シェアNo.1の秘訣―トップシェアの創業社長が語るベンチャー経営の実際
はじめに
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こんにちは。伊藤 航です。
いつも本の紹介をご覧いただき、誠にありがとうございます。
本日は『シェアNo.1の秘訣―トップシェアの創業社長が語るベンチャー経営の実際』をご紹介いたします。
社員100人の頃から社員教育に力
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上場市場を東証一部へ移行した2003年、OBCは大きな転換期を迎えていた。90年代前半、会社が成長モデルに入っていくとき、会社経営でいくつかの大事なことを明確にしていった。まず、社員教育に力を入れた。次に経営理念、経営目標を明確にしていった。社員数は既に100人ぐらいになっていた。OBCの社風は「責任は我にあり」。
「責任は我にあり」という社員教育に力を入れていたある有名な先生の下で、社員全員を社員教育した。これがOBCの社風、コーポレートマインドの原点になっている。社員研修・教育をスタートさせたのは1988年頃。社員教育を行っていく中で、会社は経営理念やビジョンの方向を明確にする必要が出てきた。OBCは顧客第一主義、お客様志向に立ち、全てのお客様に対して、お客様を見続けていくことを徹底することにした。顧客満足度をいかに高めるか、これを徹底して追及していく。これがOBCの経営理念の原点だ。
会社で社員が何を目指し、規範としていくべきか。これは会社経営の重要なポイントだ。会社の社風はオープンで、フェアであり、グローバルであり、フラットでなければいけない—―ということを徹底させた。
社員1人1人、誰にでもチャンスがあるフェアな環境、正しいことをきちんとみんなでやり続けていける社風、グローバル、世界に通じる発想をしていくこと、そして最後はフラットな組織で活動できること。始めは「オープン、フェア、グローバルの3語だけだったが、そこに「フラット」という言葉を入れた。そういう社風をつくるための経営理念も大事だ。
そこで大切になるのが、やはり人材教育と採用だ。
OBCでも新卒採用の基準は、素直でチームワークがあり、お互いによく協力し合うメンバーになれること。ソフト開発とはモノづくりなので、チームワークが大切。加えて大事なことは仕事に取り組む姿勢である。
次に、そういう人材をつくるために行う、採用した人に対する教育。OBC独自の教育戦略をしっかりとつくり上げていった。その原点は先述した「責任は我にあり」。そこから始まり、教育に力を入れてきた。
中小企業向け業務ソフトでもシェアNo.1に
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OBCは現在、中堅中小企業市場の業務ソフト・シェア・ナンバーワン企業まで成長することができた。ただ、シェア・ナンバーワンはある面で結果だと思う。シェア・ナンバーワンになれたひとつの大きな要因は、最初のイノベーションのところにある。大事なのは、世界が変わり、イノベーションが起きているときに、いち早くその匂いと息吹を感じ、そこに向けて進んでいく感性、感覚だ。
例えば、そういう方向に風が吹き、やんだときに、それを感じ取ってすぐに行動する。見えない中で行動していく勇気。そうでないとなかなか大きなシェアというのは取れない。
マーケットが熟成しているところに入っていっても、簡単にはシェアはとれない。イノベーションが起きると、オセロゲームのように黒の石が一瞬のうちに白に変わってしまうこともある。
市場に早く浸透していった要因として、勘定奉行というネーミングの良さもあったろう。奉行というのは江戸時代のものだが、今で言うと東京なら都知事のような存在。全部を治めている人。CMでは歌舞伎役者を起用して、日本の文化、日本のカルチャーから生まれたソフトウェア、というイメージを狙った。日本の強みは応用技術。ゲームも、コンテンツもそうだ。基礎技術はアメリカがデータベースを持っていっても、お客様が扱う応用分野では日本の技術に強みがある。
ブランド戦略を駆使して、お客様に刺激を与え、いち早くマイクロソフトの最新技術に対応することで、安心して売れるソフトになれた。お客様が実際に、使ってみると、使い勝手が良く、操作性が良い。他のソフトに戻って使ったら居心地が悪い。やはり奉行だ、ということになる。
勘定奉行は、専門誌による顧客の操作性や使い勝手、信頼性などの満足度の点数では今でも断トツに高いソフトだ。
だからお客様満足度ナンバーワンというのは、当社では前面に打ち出している。全てのエネルギーをここに集中している。社員全員がお客様を見よう、ということで対応している。ここはやはり、当社のシェア・ナンバーワンの大きな秘訣になると思う。新入社員も上司もない。全員でお客様を見よう。これは全員が最優先として共有している。
選ぶのはお客様を肝に銘じる
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年度始めの経営方針説明のときには毎回、最初から当社の経営理念とお客様満足度の話をしている。それを全部話し終わってから、年度の経営方針を説明する。
シェア・ナンバーワンの最大の秘訣は、やはりお客様主義、顧客主義にあるだろう。そこが全てだと思う。これが当社の一番大事な基礎だ。
だから、その部分において徹底して資源集中しているから、ここでは負けられない、というわれわれの思い、社員の思いも強い。これで社員のモチベーションも上がっている。これだけ同じことを30年間続けていれば、シェア1番ぐらいにはなれるだろう。
当然のことだが、当社は昔からシェア・ナンバーワンであったわけではない。Windowsが出たときに、それまで2位、3位だったところから、その新しいテクノロジーを通じて、1位に飛び出ることができた。
MS-DOS時代の会計ソフトでは、他社の「大番頭」という製品が強かった。しかし、その製品はWindowsに直ぐさま対応せず売れていた従来製品にこだわった。当社はチャレンジャーとしてWindows完全対応で勝負に出た。
一度、成功体験があると、なかなか新しいテクノロジーに乗り換えることができない。それで大番頭は敗れた。ここは大事なところだ。
イノベーションはチャンスを与えてくれる。だから、いつでも逆転される可能性もあるということだ。選ぶのはいつでもお客様だ。それにクラウドコンピューティングは、ある意味で最初からグローバルだ。グローバル化への取り組みをせずにはいられない。世界で通用していかないと、クラウドには対応できない。波は既に来ている。
❝ 知恵と勇気と忍耐と努力と寛容でその波に乗っていく。❞
おわりに
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今回ご紹介した本書の要点をまとめると以下のようになります。
❶ 社員100人の頃から社員教育に力
⇒素直でチームワークがあり、お互いによく協力し合うメンバーになれる。
❷ 中小企業向け業務ソフトでもシェアNo.1に
⇒社員全員がお客様を見ている。全てのエネルギーをここに集中している。
❸ 選ぶのはお客様を肝に銘じる
⇒シェア・ナンバーワンの最大の秘訣は、お客様主義、顧客主義にある。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。
※上記文章は財界研究所刊『シェアNo.1の秘訣―トップシェアの創業社長が語るベンチャー経営の実際』より一部抜粋しています。