岩坂モトイ
Outer Wildsの二次創作小説+プレイ記録。クリア前の閲覧は非推奨。 苦痛描写や架空の設定を含むものがあります。 公式とは一切無関係のファン作品になりますことをご了承ください。 各話の冒頭にて概要・だいたいの文字数・注意事項をご案内しています。各話ほんのり繋がってますが、続きものではないので、基本どれから読んでもOKです。
ライブアライブの二次創作小説集です。ほぼ幕末編。
創作ホラー小説
ご訪問ありがとうございます。岩坂モトイと申します。 当記事は11月15日から販売開始予定の同人誌通販のご案内です。 今年2024年3月に本編とDLCをクリア。 以後、若干取り憑かれたようにOuter Wilds小説を書いていました。 当初は、あの唯一無二の宇宙で何度も死にながら辿り着いた先で見たもの、感じたものを書き残しておきたいという、自分の記念としてのものでありました。が、ありがたいことに毎話欠かさず読んで感想やツッコミをくれる友人に恵まれ、ささやかながらSNSでも反
「……なんだか、前にもこんなことがあったような気がするよ」 それはほとんど無意識のつぶやきだった。 静かな月の空に昇ってゆく焚き火の煙。それを見送りながら、本当に、なんのきなしっていうやつだ。けれどそれを聞いた客人のほうは、目の色を変えて立ち上がった。 「ほんとかい、Esker⁉」 初のソロ飛行の打ち上げをぶじに終え、月管制局の私をたずねてきた、ひよっ子だ。 木の炉辺より重力が小さいことがまだ頭に入っていないのかと思う勢いだった。その剣幕に驚きつつ、私は言い足した。
センサーが文字光を検出し、翻訳プロンプトが実行された。 幾千の書記情報をおさめた記録テープが回転する。静まりかえった博物館の中でカタカタと音を響かせて、変換がはじまる。はるか古代の異種族の言語から、Hearthianの言語へと。 [CASSABA:あともう少しだ! FILIXと私で建設を終えた。FILIXはデバイスの調整にはそう長くはかからないと言っている] いにしえの遺構の表面で細い曲線を描く光の文字と、翻訳機械のモニターが映し出す光の文字。ふたつを交互に見比べ
やらかした。ジェットも切れた。今回はもうここまでだ。ため息をついて目を閉じかけたとき、呼び声が飛んできた。 「おい、聞こえるか!? 私だ、Chertだ!」 思わずあたりを見回したけど、それは宇宙服に内蔵された無線機の音声通話だった。砂まみれのうんざりする風景の中に声の主はおらず、かわりに1台のリトル・スカウトが、身動きのできない私を峡谷の隙間から見つめていた。 「こっちからはお前が見えてる。心配するな、すこしだけ待ってろ、いま助けてやるからな!」 小さな偵察機の姿に
■それゆけ創設メンバーズ Slate「Feldspar、お前はまた探査艇をこんな砂まみれにして! メンテナンスにどれだけ苦労すると思ってるんだ!?」 Feldspar「そりゃ双子星を探索してたらそうなるだろう。整備が面倒なら機体に砂粒が入りこまない設計にしてくれよ」 Slate「そんな気密性を高くできるか。安全装置を取っ払って推力重量比を倍にしてやるから、砂をぜんぶ振り落とす速度で飛んでこい」 Gossan「やめないかSlate。そういうことを言うとこの馬鹿は本当にやって
HUDマーカーを付け忘れたことに飛び立ってから気づいたから、立ち昇る煙を目印にしてその島を探し当てた。竜巻はそう近くない。 いつもの場所に探査艇を停めた。ハッチから飛び降りたとき、ブーツが砂浜に半ば埋まった。ざりっとした音と感触が、まわりの風景を一変させた。 赤く灼けた土、命の気配のない巨岩、酸素の一分子も分けちゃくれないサボテン。そういうものがぐにゃりと私を取り囲む。 心臓が、破裂したかと思うくらい波打った。全身から汗が噴き出た。 落ち着け、これは錯覚だ。ここは
■ひよっ子とHornfels■ 「なあHornfels、さっきArkoseがまた幽霊物質に石をぶつけて遊んでいたよ。注意したけど、そもそももっとちゃんとした柵で囲うべきじゃないか?」 「心配ないさ。度を越す前にEskerがアトルロックからリトル・スカウトをあの子の足元に飛ばして警告を与えてくれるから」 「そんなピンポイント高精細射撃を!? 月から!?」 「月管制局が宇宙プログラムの最拠点だった頃は “早撃ちのEsker” で鳴らしてたからな」 「月管制局の仕事とは……?」
2024年6月11日のアップデート(Ver.1.1.15)で追加された要素の探索記録です。めっちゃ楽しかった……… 自分の為のまとめノートにつき、お見苦しき点はご容赦ください。でもなにか間違いがあったら教えてください(他力本願寺) ネタバレしかない記事です。画像の前にワンクッションなどはなにもないので、これから自力で探す予定の方はただちにお帰りください。どうぞよい旅を…! ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ■新しいSlateのセリフ ※Google先生と殴り合いながら独自に翻訳し
* * * * 雑音まじりのなじみの声が流れ、穏やかなまどろみの時は終わった。 キャンプの焚き火がぱちぱちと爆ぜている。降りしきる小雨の無数の粒が炎へと果敢にとびこんで、消える。 酸素、燃料、その他測定値、おおむね異常なし。目を開けてすぐにまばゆい閃光が空に見えた気がしたが、一瞬のことだった。たぶん、いつもの稲光だろう。 「こちらは木の炉辺管制局のHornfels。Gabbro、応答せよ」 呼びかけが繰り返される。 荷物をかついで立ち上がり、歩きながら、無線
運がよかった! ホワイトホールステーション経由で戻ってきた矢先に、またしてもまたしてもブラックホールに落ちたと思ったのだけど、その途中でどうにか光のエスカレーターに合流した。 ちょうどそこでバンジョーの音が聴こえた。Riebeckのキャンプが近いとわかって、酸素とジェットパックの燃料を補給させてもらいに立ち寄った。お返しに新しく探索できたNomai遺跡の話を聞かせたら、きっとすごく喜んでくれるだろう! 「ついに飛び立ったのか! たいしたもんだ、よくやったな。ということ
「さっきの打ち上げ、Gabbroかい?」 まだ振動の残る発射台のもと、ふらりとやってきたHalがたずねた。 「ああ。巨人の大海へのあいつの初飛行だ」 マシュマロを炙る手を休めず、Slateは答える。 「安定していて悪くない飛びっぷりだった。ここ数日は量子の木立に通って詩作にふけってたらしいが、なにか精神集中のコツでも身につけたかな」 「量子の木立? なんでまたそんな所で」 * * * * 「いい四行詩を思いついたんだ、量子の木立で」 初飛行に向けた訓練中のこと。
その日の夜。 僕とアキはまたビー玉をひとつずつ枕元に置いた。 なんとなく今日は寝てしまおうと思っていたのに、寝つけない。久しぶりのコーヒーのせいだろうか。 身体を布団の中に押しこめ、ほんのちょっとの隙間からビー玉を凝視する。 部屋の障子窓は開け放たれている。蚊帳の向こうに白い月。部屋の中はほんのり明るい。ビー玉の透明な輪郭が、青っぽい闇をリング状に切り取っている。 どれくらい時間が過ぎたのか。 少しだけうとうとしてきた頃、かさり、という音をたしかに聴いた。 蚊
ひやり、と首になにかが触れた。 眼鏡が飛びそうな勢いで僕は振り返る。笑う祖父が、そこにいた。 「よう冷えとるよ。トオル、アキ、飲まん?」 両手に、ラムネの瓶を持って。 中学二年の夏休み。父さんが一週間の出張に行った。母さんは三年前に他界、父の実家は遠いため、僕は隣県にある母方の祖父の家に泊まることになった。六歳の妹のアキも一緒だ。 ガラス瓶を当てられて冷やされた首筋をなでる。シャツの襟がちょっと濡れていた。 「アキ、じいちゃんがラムネくれたよ」 庭で遊ぶアキに
慶応二年、蚕起きて桑を食む、小満の初候。 大きな左手が、細筆の柄をつまもうとしては、かたん、かたんと取り落とす。 はたから見ればそれはまるで、勉学に飽きた筆子のさまであるのだが。 斜向かいに座り、声をお掛けした。 「……やはり思うように動きませぬか?」 見慣れぬ生き物を見る顔で、坂本様は、自身の左手を眺めている。 ・・・・・・・・ 尾手城での密命と、その後に迷い込んだ異郷での旅。さまざまな出来事を経て現世へと戻ったのち、拙者は坂本様の行方を捜した。 合
まぶたの裏で光を感じて、目を開けた。 もとの世だ。 誰に教わるでもなく、それと知る。 そこに、尾手の城があった。 ひとの姿も、ひとならざるものの気配もない。 まだ蕾をつけていなかったはずの桜が咲き始めていた。 あの密命の夜から、ひと月というところだろうか。 異郷で過ごした日数と、おなじ。 砕けた屋根瓦、蜘蛛の巣の張った戸板。かわいた褐色の血痕。 闘争のなごりを横目に、本丸を目指す。 戦うのも、身を隠すのも不要となった。走るだけだ。 それ
「おまんはまっこと喋らんのう」 そう要人から言われたのは、天守上階へあがる縄梯子をようやく見つけだした折。 言うまでもなく、敵地である。 「任務の妨げになりますゆえ」 「ほいたら別に喋るのがきらいという訳でもないがか」 本当に、いちいち意図の見えぬことを言う御仁だ。 覆面の中で嘆息する。とはいえ、この緊張感のかけらもない土佐弁を聞くのも慣れてきた。儀容をたもちつつ端的に答えた。 「情報を伝達する手段を、好きか嫌いかで捉えたことはありませぬ」 必要があれば喋る。必要が