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HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
はじめに
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こんにちは。伊藤 航です。
いつも本の紹介をご覧いただき、誠にありがとうございます。
本日はシリコンバレー最強の投資家、ベン・ホロウィッツの『 HARD THINGS 』をご紹介いたします。
つらいときに役立つかもしれない知識
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苦闘を乗り越えるための答えはないが、私の助けになったことをいくつか紹介しよう。
■ひとりで背負い込んではいけない。
自分の困難は、仲間をもっと苦しめると思いがちだ。しかし、真実は逆だ。責任のもっともある人が、失うことをもっとも重く受け止めるものだ。重荷をすべて分かち合えないとしても、分けられる重荷はすべて分け合おう。最大数の頭脳を集めよ。
■単純なゲームではない。
苦闘は戦略が必要なチェスだ。ITビジネスは、とてつもなく複雑になってきた。テクノロジーが動くとライバルが動き、市場が動き、人が動く。その結果、スタートレックの3次元チェスのように常に打つ手はある。
■長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない。
テクノロジーゲームでは、明日は今日とまったく違う。明日まで生き延びれば、今日はないと思えた答えが見つかるかもしれない。
■被害者意識を持つな。
困難は、おそらくすべてあなたの責任だろう。人を雇ったのも、決断したのもあなただ。あなたは、リスクがあることを知っていた。誰でも過ちを犯す。どのCEOも、無数の過ちを犯す。自分を評価して、「不可」を付けたところで慰めにもならない。
■良い手がないときに最善の手を打つ。
偉大になりたいならこれこそが挑戦だ。偉大になりたくないなら、あなたは会社を立ち上げるべきではなかった。
❝ 苦闘の真っただ中にいるときは、簡単なことはなにもなく、すべてが間違っているように感じる。奈落の底に落ちたら、二度とはい上がれない。しかし私の経験では、予想外の幸運と助けによって、抜け出せた。
苦闘に悩む人たちが強さを身に付け、平和を見つけられますように。❞
リーダーシップに必要な3つの属性
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リーダーシップに必要な属性についてそれぞれ検討してみよう。
■ビジョンをいきいきと描写する。
ある人々は生まれながらに優れたストーリーテラーの能力を持つ。しかし同時に、誰でも努力を重ねることによって、この分野の能力を大きく伸ばせるのも事実だ。すべてのCEOはビジョンを語るというリーダーシップ能力を伸ばすために十分な時間を使う必要がある。
■正しい野心を持つ。
ビル・キャンベルのような偉大な無私の精神を得ることが努力によって後天的に可能なのかどうか私にはわからないが、そうした精神を持つよう教えるのが不可能なのははっきりしている。おそらくこの属性は「生まれながらのもの」と考えてよいだろう。
■ビジョンを実現する。
この属性こそは「学んで得られる」ものだ。アンディ・グローブの無能に対する苛酷さは伝説的だが、彼が無能を容赦しないのはこの能力は努力の賜物だからだ。時によって、有能さに対する敵は根拠のない自信だ。CEOたるものは、自信過剰に陥って経営能力の改善の努力を止めるようなことがあっては絶対にならない。
❝ リーダーシップに必要な属性のうち、努力による改善効果の大きいものとそうでないものがある。しかしCEOは3分野すべて自己改善の努力を怠ってはならない。
またひとつの属性を改善する努力は、ほかの属性にも好影響を与える。たとえば深く信頼されているリーダーは、たとえビジョンを語る能力に少々劣っていても、社員が真剣に耳を傾けてくれる。
また圧倒的な経営能力を示す実績があれば、やはり周囲は耳を傾ける。強い説得力をもってビジョンが語れるなら、周囲はCEOが経営能力を学ぶ時間を与えてくれるものだ。❞
困難を乗り切るのに特効薬は存在しない
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ネットスケープを始めて間もないころ、マイクロソフトの新しいウェブサーバーはわが社のサーバーが持つ機能をすべて備え、かつ5倍も速く、無料で配布される予定だとわかった。われわれは、ただちにサーバー製品ラインアップを転換して、売れるものにしようと考えた。亡くなった偉大なマイク・ホーマーと私は、製品ラインを拡大し、攻撃から生き延びるのに十分な機能でマイクロソフトのウェブサーバーを包囲すべく、一連の提携と買収を死に物狂いで次々に進めた。私がエンジニアリングの相方であるビル・ターピンに、興奮してその作戦を説明していたら、彼はまるで何もわかっていない子供を見るように私を見た。ビルは、ポーランド在籍時代からマイクロソフトと衝突してきたベテランで、私のやろうとしていたことを理解したが、納得はしなかった。
「ベン、きみとマイクが探そうとしている特効薬は悪くないが、われわれのウェブサーバーは5倍遅いんだ。それを直せる特効薬は存在しない。だから、われわれは何にでも効く魔法の銀の弾丸ではなく、鉛の弾丸を大量に使うしかない」。
なんてこった。
ビルのアドバイスを参考に、エンジニアリングチームには性能問題の解決に集中させ、われわれは並行して別の作戦を進めることにした。最終的にわれわれはマイクロソフトを性能で上回り、サーバー製品ラインを4億ドル超のビジネスに育てたが、それはあの鉛の弾丸の数々がなければ成し得ないことだった。
実存する脅威に直面することほど、ビジネスで怖いものはないかもしれない。あまりの恐ろしさに、社員の多くは向かい合うことを避けるためなら何でもやるようになる。あらゆる代替案、あらゆる逃げ道、あらゆる言い訳を探して、1回の戦いに生死を賭けることを拒もうとする。
どの会社にも、命懸けで戦わなくてはならないときがある。戦うべきときに逃げていることに気づいたら、自分にこう問いかけるべきだ。
「われわれの会社が勝つ実力がないのなら、そもそもこの会社が存在する必要などあるのだろうか?」
特効薬を探すのはやめることだ。
おわりに
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今回ご紹介した本書の要点をまとめると以下のようになります。
❶ つらいときに役立つかもしれない知識
■ひとりで背負い込んではいけない。分けられる重荷はすべて分け合おう。
■単純なゲームではない。3次元チェスのように常に打つ手はある。
■長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない。IT業界の明日は今日とまったく違う。
■被害者意識を持つな。困難は、おそらくすべてあなたの責任だろう。
■良い手がないときに最善の手を打つ。偉大になりたいならこれこそが挑戦だ。
❷ リーダーシップに必要な3つの属性
① ビジョンをいきいきと描写する。(スティーブ・ジョブズ属性)
② 正しい野心を持つ。(ビル・キャンベル属性)
③ ビジョンを実現する。(アンディ・グローブ属性)
上記の①はビジョンを語るという能力を伸ばすために十分な時間を使う必要がある。②は無私の精神であり、「生まれながらのもの」。③は後天的に「学んで得られるもの」。
❸ 困難を乗り切るのに特効薬は存在しない
実存する脅威に直面することほど、ビジネスで怖いものはないかもしれない。しかし、どの会社にも、命懸けで戦わなくてはならないときがある。戦うべきときに逃げていることに気づいたら、自分にこう問いかけるべきだ。「われわれの会社が勝つ実力がないのなら、そもそもこの会社が存在する必要などあるのだろうか?」 と。特効薬を探すのはやめることだ。
※上記文章は日経BP社『 HARD THINGS 』より一部抜粋しています。
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