【セルフライナーノーツ】『ポプリ-potpourri-』編
皆さんこんにちは。諏訪原天祐です。皆さんはゴールデンウィークを満喫されたのでしょうか? 諏訪原は家で寝てました。
とはいえ、何もしないというのもどこかばつが悪いので、気まぐれに今まで頒布した同人誌のセルフライナーノーツでもしたためてみようかと思いました。興味ないよという方が大半だとは思いますが、オタクというのは自分の創作を語りたい欲求と日々戦う生き物なので、生暖かく見守っていただけたらと思います。
今回は、昨年1月に発行した『ポプリーpotpourri-』のセルフライナーノーツとなります。ちなみにこれは『ポプリ-potpourri-』の巻末におまけとして載せたものに加筆修正したものとなっています。完全に書きおろしではないのは諏訪原がめんどくさがりSDGsです。今流行りの。
よければ見ていってください。
1.怪人〇〇女
作者本人が不思議に思うくらい何故か周りからのお褒めの言葉が異常に多い作品ナンバーワン。とりあえず、評判がいいものは一番に持ってきたほうが無難だということでトップに持ってきました。
地下アイドルが怪人になるというアイデア自体は割と前からあったのですが、それをどう調理したものかと考えているときに、この作品の核となる「リセマラ」というキーワードが思い浮かび、めでたく作品の形を成すことができました。
2.ビート版になった男
大学文芸部時代の最高傑作にして、当時編集を担当していた後輩を絶句させた曰く付きの作品。
この作品はもともと部誌へ掲載するために書いた作品なのですが、書き始めたのは締め切りを過ぎてから。そのときはこれとは別の作品を部誌へ出そうと書いていたのですが、なんとか形にしようと奮闘していたときにふとこの作品のアイデアが降ってきて、後輩に締め切りを少しだけ待ってもらい3時間で一気に書き上げました。
我ながらようやったわと思います。
3.怪奇!梨人間
本作品集の中で、最も諏訪原天祐らしさが発揮されている作品。これまで書いてきた作品の中でもトップクラスでお気に入りの作品です。
まさしくやりたい放題を体現した小説なので、賛否両論が真っ二つに分かれるのは覚悟の上でしたが、意外と「これ面白いね」と言ってくださる方が多くて、やっぱり鳥取ってあったかいなあ、と。
諏訪原は全国の梨農家さんを応援しています。
4.ゴリデレラ
わが母校であるT大学の部誌において、たまに部員持ち込みの企画が組まれることがありました。その中の一つに「ゴリラ乱入」というものがあり、簡単に言うと、「必ず小説の中にゴリラを登場させること」という縛りを設けて作品を書こうぜという企画でした。その企画が開催されたときには、まだ私は部員ではなかったので参加できなかったのですが、いつか第二回が開催されたときに出してやろうと目論見ながら書いていた作品がこれになります。第二回が開催されることはなかったので、社会人になってから書きかけのままのこれを何とか完成まで持ってきて、無事成仏させました。
5.美しい
「ショートショートにしてはちょっと長いのでは?」ということと『架空の自治体・鳥鳥県をテーマにした短編集』というコンセプトからは外れるためぎりぎりまで収録するか悩んだ作品になります。結局、ただただ僕がこの作品がお気に入りだということで無理やりねじ込みました。今となってはねじ込んでよかったなあと思います。
この作品を読み、また『美しい』というタイトルを見てピンとくる方は諏訪原とすごく趣味が合うかもしれません。ご明察の通り、押切蓮介氏の短編漫画『beautiful』にものすごくインスパイアされている作品です。
もし『beautiful』を読んだことがないという方は、ぜひ読んでみてください! めちゃくちゃおすすめです。
6.上海老人交流会
言葉遊びの一発ネタショートショート。こういうのは大体勢いで書いてるので、ぜひ細かい粗は気にせず読んでほしいなあと思います。
個人的にこのアイデアを思いついた時は心の中で何度もガッツポーズを繰り返しました。我ながらうまいこと考えたなあと自画自賛しています(笑)。ゆえに、どの小説投稿サイトでもいまいち伸びていないのがかなり疑問に思ってる作品でもあります。なんでなんだろ?
7.ポストマン(異常の研究)
設定、展開、オチ。全てにおいて、ザ・諏訪原天祐と言うべき作品。もともとは没作品だったのですが、この『ポプリ-potpourri-』に収録するにあたって、めちゃくちゃ気合を入れて加筆修正し、何とか人様にお見せできる形にできたかなと思います。
サブタイトルの「異常の研究」の意味については後々触れますが、由来だけ話しておくと、お笑いコンビがネタにサブタイトルをつけているのが個人的に好きで、その中でも特にキュウというコンビが「○○の研究」とつけているのを見て「めっちゃええやん」と思ったからです。Dr.ハインリッヒからの影響もあります。
8.ブラックホールとゴシップガール
本短編集では一番短い小説。八百字にも満たない本文ですが、その中に諏訪原の本分である、シュールさやナンセンスさといったものをぎちぎちに詰め込むことができて、個人的には大満足の作品になっています。
ちなみにこれ以降、これくらいの長さの作品を書くのにハマり、『遺伝子のゴール』や『理沙がいた季節』にもこのような2ページ(紙1枚)で完結する小説をいくつか収録しています。いつかこういう作品だけを集めた作品集も作ってみたいです。
9.女王様の受難(異常の研究Ⅱ)
『ポストマン』も『女王様の受難』も一般的な社会における正常の範疇から外れているいわゆる「異常な」人々が登場します。しかしそんな「異常な」人々も、悩んでいる人を見て何とか励まそうとしたり、身を挺してクラスメイトを助けたりと一般的な社会的道義による「正常な」行動をとっています。かといって、その人たちが他者から「正常な」人と認定されるわけではありません。結局ポストおじさんは通報されて連行されていくし、女王様な転校生や亀甲縛り魔法少女は「正常な」人から鼻白まれた視線を向けられています。
これは別に小説の中に限ったことじゃなくて、現実の社会においても割とありふれていることなのだと思います。人間の自然な感情の動きとしてのそれを諏訪原は否定したいわけではありません。人間誰しも大なり小なりあるものだから。
異常も正常も別に相反する概念じゃなくて、それらがぐるぐるぐるぐる渦巻きながら一人の人間が、そしてそれらがまたぐるぐるぐるぐる集合しながら私たちの生きる世界が混沌と形成されているんじゃないのかなと僕は思います。だからこそ世界は「面白い」のだと。そんな世界でいつまでもあればいいなあとふと思うこともあるのです。
10.ポプリ
本作品集の表題作にして最大の問題作。
いわゆる夢日記というやつで、個人的には夢の情景をそのまま文字に落とし込めばいいので非常に書きやすく、また書いてて楽しくはあったのですが、夢日記という言葉をググってみると見事に不穏なワードが並ぶので多分もうしません。
ポプリや鳥鳥県といった設定は割と思い付きの産物であり、またこの作品集を出した当初はあまりこれらを前面に出す気もなかったのですが、何かキャッチ―なコピーがないとなかなか手に取ってもらえないことに気づき、それ以降『鳥鳥県』を前面に押し出してイベントに出していくうちに、結構な人たちに興味を持ってもらえ、今や完売間近というところまで来ました。
それもあって、これ以降の作品集ではコンセプトや何かフックになるものをあらかじめ設定してから作品集を作るようになりました。やっぱり、作ってるからには手に取ってもらいたいですからね。
11.寿司とビール
諏訪原にしては珍しい、比較的ちゃんとしたショートショート。
何度かイベントに出店したりしていると、ありがたいことに認知してくれる人もぽつぽつ出てきてくれるのですが、その認知のされ方が「ビート板の人」「変な小説書いてる人」「なんか怖そう」といったもので、別に最後のやつ以外は(諏訪原は大変気さくでおしゃべり好きな常識人です)大体あってるんですが、なんかシュールしか書けない人と思われるのもそれはそれで……って感じだったので書いてみた作品になります。でもやっぱりどこかシュールな香りがするのはご愛嬌ということで。
EX.まとめ
この作品集はもともとコロナ禍で鳥取のイベントにしか出れなかったときに出していた作品集たちを再編集し、文学フリマで売ってやるんだという思いで作られた作品集になります。
はじめはなかなか手に取ってもらえなかったのですが、今ではイベントに出すと毎回数名の新しい読者さんに出会うことができ、またうれしい感想もいただき本当に同人活動をやってよかったなあと感じるばっかりです。
これからも細く長く続けていきたい、そう思えたのもこの『ポプリ-potpourri-』と読んでくださり面白がってくれる皆さんのおかげです。本当に本当にありがとうございます。
また、近々『遺伝子のゴール』、そして今月新たに発行する『理沙がいた季節』のセルフライナーノーツもアップしたいと思います。
それでままた、お会いしましょう!
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