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ゲーム感想 ゼルダの伝説 夢をみる島
この記事はノートから書き起こされたものです。詳しい事情は→この8か月間に起きたこと。
オリジナル版『ゼルダの伝説 夢をみる島』が発売されたのは1993年。評判の良さは聞いていたのだが、ゲームボーイを持っていなかったから、このゲームには縁がなかった。実をいうと、「ゲームボーイでゼルダができるのか?」と疑っていた節もあった。
あれからおよそ30年……。まさかの『夢をみる島』が最新機種であるNintendo Switchでフルリメイク。私はというと……『夢をみる島』の存在そのものを完全に忘れていた。ゲームボーイのゼルダ?? そんなのあったけ?? ……あ、そういえばあったな。という感じだった。30年前、そりゃ忘れるよ。
まず『夢をみる島』の公式における位置づけを確認しておこう。任天堂公式サイトには次のように書かれている。
勇者が敗北
神々のトライフォース
↓
夢をみる島
↓
ふしぎの木の実
年表を見ると、『神々のトライフォース』の次が『夢をみる島』となっている。
とはいっても、『夢をみる島』にはゼルダ姫もガノンも登場してこない。完全な番外編として制作されているので、あまり年表には意味がないように思える。
少し変わったところといえば、今回のリンクはすでに戦士として覚醒し、勇者として自覚を持っているということ。おそらくガノンとの決闘を前に、どこかへ修行の旅に出て、その途上で起きた物語なのだろう。
次にシリーズとしての位置づけを見てみよう。
神々のトライフォース 1991年11月
夢をみる島 1993年6月
BSゼルダの伝説 1995年8月
BSゼルダの伝説 古代の石盤 1997年4月
ゼルダの伝説 時のオカリナ 1998年11月
うん、やっぱりSFC『神々のトライフォース』の後の作品だよな……。『神々のトライフォース』で見かけたキャラクターが一杯いたし、ゲーム自体SFC『神々のトライフォース』をベースにしているのは明らか。
というかSFCが稼働している時代に、まだゲームボーイタイトルなんか出ていたのか。たぶん、私が「ゲームボーイでゼルダとか」と嘲りで見ていたのも、すでにゲームボーイを過去のハードと見なしていたからだろう。もしかしたら、「ボタンが2つしかないゲーム機でゼルダなんかできるわけがない」と思っていたのかも知れない。30年前の自分が何を考えていたのか、今は推測するしかないが。
しかしまあ、あれから30年が過ぎて、あの時「謎のゲーム」みたいに思っていた作品が、Nintendo Switchでフルリメイク。何の巡り合わせかわからないが、やってみよう――と始めてみることにした。
まずビジュアル面だが、まるで小さなフィギュアで作られたジオラマを覗き込んでいるような感じだ。任天堂は不思議なことに、高いスペックのゲーム機を出しても、他のクリエイターがやるような写実的な表現はあまりやらない。最近の作品『ヨッシーのクラフトワールド』のような作品があるが、わざわざアンリアルエンジンを使って、厚紙細工の世界観を表現した。ある意味リアルな質感を出しながら、まるで子供が作ったようなチープな世界観を描いてみせた。
『夢をみる島』もある意味リアルな質感を出しながら、フィギュアで作ったような質感の絵を描き出している。キャラクターやオブジェクトに当たっている光が白色灯とわかるように描かれているし、チルトシフトの効果もあって、本当にジオラマの世界だ。
おそらく任天堂は写実的な画にはあまり興味がない。問題は作品が目指しているコンセプトと合致しているかどうかであって、写実的な画にするかどうかは選択肢の一つであり、その選択肢は限りなく優先度が低いのだろう。写実的な画を目指せば正解というわけではない。ゲームのコンセプトを優位に立て、どんな画がコンセプトに合致しているのか、それを作品ごとに模索しているのだろう。
任天堂作品はゲームのコンセプトを立て、そのコンセプトに合わせて合理的にゲーム内容を構築させていくという方法論を採っているから、「リアルであること」は目指す目標にないのだろう。
オープニングアニメーションのリンク。……かわいい♡
この画のリンクが現実での姿で、ジオラマ風の世界観が「夢の世界」という切り分けで画面が作られている。ジオラマ風の画を出すことで、「現実とは違う別世界」が表現されている。
こういう夢の世界にどんな質感を持ってくるかは、まあなんでも良い。自由に作っていいところだからこそ、作り手の引き出しとセンスが問われるところ。
さてゲームの内容に入っていくわけだが、まずマップが狭い。ゲームを始めて数時間でマップ全体が埋まってしまった。
ダンジョン内部も狭い。だいたいのダンジョンがマップ1枚分。フロア階層もほとんどなし。今までのゼルダだとダンジョン攻略に1時間2時間もかかったりするのだが、『夢をみる島』では30分ほどでだいたい攻略が完了してしまう。ボリューム感の薄さは人によっては……例えば時間が無限にある学生には物足りなさがあるかも知れないが、仕事で一日30分ほどしかゲームで遊べないような大人にはちょうどいい、というかありがたいくらいのボリューム感だった。
ボリューム感が薄い、とは書いたが、俯瞰して見て間違いなく薄いが、しかし実際にコントローラーを持って体験してみると、なかなかに濃い。よくよく考えると、そういえばこれ元々ゲームボーイなんだよな、とそれを考えさせないくらいの濃さがきちんとある。それこそSFC『神々のトライフォース』と比較しても劣っていると感じさせないくらいに。
本当は言うと、最初は「ゲームボーイのゲームをリメイクする? なぜ?」という思い込みがあった。ゲームボーイのボリューム感なんかたかが知れている。それを画だけ豪華にしてもフォローしきれないんじゃないか。
その考えははっきり間違いだった。またビジュアル面の話に戻ってくるが、ゲームボーイのゲームをジオラマ風の画にするというコンセプトともうまく合致している。ここがうまくはまっているから、ボリュームの薄さよりも、「キャラクターがかわいいな」とか「なにか落ち着く絵だな」という気持ちのほうが前に出てくる。ゲームボーイのドット絵を現行機に持ってくるという、かなり無茶な試みに思えたが、見事に「正解」を当ててみせている。
『夢をみる島』には横スクロールステージもちらちらと描かれている。横スクロールといえば『リンクの冒険』があるが、今回のようなジャンプを主体としたステージ作りは初めてで新鮮だった。横スクロールステージに登場してくるのが、クリボーやプクプクだからついマリオの気分になって武器を振るのを忘れてしまいがちだが(そういえばノコノコは登場してないな……)。
今回のゼルダはBボタンで攻撃、Lダッシュ、R盾、X・Yに各アイテムを振り分けるわけだが、どういうわけだがこの操作がなかなか頭に入らず苦労した。老化かな……。
いや、そうじゃなくて、そういえば今までのシリーズはだいたい操作が画面上に出てくる。今回はX・Yにセットされているアイテムしか表示されないから……いやSFC『神々のトライフォース』も同じだったか。じゃあやっぱり老化か……。
クリボーやトゲゾーが出てくる話を少し触れたが……任天堂にもそんな時代があったんだなぁ。カービィのそっくりさんも出てくる。あろうことか敵として。ゼルダにもそんなゆるい時代があったんだな。こういう不思議を許容しているのも「夢の世界」という方便があるから……なのか? これを今世代のゲームの中でそのまま再現するのは、なかなか勇気がある。
ゲーム冒頭、ワンワンが味方として登場してくる。これがゲームのはじめ、慣れていない段階でのサポート役になっている。無敵キャラを出してゲームを慣れさせる、初心者に向けたうまい取り入れ方だ。
ところでワンワンの飼い主であるマダムニャンニャン。……この人『マリオオデッセイ』に登場しなかったか? 私の勘違いだろうか。
switch版の新要素として「パネルダンジョン」というものがあったのだが……。なんだか惜しいな、と。おそらくは『ゼルダメーカー』を制作するかどうか、という話があったと思うが、しかし『ゼルダメーカー』は作るのが難しかろう(この場合の「作るのが難しい」は任天堂側ではなくユーザー側の話。『マリオメーカー』のように面白いステージは『ゼルダ』でははなかな難しいのでは……と考えたのではあるまいか)。それで落としどころとしてゲーム内のオマケとしてパネルダンジョンだったのだろう……と想像している。あくまでも想像。
でもただパネルを当てはめるだけのダンジョンメーカーって、あまり面白いものでもなかった。あくまでオマケでしかない。「新要素!」としてクローズアップするほどのものではなかった。
うーん、『ゼルダメーカー』が大きなオマケとして付いていたら作品評価もガラッと変わったかもしれないけども……。いやいやその逆で『ゼルダメーカー』なんてものがあっても、ぜんぜん面白いステージが作れず、イライラで評価を下げたかも。するとオマケでパネルダンジョンという落としどころで正解だったかも知れない。これは何とも言えない。
ストーリーについてだが、サブタイトルでネタバレしている通りの展開だった。始める前に「こういうストーリーかな?」と思ったらまさにその通りの内容だった。あまりにも捻りがなさ過ぎて、物足りなさがある。現行機であるswitch作品としては盛り上がり欠けるドラマだった。しかし元々がゲームボーイだと考えると「良くできているんだな……」と思わせるところも。
「名作」と呼ぶにはちょっと足りないところがあるんじゃないか、と感じるが、元々がゲームボーイだし、それに私自身このゲームに触れるのが遅すぎたというのもある。ゲームボーイ版をリアルタイムで遊んだ子供なら、結末にきっと驚いたことだろう。でもswitch時代はもうそんなシンプルなストーリーに驚きも感動もない。この夢の世界を体験するには、今の時代にはやや遅かったように感じられる。
ゼルダシリーズの中でも小さな番外編。ゲームとしては普通に良作だが、今時代に輝きを放てるような力強さはなかった。
ゲーム自体はちゃんと面白いけどね。
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