、あるいは他のなんらかの器官によって発光し受光することでコミュニケーションを取っていた。通信の手段として光はさまざまな面で音にまさるから、宇宙空間でその能力は優位に働いたことだろう。
その仮説をもとに、テキストの送りを実行できる投光器がまず開発された。この開発は難しくなかった──簡単に試すことができるという意味で。ありとあらゆる波長の光を、反応があるまで照射してみるという、誰でもできて誰でも最初は楽しいけど、そのうち誰もがうんざりしてくる方法だ。もしこの宇宙のどこかにNomaiの生き残りが存在していたら、かくもエレガントな総当たり方法で正解にたどりついた私たちを、なまあたたかい微笑でねぎらってくれたことだろう。
ちなみにこの研究においてもっとも貢献したのは、私たちじゃなく(その頃まだ私たちはまだTephraぐらいのひよっ子だ)、Tektiteだった。何万回もの試行にくたびれきったHornfelsとRiebeckをひやかしにいったところ、安全メットにつけていた切れかけのロウソクの光で反応が出たらしい。それと同一の波長の光を出せる装置がめでたく開発された。
読み手が「読んだ」という意志を送ることで、次の文章が開示される。言葉を聞き終えてその続きをうながすという、まるでリアルタイムの会話のようなシステム。Gabbroあたりは「私も創作家だから、続きを見たいって声を聞けないとやる気が出ないのはよくわかるな」とか言っていた。そういうことじゃないと思うんだが。そもそもGabbroがやる気を出すことなんてあるのか?
それはさておき。
ひとつひとつの光の書記素そのものは肉眼でも認識できるので、たとえば地名や人名のような頻出単語なら、専門的な知識がなくても読み取れる。Riebeckは数千のパターンを暗記していて、投光器を使いながらさまざまなテキストを自力で翻訳できる。けどそれはRiebeckのなみはずれた熱意と努力のたまものであって、多くの探索者にとっては困難なことだった。
光のパターンを検出して分析し、私たちの言語に置き換える装置。そして読み手の側からの反応を送信するための装置。それらを組み合わせ、宇宙空間でも安定して動作し、かつ携帯可能なサイズにまで落としこむ。それらの条件を満たした翻訳ツールを作ること。この星系で高度文明を築き、そして突然消えた先住民族の足跡をたどるために、それは宇宙プログラムの長年の悲願だった。その悲願を、今日、私とHalは達成したのだ。
私とHalは床にぺったり座りこんで、おたがいをねぎらった。
「モーターのノイズ干渉を取り除くのがいちばんの難関だったな。お前があきらめずに何度でも設計をやり直したからなんとかなった」
「あれは私だけでやれたんじゃない。SlateやGneissからもずいぶんアドバイスをもらったんだ。Halのほうこそ頑張っただろ、Riebeckと徹夜でパターン解析したりしてさ」
「ああ、Riebeckにもずいぶん付き合ってもらったよな。あとでお礼を言わないと」
「それにしても大変だったよなあ。私も、整理した翻訳データをこれでぜんぶ入力した! と思ったら、途中から5000個ぐらいぜんぜん関係ない単語と紐づけされてたことに気づいた時は吐くかと思ったもんな。『いつからここに』って訳すところが『のいここに』とかになったりしてさ」
「吐くかと思ったっていうか、あれはじっさい吐いてたよ、お前」
「ええ、そうだっけ? 私が? Halじゃあるまいし」
「あの時はパニックになってたから記憶が飛んでるんだろ。でも私は忘れないよ。なにせお前が私と一緒になにかしてて私よりさきに具合が悪くなるなんて、あれが初めてのことだったからな!」
ああ、今となってはなにもかもがいい思い出だ。
笑いあっているところに、2階で仕事をしていたHornfelsが袖で口元をぬぐいながら降りてきた。
「やあ、ひよっ子たち。その様子だとうまくいったようだな」
「ああHornfels、見てくれ。大成功だよ!」
私たちはわれ先にと立ちあがり、さっきと同じように翻訳ツールを実演してみせた。ちゃんと再現性も確保できたことに私もHalも安堵しつつ、どうだ、という顔でHornfelsを振り返った。
「素晴らしいな……」
これまでの苦労に十二分に報いてくれる表情が、Hornfelsの顔にあった。モニターの中で私たちの言語で表示されたNomaiの言葉のひとつひとつを、私たち以上にゆっくりと噛みしめるように読んで、それから言った。
「お前たちはOuter Wilds Venturesの誇りだよ」
うわあ。照れ臭いけど、なんて気分がいいんだろう。ほんとうに今日は人生最高の日だ。いや、それは言いすぎかもしれない、あの日の次ぐらいに最高だ。
順番はなんだっていい。とにかく最高だ。
Halもおなじ心境のようで、口元をゆるめながら鼻をかいたりしてる。あんまり興奮させるのはよくないけど、一緒に喜べるのが本当にうれしい。
「ちょうど無線でRiebeckと話していたんだ。脆い空洞に行くと言っていた」
と、Hornfelsは先輩飛行士の最新情報を教えてくれた。
「アトルロックへの初飛行のあとずいぶんぐずぐずしていたが、いよいよ覚悟を決めたってところだな。明後日には出発するそうだ」
「そうなんだ。見送りの時にいい報告ができるよ!」
Halの声がはずんだ。言語解読でRiebeckの意見はずいぶん参考になったし、Nomaiの文書を簡単に読み解けるようになることを誰よりも楽しみにしていたひとりだ。きっとすごく喜んでくれるだろう。
それから私のほうの重要な予定についての話になった。Hornfelsはこころもち顔をひきしめた。
「お前は明日の飛行が最終試験だ。木の炉辺を一人でぐるっと周回飛行。それを無事に終えられたら、宇宙へ出るためのソロ飛行の発射コードを渡そう」
胸元から高揚感がわきあがった。いよいよだ。私はこの星を出て宇宙の旅に出る。宇宙プログラムのパイロットとして、あの英雄Feldsparにも負けないような冒険をしてくるんだ。Halと力を合わせて作り上げた翻訳ツールと一緒に!
「ああ。楽しみだ!」
「そういえばお前、楽器はどうするんだ?」
「Gneissが言うには、私にはまだ具体的な計画が定まってないから、まずどこかの星に行って拠点を作って、どういう探索をやっていくか決めて、それからだって。そうすれば私にどんな楽器がいちばん合うのかがわかってくるから、ってさ」
旅人の楽器にもちろん憧れはあったけど、楽器の演奏は私のやりたいことの中ではまだそこまで上位のことじゃない。私はまず、いろんな星を自分の目で見てみたい。どの星を探索拠点にするかは、そのあとじっくり決めればいい。そんなわけで私はGneissのその提案には不満はなかった。
「でもそれじゃあシグナルスコープで信号を拾えないじゃないか」
親友のほうは不満そうで心配そうだった。とはいえHalの心配症はいつものことだ。というか、どういうわけか私のまわりには心配性しかいない気がする。
Hornfelsがかわりに答えた。
「心配ない。Slateが開発した追跡装置があるよ。深宇宙衛星が生成するリアルタイムマップと連動して、探査艇や飛行士本人の現在位置を把握できるようになっている」
「それは知ってる。でもそっちは楽器を鳴らして出す信号とは違って、生きてるか死んでるかわからないやつだろ?」
「まあ……それはうん、そうなるな」
Hornfelsはてきとうにごまかすというのが苦手だ。
「バイタルの数値も管制からモニターできるようにならないの?」
「そこまで通信データ量を増やすと送受信エラーが起きやすくなる。より指向性の強い通信機器があれば解決できるかもしれないが、いまの技術では宇宙服に搭載できるようなものは難しいだろう」
「それにいやだよ。いちいち生命維持系をチェックされてたら、なにかあるたびにすぐ『もう戻れ!』とか『それ以上は無理だ、帰還しろ!』とかうるさく言われそうじゃないか」
宇宙飛行士である私が率直な意見を述べると、ふたりは顔を見合わせた。
「研究開発を急ぐべきだという気がしてきた」
「だろう? こいつの出発までにSlateになんとかしてもらってよ」
「……まあ、とにかくふたりとも、今日はもう帰ってゆっくり休んでおきなさい。明日の飛行に備えて、な」
その言いつけをちゃんとしっかり守ったというのに、私は事故を起こした。派手に。
Hornfelsたちは、なかば安堵、なかばあきれ顔だった。私の怪我はたいしたことなくて、Gneissの家で簡単に手当てをしてもらうだけでよかった。あさってには治っているだろう。が、探査艇のほうが……だめになった。
「あれは私のミスじゃないよ! 逆進ロケットが急に鼻づまりみたいになって反応しなくなったんだ」
私は叫んだ。言い訳じゃない! 管制局に私の機体ステータスをリアルタイムでモニタリングできる機能さえあれば本当だってわかったはずだ。
私はどこにもぶつかることなく測地線に沿って飛びつづけ、スカイシャッターみたいに木の炉辺上空を一周した。あとは村の電波塔の近くあたりに着陸するだけってところだったのに、逆噴射ができなくなった。焦りながらもスカウトを発射すれば反動で減速できることをとっさに思い出して、それでどうにかスピードを落としながら降下したんだけど、船の脚が折れ、機体が横転し、コックピットにヒビが入り、外殻の一部が破損した。脱出してから逆進ロケットが軽い爆発を起こした。
この期に及んで操作技術が足りてないなんて思われたくないから、私はそのまま正直に話した。けど話したあとでしまったと思った。Gossanが目の色を変えてSlateに掴みかかったから。
「Slate、お前また勝手になにか変えたな!?」
「ふん、この程度の微調整で事故を起こしてるようじゃ、宇宙で不測のエンジントラブルが起きた時に対処できんぞ。地上でどうにかできるうちに経験できてツイていたと思え」
Slateは昔からこういうやつだから、私はいまさら驚いたりも怒ったりもしない。
けどGossanは片耳をぴくぴく動かして、口の端にいびつな笑みをつくった。これは本当によくない。
「なるほどな、もっともだ。お前も村のベッドで安静にしてられる今のうちに、いろいろわからせてやったほうがいいな?」
「私が寝込んだら誰が探査艇を修理するんだ、ええ?」
「もう、やめてよふたりとも。けんかならよそでやってくれ」
私はうんざりした顔をつくってふたりに見せた。Gossanが私のために怒ってくれるのは嬉しい。けど、これからはどんなことにもひとりで対処できるようにならなきゃいけないっていうSlateの言い分はわかる(腹は立つ)。なんにせよ殴り合いみたいなことをされるのは、やっぱりいやだ。
「いいよ。今回は私のほかはだれも怪我してないんだし」
そう言うと、年長者たちは少々ばつの悪い顔で、年長者にふさわしいふるまいを取り戻すことにしたようだった。それからHornfelsが、だれが悪いかなんかよりはるかに重要な話題のほうにきりかえてくれた。
「Slate、船はどれくらいで直せる?」
「そこまで深刻な損傷は見られないが、この際だ、総点検しよう。負荷がきている部分はほかにもあるはずだから。ちょうどコンピュータの中身もアップデートできないかと思っていた。ひとついいアイディアがあるんだ」
またわけのわからん改造を試す気か、というたぐいのことをGossanの表情から読み取ったらしく、Slateはもう少し説明した。
「機体性能に直接関わるものじゃない。ナビシステム関連だ。航行記録と宇宙服のHUDを連動させて、過去に探索した場所にマーカーを付けられるようにする。まあこのひよっ子はどうせ行き当たりばったりで飛び回るに決まってるから、無用の長物になるかもしれんが」
だからほんとにそういう言い方はさあ。
でもじっさい、発射コードさえ受領すれば私は私の行く先を自由に決められるんだ。アトルロック周回軌道までコーチと一緒に飛んでみろとか、どこも寄り道せずに木の炉辺を一周しろとか、そんなことはもう誰も言わない。
旅がますます楽しみになってきた。飛行がおあずけになるのは残念だけど、私だって昔みたいな子どもじゃない。1週間や2週間くらいおとなしく待てる。その間にもっと訓練して、宇宙のことを勉強しておこう。それで船がパワーアップして戻ってきたらすぐに出発だ。
私はわくわくしながら聞いた。
「で、それも含めて、どれくらいで私は宇宙に行けるんだい?」
* * * *
「3ヶ月は長いな」
すっかりうなだれてふて寝してしまったひよっ子飛行士をあとにして、創設メンバーたちはそれぞれの住処への帰途についた。道すがら、Gossanは目の痕を押さえ、焦げマシュマロを噛み潰すような表情をしていた。
「まあ船が動かなければひとりで勝手なことをしようもないだろうが……またしばらく、なだめるのが大変だ」
「安全に配慮ってやつをワークフローに入れなきゃならんのなら、それくらい要る。入れなくていいなら3日後にでも飛べるようにしてやるがな」
「じっくりやってくれ」Hornfelsがため息をつく。
「お前だってそのほうがいいだろう、Gossan」
と、Slateはまだ怒気を消しきれていない仲間へ水を向けた。
「例の翻訳ツールが完成すればもう出発を我慢させられなくなるが、本当はあのひよっ子のソロ飛行にはまだ不安があると言ってたろうが」
「Slate、お前まさかそのために?」
目をみはるGossanに、Slateの返しは氷点下のものだった。
「この私がそんなことのために大事な船を破損させるようなことをすると思うか?」
教え子の心を痛めない方法でどうにかこの狂ったエンジニアを殴り飛ばすことはできないかと考え始めるGossanを無視し、SlateはHornfelsのほうへ顎をしゃくった。
「そういやその翻訳ツールだが、ひよっ子の待機中は誰かほかのやつに使わせたらどうだ? せっかく完成させたのに持ち主と一緒に寝かせておくんじゃ宝の持ち腐れだろう」
「ああ、それは私も考えていた」
Hornfelsが相槌をうつ。
「ちょうどRiebeckが発つしな。Chertでもいいだろう。そろそろいったん帰還する頃合いだ。Gabbro……はまた巨人の大海に行ったばかりだから、なにか特別なことでもないかぎりしばらく戻らないだろうが」
「Gabbroに持たせるなら翻訳機より通信機だな。あいつはすぐ故障しただの通信障害だの適当を言って連絡をさぼる。次に帰還したら無線をもう1台、探査艇にくくりつけてやる」
「ハハ、Slate、それは実に有意義な改造だ」
他の飛行士たちのことに話題が移る中、Gossanは教え子とHalのことにまだ考えを馳せていた。
使える道具を無駄にせず有効に使うことは、この惑星の限られた資源で星系の調査を行う上できわめて重要なことだ。ただあいつらがそれで納得するかな、とGossanは内心で思っていた。Halはまだ聞き分けがあるが、あのひよっ子のほうは、こうと決めたらてこでも動かないところがあるから……。
Gossanの懸念は完璧に的中した。
親友の宇宙への出発が延期になることを伝えられ、翻訳ツールをRiebeckに使わせることをHornfelsから提案されて、Halはいい顔をしなかった。
「せっかく苦労して完成させたんだ。寝かせておくのはもったいないだろう?」
「でも、Riebeckは自分でNomai語を翻訳できるんだよ?」
「それはそうだが、そらで読めるわけじゃない。ごく一部だけだ。時間をかけずに正確に解読することができるようになれば安全な探索の助けにもなる。それでなくとも脆い空洞は危険な星だ。Riebeckは、能力はけして低いわけではないが、まだ宇宙に対する恐怖を克服しきれていない。身を守ることになるべく専念できる準備をさせてやりたいんだ」
Hornfelsはけっして強く命令したりはせず、おだやかに頼みこむように言った。それでかえってHalも強く反論することをためらった。
あのツールは親友に使ってほしくて作ったものだ、そう跳ねのけたい気持ちはあった。けれど自分は飛行士ではない。未知の惑星で命をかけるのは、他の旅人たちだ。その彼らを思うHornfelsの采配に口を出したくはない気持ちのほうが、Halの中でまさった。
「経験のある飛行士に実地で動作テストをしてもらって、得られたデータをお前の親友が使う時のためにフィードバックできると、そう考えてみてくれないか。もし飛び立ってから問題が見つかっても、すぐ帰還できるとは限らない。慣れない旅のリスクを少しでも減らすことにもつながると思う」
Halは同意することにした。心からではなかったけれど、結果的には親友のためになるはずだと考えることができた。
* * * *
……という諸々の話を人づてに聞いて、私は納得するわけがなかった。
「Hal、どういうことだよ⁉ あれは私のために作ったんだろ⁉」
観測所にどなりこみにきた私を、Halとその横にいたHornfelsが振り返った。ふたりは「そら来た」という厄介そうな目で私を見た、そんな気がした。
「おい、お前が頑丈なのは知ってるけどさ、まだ事故から昨日の今日だぞ。ちゃんと休まないと……」
「そんなのどうでもいい! なんで私に相談もなしに勝手にRiebeckに貸すことにしたんだ⁉」
「それは──」
横でHornfelsが口を挟もうとしたのを、Halがさえぎった。
「あの翻訳ツールは宇宙プログラムのリソースを使って開発したんだ。だからお前だけのものってわけにはいかないよ」
私よりちょっと先に生まれただけのHalが、年上ぶって私になにか言い聞かせようとするときの顔だった。このあとに言われそうなことだって、だいたい想像がつく。納得なんかしてやるもんかと、私はめいっぱい身構えた。
「私たちだけじゃやれなかったって、お前だって言ってたはずだ。機構の設計もそうだし、Hearthianの概念にないNomai独自の語彙の解釈は、Riebeckの知識がなくちゃ無理だった。ほかの旅人の探索の助けになることなら協力するべきだよ。わかるだろ?」
「わかるけどいやだ」
「お前ね……」
断固とした私の態度に、Halはおもいきりあきれ顔をした。それからひとつため息をついて、説得の方向性を変えてきた。
「……なあ、心配しなくても、Riebeckは今回が脆い空洞への初挑戦だ。そこまで長期の滞在は予定していない。そうだよね、Hornfels?」
「ああ、うん。まずは無理をせず、様子見程度で帰ってくるように私も伝えている」
Hornfelsへの確認をはさんで、ほらな、という顔をHalは私に向けた。
「お前が飛び立つ準備ができる頃にはRiebeckは戻ってくるさ。そうなれば翻訳ツールはちゃんとお前に……」
「帰ってこないかもしれないだろ、Feldsparみたいに」
私は言った。
その言葉でふたりが凍りつくのも、それを表情を見て私の胸に冷たい棘が刺さったようになるのも、わかっていたけど無視した。私は続けた。
「航行中に船が爆発したら? ブラックホールにツールごとまっさかさまに落ちたりしたら? Riebeckはちゃんと持って帰ってきてくれるのか?」
「お前、そんな言い方……!」
「私だってそんなこと考えたくないよ!」
喉から出た声は、そうしようと思っていたよりずっと大きくて鋭いものになった。私は後悔しはじめてきたけど、いちどぶつけた言葉を言わなかったことにするなんて、時間を巻き戻せでもしない限りできやしない。心の中にあったものを、私はいさぎよくぜんぶぶちまけた。
「考えたくなんかない。でも、そうなるかもしれないんだ。私だってそうだ。たったひとりで宇宙をさまようことになって、二度とここに帰れなくなるかもしれない。そんなことも想像しないで私は宇宙に行こうとしてるわけじゃない!」
私は、もっと冷静に話すつもりでいたし、まして泣きだすつもりなんか毛頭なかった。でもHalの顔を見た瞬間にそんな予定が飛んでいった。喉がつかえてひどく情けない声しか出なくなって、それでも私は伝えたかった。
「Halは私みたいに体は強くない。でも私より賢いし、器用だし、物覚えがよくて、私がとっくに忘れてしまったことや、忘れてしまいたいことまで覚えてる。私自身より私のことを知ってる、いつも一緒だった大切な友だちだ。それでも一緒に宇宙には行けない」
私はひとりで船に乗り、旅立つ。誰に命令されたからでもない、自分が望み、憧れて、自分の目で見ることを欲して、選んだ。けれど、それでも、だから、だから。
「だから一緒に作ったあの翻訳ツールがあれば、私は宇宙でひとりじゃない。知らない星に閉じ込められたって、宇宙空間に放り出されたって、最後までHalと一緒だ。だから何も怖くない。私はずっと、ずっとそう思ってたんだ」
言いたいことを一方的に言って、黙り込んだ。私が、子どもみたいにみっともなく涙をぽろぽろ落として肩を震わせていたのを、Halの手が包んだ。顔を上げると、Halの目にも涙がにじんでたのが見えた。私はHalがいつも提げているツールバッグの肩紐をつかんで歯をくいしばって、どうにか自分の涙を止めようとした。でもそれより先にHalが私を抱きしめて、耳元で小さな鼻声が「ごめん」というのが聞こえたから、そこで泣き止むのをあきらめてしまった。
「Halを怒るな。提案したのは私なんだから」
おだやかな声が降りてきて、そちらを見た。私たちより頭ひとつぶん高いところにあるHornfelsの顔は、ほほえましさとか、なつかしいものを見るような目とか、それから深い悲しみだとか、いろんなふうに見えた。大きくて薄い両手が私たちの頭をそれぞれ撫でた。
「悪かった。お前たちの気持ちも考えずに」
私の中で荒れ狂っていたものがゆっくりと凪いで後退した。そのかわり、自分のわがままのためにほかの誰かを傷つけたことの重みが、胸の奥に沈んできた。
「Hornfels、ごめん」
口ごもりながら私は言った。
「帰ってこないかもしれないなんて、言っちゃいけないことだった。ごめんなさい」
「言っちゃいけないなんてことはない。飛び立つ者にとっても、送り出す者にとっても、それは忘れてはいけないことだ」
Hornfelsの声はとても静かで、深かった。星々を眺める時とおなじように愛しそうな目が、私たちに向けられた。
「私は、私が発射コードを与える旅人たちの誰もが無事に戻ってきてほしいと思っている。誰に対しても、同じようにね。もう誰も宇宙で迷子になってほしくないから。ただ、私にそういう思いがあるのとはべつに、お前たちにはお前たちの思いがあるよな」
Riebeckには私のほうから伝えておくよ、と、Hornfelsは続けた。
「あれでもあいつはお前たちの先輩で、立派な飛行士だ。私ら年寄りがよけいな気を回してあれこれ世話を焼かなくとも、ちゃんとやっていくさ」
私がなにか言いかけるより先に、Hornfelsは携帯用の無線機を取り出して通話を始めた。
「ああ、Slate。私だ。Riebeckに繋いでくれるか。……え? もう飛び立った!?」
Hornfels、そして私とHalが4つの目を丸くした。
無線のスピーカーからSlateの声が続いた。
「ああ、予定ではもう少し後だったが、『緊張で頭がおかしくなりそうだ、もういっそ勢いで出る!』とか言ってな」
「なんで早く知らせてくれなかったんだ」
「知らせたところで宇宙に出てしまえば地上管制からできることなんてないだろう。心配ない、無事に上がったよ。脆い空洞まで自動操縦で障害物なしに向かえる打ち上げウィンドウだから、あとは着陸さえへまをしなければなにも問題はない」
「しかしだな……」
やりとりを聞きながら、私とHalは顔を見合わせて、どちらともなく苦笑いした。頭を抱えるHornfelsに、私が言った。
「いいよ、Hornfels」
「え?」
「あれはRiebeckに預けるよ。きっと、ちゃんと持って帰ってきてくれる」
まるで真反対のことを言い出す自分に、自分であきれてしまわないこともなかった。どうして最初からこれが言えなかったんだろうと思うけれど、隣のHalはなにも言わずに私の肩にそっと手を置いて笑った。
それから親友はにわかに胸をはった。「まあ、あれだ。あの翻訳機は何台あったっていいだろ。万が一ってやつのために、今からお前が飛び立つまでにもう1台完成させればいい。やってみせるよ」
なるほど、それでこの問題は完全に解決する。
「ついでに1号機よりすごいやつにすればいい。設計の問題を解決してる間に解読できた語彙も増えたから、そのデータも新規登録しよう。Slateがお前の船の逆進ロケットを直すのとどっちが速いか勝負だ」
「いいね、Hal。旅立つまでに退屈してる暇はなくなってきたな!」
胸の中でもやもやしていたものがすっかり晴れた。とはいえ迷惑をかけてしまったと反省もした。私はHornfelsに言った。
「ねえ、Hornfels。私はね、宇宙に出たらやりたいことのひとつが、Feldsparを探しだすことなんだ」
Hornfelsは驚いて、それからゆっくりと首を左右に振る。
「……あれは、もうずいぶん前のことだよ」
「わかってる。でも、どこに行ったのか、どうなったのか、それだけでも知りたい」
誰もそれを知ることができないままに、私たちは次に進むために悲嘆の時間を終了させた。あの愛すべき英雄はもうけして戻らないのだと、この村の誰もがそう静かに受け入れている。きっとどこかで生きていると信じるにはあまりに月日が流れすぎ、願うことももう難しくなってきた。けれど。
「Feldsparなら、きっと最後までものすごい冒険をやってる。誰も見たことがない場所でとんでもない発見をしてるよ。私もそれを見たい。あの英雄が切り開いた道を辿っていけば、きっと私も最高の旅ができる」
それから私は親友のほうをかえりみた。
「なあ、Hal、私はぜったい帰って来るからな! 新しい翻訳ツールを使って、Feldsparだって見たことないNomaiの秘密をどっさり持ってくるから、1週間くらい徹夜で聞く覚悟をして待っててくれよ!」
「そんな起きてられるか、ばか」
ああ、憎まれ口を返す親友の笑顔はいつだって最高だ。
「ふたりとも」
声で私たちがふりむくと、Hornfelsは身をかがめて、不意に私たちふたりを両手で抱き寄せた。Hornfelsの頭をはさんで私とHalがあわてた顔をした。
「いや、なに」
「ちょっと、恥ずかしいよ、子どもじゃないんだからさ」
「私からすればお前たちなんて、まだまだ尻に卵のかけらがついたひよっ子どもだ」
私たちの苦情を完全に封じ込み、Hornfelsは言った。
「ありがとう」
ほどなくSlateの声がまた無線機から聞こえた。
「ところで、例の翻訳ツールが発射台に置きっぱなしだぞ」
…………………。
は?
Hornfelsは真顔になって、真顔の私たちを離してから無線機に詳細を問い返した。
Slateいわく、
「あれも使うかもこれも使うかもと直前まで積荷のパズルをやってたからな。寝袋なんかあんなに持っていってどうするんだか。まあそれはさておき、その時に『だいじなものなのに壊したら大変だから』とか言って避けておいていたのを、そのまま忘れていったよ」
「……だそうだ」
無線のマイクを手に、Hornfelsは苦笑いするしかないというふうでこっちを見てきた。
「そっか……」
Halの口の端にもひきつり笑いが浮かんでいた。私はというと、怒っていいところなのか、ほっとしていいところなのか、いろんな気持ちがごちゃまぜになって、やっぱり変な笑いしか浮かばなかった。
「……ちなみに、近々Gabbroが巨人の大海から帰ってくることになったんだが……」
遠慮がちに確認してくるHornfelsに、私たちの答えは決まりきっていた。
「あいつには絶っ対貸さない!」
「あいつこそどっか適当に置いてそのまま失くすだろ!」
* * * *
「……と言ってたらしいんだが、ひどくないかあいつら」
「順当だろ。お前の散らかし癖を知らない奴なんかいないからな。どうせまたキャンプをゴミ溜めにしてるんだろうが」
「ひどい。今だって掘り出し物を船に載せるために収納整理で頭を悩ませてるのに。ほかの積み荷をだいぶ減らさないとうまく飛べなさそうなんだよ。なあ、科学分析キットってどこまで置いて帰っても怒られないと思う?」
「ハンモックを捨ててこい」
「なにかすごいもの見つけたって言ってたね」
そう話題の方向性を変えてやったのは、Riebeckだ。脆い空洞への初着陸を無事に(厳密には、なにもなかったことにできそうな程度には無事に)終えて、他の星に滞在中のGabbroとChertのふたりと無線をつなぎ、それぞれから祝辞をもらったあと、旅の疲れを雑談で癒していたところだった。
「巨人の大海でいったいなにがあったんだい、Gabbro? Nomai関連だろう? ぜひ聞きたいよ」
「それは帰ってからのお楽しみ。ところで、翻訳ツールを持って行かなかったのは本当にうっかりだったのか、Riebeck?」
「私もそれ気になってた」
問いかけにRiebeckはおどろいて、観測ドームのように大きなヘルメットの側面をかりかりとかいた。
「するどいね、君たちは……」
「それはまあ」
「何年お前のめんどう見てると思ってるんだよ」
のんびりした声と先輩面の声。Riebeckは観念したふうに気恥ずかしげに笑った。
「……あのひよっ子はさ、ほんとに勇気のある、すごいやつだよ。なにかすごいことをやってのけるんじゃないかって、私も思ってる。でも宇宙はやっぱり怖いところだ。飛び立つ前に想像するよりずっと。宇宙でひとりの時間を過ごすようになってからはじめて、そういうことをあいつも感じ始めるかもしれない。そうなった時に、支えにできるものがあるかないかっていうのはぜんぜん違う。あのツールはただの探索の道具じゃなくて、きっとそういうものだと思うんだ。あいつらがどんなに頑張ってあれを作ったか、私は見てたもの。それを私は横取りしたくなんかない。知りたくてたまらないのに怖くて先に進めないつらさが、私にはよくわかるから」
たくさんの恐れを乗り越えて、念願だった場所の脆い地面を自分の足で踏んだRiebeckは、はるかな星空を見上げた。かつてここにいた異種族の旅人たちが見上げたのと同じ空。その下で、喜びと孤独とをわかちあえる仲間へとRiebeckは語りかけた。
「でも、ほんとによけいなことだったかもしれないけどね。あいつはほんとに怖いもの知らずで、きっと私の飛行歴なんかすぐに抜かされちゃう。あいつを見てると、ときどき、まるでFeldsparが帰ってきたみたいだって思わされることがあるんだ」
「……ああ」
Gabbroが低く相槌を打ち、Chertの同意がそれに続いた。
「ちょっとわかる。まあ、Feldsparみたいな技術はぜんぜんないんだけど、恐れ知らずなところはそっくりだ。けっこうな事故を起こしてるっていうのに全然こたえないしな」
感慨と、感傷が、はるかな距離をへだてた3人の中でおなじ波紋を描いて広がった。この宇宙が自分たちに与えてくれるものが喜びばかりではないことを、彼らはずっと昔に知った。暗示やら運命やらといった考えにとらわれるほど彼らは夢想家ではなかったけれど、新しい飛行士が故郷を飛び立つことは、古い飛行士が故郷へと戻ってくるきざしではないかと、どこかで願う思いがあった。
それと相反する予感もまた、彼らの心にひとしく影を落としていた。ひとりの仲間を得たかわりに、自分たちはひとりの仲間をほんとうに永久に喪ったのかもしれない。新しい星が生まれるためには古い星が糧にならねばならないのと同じように。そして、そのどちらも彼ら3人ともけして口にしようとはしなかった。
Riebeckは言った。
「私は、君たちふたりが宇宙で待っていてくれてるから、ここに来られた。ここは……素晴らしいよ。木の炉辺やアトルロックよりもずっと、Nomaiたちがこの星系に生きていたんだってことを感じられる。来てよかった。すごく怖いけれど、ほんとうに来てよかった。私に勇気をくれて、ふたりとも、ありがとう」
臆病な、けれど感謝を伝えるのにためらうことはしない心優しい旅人に、ふたりの飛行士はそれぞれの形での愛情を返した。
「ちゃんとスカウトで表面安全性を確認しろよ。それでなくともお前はすぐ転ぶんだから。あと、ぼーっとして火山弾を避けそこなうんじゃないぞ」
「ブラックホールに落っこちたらぜひ感想を聞かせてほしい」
「やめてくれよふたりともそういうこと言うの!!」
「Gabbro、お前のところも大概だろ。あの海水ってやつだけでも船や宇宙服へのダメージは大きいんだから、もっとこまめにメンテナンスに帰れよ。飛行中に突然動かなくなって乗り捨てることにでもなったらSlateに三つ折りにされるぞ」
「私は点検は得意だよ?」
「うぬぼれるんじゃないよ。あとRiebeckも。いまでは月基地を経由する必要がなくなったとはいえ、Eskerがこれからもたまには顔出せってさ」
「えぇ……行き先を増やしたら、飛行距離が増えちゃうじゃないか……」
“不必要な宇宙旅行” に難色を示す仲間に、Gabbroがやさしい声をかけた。
「Riebeck、気にしなくていいよ。Chertは照れ臭くなるとすぐこうやって先輩風を吹かせたがるんだ」
「ああ? お前な、いつも言ってるだろ、私たちは先輩として、ひよっ子に宇宙飛行士としての心構えというやつをだな……」
「そ、そういや、ずっとあいつのことをひよっ子呼びしてたけど、ソロ飛行が成功したら一人前の飛行士だよ。その呼び方はもうやめない?」
渡りに船とばかりにGabbroが話題に乗った。
「そうだな。でもなんて呼ぶ? 相棒とか?」
「Halが拗ねるだろ」とChert。
「ふむ。じゃあHalが聞いてない時だけにしよう」
「普通に名前で呼んであげたらいいんじゃない……?」
話題が途切れて、それから、誰からともなく楽器の演奏が始まった。とりとめのない星間無線のあとにこうして音色を合わせるのが彼らにとっての慣習で、さまざまなことにまさる重要ごとだった。旅人にとっての子守唄である口笛の旋律に導かれながら、バンジョーとドラムとフルートが調和する。きっとそう遠くない未来、欠けてしまった音のかわりに新しい音色が加わることを、彼らは心から楽しみにしていた。
遠い空の向こうで、ひとつ星が瞬いた。それは星の最後の瞬きで、この宇宙ではまだ少し珍しいできごとだった。
[無限軌道の奏者たち/了]