6月18日 なんとなく惜しい感じのするキャラメイキングゲーム
IGN:ファッション、メイク、ハウジングまでカスタマイズできる『きらめきパラダイス』は超ゴージャスな着せ替えゲーム
きらめきパラダイス 公式サイト
あら可愛い。いいなぁ、こういう感じ。でもスマートフォンのみのゲームなのか……。それはなんだか惜しい。
一つ、コンセプトに対するツッコミを入れるなら、これは別に「リアル」ではない。どうも宣伝記事では「リアリティ」を売り文句に押し出しているみたいだけど、こんな姿の人間なんていない。これは「リアル」な人間ではなく、「ドール」に近い。むしろ「リアルなドールの衣装を着せ替えたり、メイクしたりするゲーム」って言ってくれたほうがよかったのに。
でもキャラクター自体はすごく可愛い。好きなようにウィッグを変更したり、メイクを施したり、衣装を着せ替えたり……。そういう楽しみ方ができる、と聞くと、かなり惹かれる。ちょっとやってみようかな……とかなり思う。
ただ、惜しいなぁと感じたのは、せっかくモデリングをしっかり作り込んでいるのに、スマートフォンの小さな画面でしか見られないこと。そのキャラクターを別のどこかに飛び出させる、ということができない。それが惜しい。このコンセプトだと、「作ったところで終わり」になる。Twitterに画像を載せるくらいのことはできるけれど。作ってそれから……がないから「いったいなんのために?」ってなっちゃう。
例えばこのゲームで作ったキャラクターをアバターにして、メタバース空間に登場させられるとかね。自分で作った理想のキャラクターに、自分がVR機器を使って入っちゃう。さらに誰かと交流する。そういうことができたらパーフェクトだった。
話はしばらく『きらめきパラダイス』から離れるね。
私はずいぶん前から、「アバターは用意したほうが良いかもね」と書いてきた。そのうち、趣味空間だけではなく、仕事でもVRを使うようになり、そうなると「働くためにスーツを用意するように、仕事でアバターが必要になるかも知れない」みたいに書いた。仕事でVR空間で毎日会って話しているけれど、実際には会ったことがない……なんてことも未来の社会ではありうるかも知れない。そうすると、「趣味用のアバター」と「仕事用のアバター」の両方は必要だ。仕事に行く時の服装と、趣味でクラブに行く時とで違う服を着るでしょ。そんな感じで。
ではそういう時代がいつ来るのか? という話だが……現状を見ると、当分先かなぁ……という気がしている。
VRあるいはメタバースと言えば、Facebookが社名を「メタ」に変更して力を注いでいることが話題になっているが、そのメタが用意しているアバターだけど、これがクソダサい。え? こんなクソダサいアバターを使わないと、メタ社のVRには入れないんですか……? メタ社のドレスコードがこれですか? というくらいダサい。
次に引っ掛かるのはVR空間における「表現」の問題。VR空間に入って周りを見ると、みんな足を動かさず、幽霊みたいにスーッと動いている。しかも現実世界ではあり得ない速度でダーッと移動することができてしまう。
さらにVR空間自体も半端な世界。テクスチャーはのっぺりしているし、光の効果とか、そういったものが処理されていない。壁の通り抜けもできてしまうし、建物の向こう側を見ると、真っ暗な「プレイエリア外」になっている。ちゃんと作っているVRもあるのかも知れないけど、私が見た範囲では、VRはどれもPS2くらいのクオリティでしかない。そういった場所に、気持ちを預けて、留まっていたいか……というとどうだろう。
VR空間の問題は、マシンスペックがどうこうという問題ではなく、その空間をどのように美しく見せるのか、格好よく見せるのか、という指針を誰も示していないことにある。人間が現実的な物理法則を無視して動き回っている世界なんて、「奇怪」以外の何ものでもない。その空間で何ができるのか、何ができないのか、その規律が定義づけられていない。それがないから、どこかハリボテ感のある、薄っぺらい世界観でしかない。
(世界観に一定の規律感がしっかりあれば、こうした奇怪さはだいぶ薄まる。例えばゲームの『Splatoon』ではインクの中に潜り、移動することができる。これはあらかじめ、「インクに潜って移動できるという世界観である」という定義付けがあって、インクの中ではどれくらいの速度で動けるのか、といった独自の規律がしっかり存在している。そういう規律がきちんとあれば、突飛なことをしていても「奇怪」に感じることはない)
ああいった空間に大事なのは、まず「面白そう」。次に「格好いい/可愛い」と思わせるものがなければ、魅力として立ち上がってくることはない。
それで言うと、まずメタ社が用意しているアバターはダサすぎ。その次に、アバターが用意しているVRステージもショボいうえにダサい。あれだったら、ちょっとオシャレな喫茶店に行ったほうが、気分が出るよ。
今のところ、こういうメタバースには、「空間が格好いい」とか「居心地がよさそう」とか、そういうことを感じさせる世界観を作ってやろうという気概はまったく感じられない。「今日はこのVRステージでデスクワークをしよう」とか絶対に思わない。もしもメタ社のメタバースを使うとしたら、「仕方なく」だ。
これはデザイナーの感性を持った人が、まだ制作に関わってないからだろうね。
こういうところこそ、ゲーム会社が関わったっていいんじゃないか、という気がする。スクウェア・エニックスが『ファイナルファンタジー』や『ニーアオートマタ』の世界観をそのままVR遊戯空間として提供するとか、ね。そういうもあってもいいんじゃないか。
話は『きらめきパラダイス』に戻ってくるけれど、『きらめきパラダイス』では可愛い女の子キャラクターを作れて、しかもその女の子が住む空間をハウジングもできる。
でも作ってそれで終わり。
……いやいや、VRヘッドセットを使ったら、自分が作ったドールの中に入れて、自分がハウジングした家を訪ねてまったりできたらいいじゃない。同じゲームをやっている人を家に招いて、お喋りしたりさ。『きらめきパラダイス』に出てくる女の子は、それくらい可愛いんだから。なんでそこまで作らなかったんだろう……とすら思えてしまう。
ところで『きらめきパラダイス』っていつ配信なのだろう? わりと前からゲームメディアに宣伝記事が載っているけれど……? 配信時期はまだ未定みたい。
追記。
6月23日。
ようやく「体験版」が配信されたらしいぞ。ちょっと遊んでみようか。ダウンロードして……
……アンインストールするか。
「体験版」が動かないってことは、たぶん本編も動かないだろうし。
これだからスマートフォンゲームは……。