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◆こ と の 次 第 ◆ Der Stand der Dinge◆

以下は『鳥』第15号のあとがきです。
 


 
 
 
◆こ と の 次 第 ◆ Der Stand der Dinge◆
 
  ぶ た く さ の 舞 い 散 る 午 後 の 春 の 日 に わ れ 泣 き 濡 れ て 花 粉 に 苦 し む
 
という訳で、4月にもなり、相変わらず体調もよろしからず、仕事も絶不調の極みではあり、万事多難という状況下で、多くの先立つ人々に花を手向ける、寒い春ではありますが、春は春なので、春、ということです。
昨年9月以降、放置しまくっていたPASSAGE、並びに本『鳥』誌でありますが、まー、季節も新たになったということもあり、新特集、新号に着手したという訳です。でも、相変わらず寒いですね。
さて、新たなる特集は「小林秀雄歿後40年」と致します。小林秀雄は1983年3月1日、大きな足跡を遺してこの世を去りました。生前に4度の全集を出すというのは太宰治と並ぶ空前絶後のことであり、いわんや、それが評論、批評という分野であることを考えると尋常でないことが分かります。かと言って、果たして小林の業績が正当に評価(批判も含めて)されているかというと、いささか疑問も残ります。そのような次第で、この機会に小林秀雄を再度、読み直して、今後のわれわれの糧としたいと考えています。
ここから、PASSAGEに出荷する書籍のコメントを書き、梱包して送り出す作業が待っています。
……、と思っていたのですが、なんだか、いろいろ忙しくなって来ました。
まず、大江健三郎さんが亡くなりました。晩年の作品を読み切れずに大江作品から離脱した身としては、何らかの形で大江さんに関する感想を認めておきたいと考えています(「文学の運動――大江健三郎」、あるいは「作家は運動する――大江健三郎試論」)。
さらには、先年亡くなった評論家の加藤典洋さんの遺著「僕の一〇〇〇と一つの夜」が文庫化されたのを機に、加藤さんの再評価を呼びかけねばならないと考えています(「加藤典洋全戦後論集成・解題」)。
次に、昨年秋から書き継いで、何度も挫折している柄谷行人さんの『力と交換様式』批判「「D」が「霊」に乗っ取られる」をそろそろ完成させねばなりません。本号に掲載したものはその圧縮版ですが、この他にもいろいろ言いたいことがあるのです。
4点目として、村上春樹さんの新作(?)『街とその不確かな壁』が出ます。その論評「街とその確かな壁」を書かねばなりません。
5点目として、ジェイムズ・ジョイス『ダブリナーズ』のon lineの読書会(小林広直さん主催『Deep Dubliners:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSffcJw6XcxZnPeYb7AEyRAlARCk1e-V-trAQlJwRY7BfTusOA/viewform?usp=sf_link)が始まりました。これを機に「謎謎『ダブリナーズ』」という質問集を書こうと思っています。実は、この読書会の前身『22Ulyses』という、やはりジョイスの『ユリシーズ』の読書会がありまして、そこでも、勝手に「謎謎『ユリシーズ』」という質問集を書いていましたが、最終的にはわたしなりの『ユリシーズ』についての感想文をまとめておこうと思ったのですが、あえなく挫折しました。そんなこともあり、ジョイスについてはまだまだ「卒業」できない気がするので、もう少し、ぶら下がっていようかと思います。
6点目として、一昨年、三浦雅士さんについての一文を草しました(「三浦雅士――遠い人間の彼方へ))。要は未刊行となっている「孤独の発明」(現行版とは全く違います)についての単なる摘要メモに過ぎないのですが、今回、小林を読み直し始めて、まさにその視点が、三浦さんの『青春の終焉』並びに、この「孤独の発明」に拠っていることに気づきました。この一文を公表するとなると、当然、あちこち
直したり、調べ直したり、文体の調整をしなければなりません。という訳で、これを直しながら、小出しにしていこうかなとも思っています。
そして、7点目として、諌山創さんの『進撃の巨人』についても、先行作品と比較しつつ論じたいと考えています(「悪魔の倫理学」)。つーか、アニメイション版しか観ていないので(ということは結末を知らない( ノД`))、早いところ、原作漫画も読まなければなりません。
……と、書きつつ、こんなの本当に終わるのでしょうか? ま、坂本龍一さんが言い遺されたように“Ars longa, vita brevis.”(「芸術は長く、人生は短し。」)という訳ですから、寸暇を惜しんで日々努力する他はないようです。コツコツと、早寝早起きで頑張ります。〈鳥〉
(初出 『鳥――批評と創造の試み』第15号・2023年4月11日・鳥の事務所)

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