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9月25日 老いにゃ勝てねぇ…ドラマ『FUBAR』で見たシュワルツェネッガーの老い

 Netflixオリジナルドラマ『FUBAR』やっと見ましたよ。
 『FUBAR』はアーノルド・シュワルツェネッガーが初のドラマ主演。しかもエグゼクティブプロデューサーを兼任。「あの伝説のアクションスターがついにドラマシリーズ主演!」ということで大いに注目されていた作品。
 2023年5月に公開されて、私もすぐにマイリストに放り込んでいたのだけど……なかなか視聴の機会が訪れず。1年遅れでやっと視聴。

 作品の基本的な情報にも触れておきましょう。
 タイトルになっている『FUBAR(ふーばー)』は欧米で使用されているメタ構文変数。【Fucked Up Beyond All Recognition】 の頭文字を取ったもので、「どうしようもなくめちゃくちゃ」という意味。1930年頃から使われ始めたが、正確な由来は不明。第二次世界大戦中、陸軍で使われたスラングで、ドイツ語の「恐怖」を意味するFurchtbarが変形した……と言われているが、これもたくさんある説のうちの一つである。

 キャスト紹介。
 主演はこの人。アーノルド・シュワルツェネッガー。世界的なマッチョ・アクションスター。作品発表時は76歳。さすがにもうお爺ちゃんだ。

 娘役エマ・ブルンナーを演じるのはモニカ・バルバロ。
 映画の出演は2022年『トップガン・マーエヴェリック』。映画出演は他にもあるが、あまり日本では紹介されていない。むしろテレビドラマ出演のほうが多く2017年『リーサル・ウェポン』や、Netflixドラマの『THE GOOD COP/グッド・コップ』などに出演している。

 本作で宿敵となるのがボロを演じるガブリエル・ルナ。
 映画の出演で一番有名なのは『ターミネーター:ニュー・フェイト』に登場した殺人ターミネーター役。この時にアーノルド・シュワルツェネッガーと共演している。

 本作の評価は映画批評集積サイトRotten tomatoを見ると批評家による肯定評価は50%。一般レビューは68%。評価を見ても、まあまあ低め。

 で、実際のドラマを見た印象は……
 アーノルド・シュワルツェネッガー……お爺ちゃんになったなぁ……。

 アクションにキレがない!
 動きが鈍く、相手役のスタントのほうが元気に吹っ飛んでいくという感じ。

 パンチも重さがない!
 殴り合いやってても、強そうに見えない。

 そうは言っても、マッチョアクション俳優アーノルド・シュワルツェネッガーも76歳だよ(撮影時は75歳)。もうお爺ちゃんの年齢だよ。全盛期は過ぎちゃったな……。
 体もぜんぜん大きく見えず、共演の同じCIAに務めるアルドン役のトラヴィス・ヴァン・ウィンクルのほうが身長が高く、筋肉が付いているように見えてしまう。
 実はアーノルド・シュワルツェネッガーの身長は188センチ。でかいと言えばでかいが、欧米基準だとさほどでもない。それで、若い頃は大きく見せるために台に乗っていたり、ローアングルを多用したり……なにしろ筋肉が凄かったから、身長を盛っていても誰も気付かないほどだった。
 しかしあの頃の筋肉ももうない……全盛期の頃の記憶と照らし合わせて見てしまうから、シュワルツェネッガーが小さく見えてしまう。

 お話しはCIAスパイもの……だけどぜんぜんアクションをしない。アクションがあっても、アーノルド・シュワルツェネッガーはあまり動かない。むしろ娘役のモニカ・バルバロのほうが頑張ってる(頑張ってる……というだけでキレがある……というわけではない)。
 第1話は物語の見栄えを重視して、アクションを披露したけれども、その後はぜーんぜんアクションしない。アクションはあるにはあるけど、仕掛けが妙にショボい。頑張ってるふうを装っているけど、仕掛けがショボいので「なーんだ」という感じになる。やはりシュワルツェネッガーはあまり体を動かさず、体を張るのは娘役のモニカ・バルバロのほう。

 そうは言っても、シュワルツェネッガーも75歳のお爺ちゃん。もう仕方ないよね……。

 作品としての軸は、アクションより丁々発止の対話劇。フォーチュン・フィームスターとトラヴィス・ヴァン・ウィンクルの言葉のやりとりが中心になっている。ここは上手い人が脚本を書いているし、芝居も上手い人がやっているから、非常にうまく回っている。
(Rotten tomatoを見ると、この掛け合いが「平坦だ」ということで低評価になっている。そう? 私は面白かったけど)

 脚本作法でよくないな……と感じるのは、毎回ラストに追い詰められて「次どうなる!」というクリフハンガーで終わるが、その次エピソードになるとわずか5分で片付いてしまう。それも、なんともいえない拍子抜けな終わり方で。こんな終わり方をするんだったら、半端に引っ張らない方がいいよ……。
 この拍子抜けな感じが、また「なーんだ」ってなってしまう。でもコメディなんだ……と頭の切り替えをすれば、まあ……。でも、この終わり方をすると、次もアクションがあるんだろう……と期待して見てしまう。そこが良くない。

 それで、本作の主人公ルーク・ブルンナーにはどんなドラマが用意されているのか?
 そこに出てくるのが「熟年カップルの再婚するかどうか」というお話し。
 んー……どうでもいい。
 CIAスパイコメディという体裁だけど、ドラマの軸が熟年カップルの再婚話で、それでいいのか? ……という問題。
 もちろん、本作のドラマはそれだけではない。CIAとして家族にも秘密にしている「裏の顔」を持っているルーク。その裏のほうで、ボロという男と疑似家族関係にある。疑似とはいえ、関係が長いから、容易に断ちがたい関係性ができあがっている。そんなボロがある日、国際手配される武器商人に転向してしまう。
 関係の深い疑似家族であるボロが犯罪者となり、一方の本当の家族との関係は薄く、関係性はうまくいっていない……。
 どっちにしろ、結局はただの家族物語。そんなテーマ設計で良かったのか?
 確かに大柄なシュワルツェネッガーに父性はあるけれども、75歳のお爺ちゃんだしな(作中設定では65歳)……というのがあって。「父と子」の物語よりも、もはや成人した孫がいそうな年齢感。その年齢感で家族物語をやる……という無理もあるし、“国を股にかけるスパイもの”で家族のお話ってのもね……。

 対話劇が中心です……ということになると、申し訳ないけどシュワルツェネッガーの存在が邪魔に感じてしまう。だって彼がいると、アクションを期待してしまう。どうしても若い頃の、アクションが凄かった頃を想像してしまう。
 でも本作にはアーノルド・シュワルツェネッガーの存在を活かしたアクションといったものがぜんぜんない。アクションが来るか……と思ってもちょっとコメディ的なかわしかたをするし……。あらかじめそういう作品だ、と思って見ていればそれはそれで楽しめるが、しかしシュワルツェネッガーがいると、「なにか凄いアクションが来るんじゃないか」と期待して見てしまい、しかしそういうものはないのでガッカリしてしまう。
 ではシュワルツェネッガーが出ていなかったら、このドラマ見ますか……というとね……。

 それで、つまんないドラマなのか……というとそうではなく、最初から「シュワルツェネッガーが出ているけどアクションしませんよ。コメディですよ」という前提で見ていれば充分に楽しめる。私も最初は「なーんだ」となったけれども、途中から頭の切り替えをしてからは楽しめた。コメディドラマとしては、普通に楽しい楽しい作品になっている。途中にも書いたけれども、脚本がうまくできているし、台詞芝居の上手い人が出演しているから、こういうところはうまくいっている。
 ただ、やっぱりマッチョ俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーが出ているんだからなぁ……。手品のトリックで、「権威付け」というものがあって、例えばテーブルの上に黒い液体の入った水と、その横に墨汁を置く。するとなにも説明していないのに、見ている人は「コップに入った水は墨汁だ」と思い込んで見てしまう(実際には「ただ置いているだけ」で墨汁が入っているわけではない)……こういうのが手品の世界にある「権威付け」。
 で、本作はアーノルド・シュワルツェネッガーがいるから、「アクションが凄いんでしょ」という先入観で見てしまう。ここが作品の引っ掛かりどころ。彼の存在が邪魔に見えてしまう。

 最近のアーノルド・シュワルツェネッガーは見ていなかったけど、もうこんなにお爺ちゃんになっていたんだな……。もう全盛期のような筋肉もないし、体も動かない。あのマッチョ俳優も、75歳になったら普通……よりかははるかに体は大きいけれども、お爺ちゃんだ。マッチョ俳優もお爺ちゃんになるんだな……としみじみ感じるのだった……。

 あと玄田哲章さんの吹き替えで見たかった。なんで吹き替えがなかったんだろう。

 ちなみに第2シーズンの撮影進行中だそうです。私は……見ないかな…。


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とらつぐみ
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