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12月2日 イラスト生成AI「meitu」で遊んでみた

 最近、Twitter界隈で流行している「meitu」というアプリケーションがあるそうな。
 ほうほう、面白そう。私もちょっと遊んでみようかな。スマートフォン専用アプリなので、スマートフォンの中に入っている画像のみでお試し。

 うーん、ひどい。なんか服が皺くちゃ。ネクタイ部分どうなってる? 髪の毛もグチャグチャ。歯の生え方も中途半端。陰影だけきっちりしているから、それっぽい雰囲気が出ているけれども、不気味。

 顔以外の部分がだんだん『ボブネミミッニ』に見えてきた。スカート部分、謎の幾何学模様になっているし、奇妙なところから指が出てきている。画面右手、元写真はカーテンがちらと見えているのだけど、この部分が別時空に変換された。いったいなぜ?

 な、なんか顔だけ浮いてる。頭に中途半端にヴェールっぽいものが被せられているけど、なんで? 顔から下は体の形を捉えられていない。顔だけぼーっと浮かび上がっているように見えて不気味。

 意外とまともっぽく出たのだけど、でも体がどうしても崩壊しがち。

 顔はわりと出てきたけれど、ヴェールを被せられたり、雪を被っていたり……。体の形も崩壊気味。
 なんでこんなふうに出るのだろう。Twitterでいろんな画像を見たけど、ここまで酷いのはなかったはず。たぶん、私の写真は周囲をぼやけさせていたりするから、体の形を捉えづらかったのだろう。でもコンピューターには「曖昧なもの」を「曖昧なままにする」ということができない。なにかしらの具象を当てはめた結果、どことなくシュールなものができあがる……と、そういうことか。

 じゃあイラストでやってみますか。イラストをAIにイラストにしてもらうって、なかなか変な試みだけど。
 泉こなちゃんは……お、なかなか可愛いのが出てきた。わりと忠実に読み取っている。髪のディテールが進化しているのが見事。背景もきちんとしている。
 おーやった、やっと成功が1枚。

 日向縁ちゃんは?
 髪の毛は細かくなったけれども、体のデッサンは崩壊気味。服の皺として描かれたところをオッパイのボリュームだと思ったみたい。違うよ? セーラー服の丈が短いから、このポーズを取ると自然と布の形がああいうふうになるんだよ。
 キャラクターも別のキャラにされちゃったね。AIに放り込んでイラストの最終仕上げをやってもらう……というのは難しいかもしれない。

 オリジナルキャラクターのイラストを放り込んでみよう。
 おおっと、めちゃアレンジの入ったセーラー服。バランスが悪い! 脚のデッサンも崩壊している。足先どうなってんの? どういう場所に寝ているの? 色んな意味で「どうしてこうなった?」な感じ。

 あら! 元キャラクターより可愛くなった。こういうパターンもあるんだ。お花を背負っていい雰囲気。
 でも顔から下はデッサンが崩壊気味。掌の関節は消滅しているし、服の質感がおかしいし、スカートもどうなってんの? 脚もおかしくなってるし。それにどこに座っているのか不明。

 またセーラー服の女の子がベッドに寝そべっているだけ、というイラスト。元絵は抱き枕ふうに描かれた作品だったね。
 これは意外と悪くない雰囲気で再現された。細かいところでおかしくなってるけども。まず、セーラー服の丈からヘソは見えない! でもそうか、AIはいろんなところから学習しているから、「間違った見え方」も学習しちゃうんだ。

 コーヒーを持った、マフラーを巻いた女の子はどうなる?
 コーヒー缶じゃないタイプに変わったり、テーブルが出現したり、コーヒーそのものが消えたり……。なんでこうなる? って感じ。

 最後の1枚、AIには頑張ってもらいましょう!
 おっと、オリジナルの衣装が出てきた。おー、いいじゃん。髪型も服も、オリジナルデザインを出してきた。あー、こういう格好、天子サキさんに似合いそう。これは実際にこういうヘアスタイルと衣装、検討してみようかな……。
 でも元絵とは別モノだね、これは。

 と、AIで遊んでみたけれども、まあこんな感じ。Twitterなんかでみんな色んな画像を出していて、いい雰囲気になっているのだけど、私がやるとこの有様。モノによっては『ボブネミミッニ』みたいのが出てきた(それはそれで面白かったけど)。
 どうしてこうなるんだろう? たぶん私の写真もイラストも、シルエットラインが明確じゃないからだろう。仕上げの段階でぼかしたり滲ませたりするから、それがAIからしてみると「なんじゃこりゃ?」となるのだろう。でもAIは「曖昧なものを曖昧に捉える」ということができないから、なにかしらのイメージを当てはめてシュールな絵に仕上がってしまう。
 もう一つ気付いたのは、バランスがとにかく悪い。絵画的にバランスが悪い。中心線が歪んでいたり、左右バランスが歪んでいたり、デッサンが崩壊してたり、指が6本や7本も出てきたり……。人間だったらまずやらないようなミスだらけ。「なんとなくの雰囲気」だけを抑えているだけど、その絵が「良い/悪い」の判定ができない。審美性がまだ備わってないのだとわかる。ただ「雰囲気だけ」を抑えて再現している……という感じ。
 それにもう一つ、AIはネット上のいろんな絵を学習対象にしているから、色んな人が間違って描いているものを絵の中に再現してしまう。その一つがヘソの位置。イラストではセーラー服の裾からヘソがちらと見えている絵……はすごくよくあるのだけど、これは典型的な間違い。ヘソはスカートのベルト下。実写でもヘソを見せているものはあるけど、あれはスカートをずらしてんの。

正しいヘソの位置。普通ならスカートで隠れるはずの位置。

 とはいっても、バランスが悪い……というのは私の元絵からすでに悪いから、AI絵を悪くいうこともできないけど。
 AIイラストって絵の下手な人がやっつけで描いた原画に、そこそこ塗りの上手い人がきちんと塗ったら……ってな感じ。やっつけで描いているから脚のデッサンが崩れているし、指が6本も7本も出てきて、しかも折れ曲がっている。そんな絵を律儀に塗ったらAIイラストっぽくなる。
 でも逆に言うと、雑な原画でも塗りさえきちんとしてたら、一般層はだいたい満足する……というのが実体というのもわかる。これも真実なんだろうね。
 まず人間のほうが絵をしっかり見る力を付けなくちゃ、どうにもならん。

 余談。最近、DLsiteを覗いていると、AI生成イラストの作品が多くなってきた。DLsiteだけではなく、AmazonKindleにも出てきている。
 AIはどれも似たような絵を作るから、ぱっと見だけで「ああAIだ」とわかってしまう。中身を見てみても、やっぱりデッサンがおかしい。体が捻れてたり、指が6本くらいあって折れ曲がっていたり……。「AI生成」のタグを見る前から「あ、AIだな」と気付く。
 でも悲しいことに、すでに並のイラストレーターよりかはAIイラストのほうが出来がいいんだよね。はっきりいえば、私ががんばってイラストを描いて売るよりかは、AIにお任せしたほうが売れるものになる(実際、売れ行きを見ると私の作品よりも確実に売れている)。「体が変な方向に捻れてる」とか「手指のデッサンがぐちゃぐちゃ」とか……そういうのAIでなくても、デッサン力の低い絵描きを見るといくらでもある。そういう人と比較すると、すでにAIは上。並のイラストレーターはもはやAIに勝つことすらできない。するとAIイラストの脅威とは、「絵描きの仕事を奪う」以前に、「そこそこの絵描きに頑張ろうという意欲を奪う」ということだといえる。

 でもAIにも見てすぐに気付く弱点もある。それは「抽象度」。というのも、AIイラストはどれも同じような抽象度、密度感で絵を生成してしまう。AIイラストは高品質な厚塗りふうの絵を生成するけど、そのスタイルは作品によってはふさわしくない場合もある。作品の方向性によって抽象度は変化を付けていかなければならないのだけど、AIは全て同じ質感の絵を出してしまう。
 これを漫画にすると、非常に読みづらいものができあがる。すべての絵がみっちり詰まったようなディテールで描かれると、パッと見で何が描かれているのかわかりづらくなる。「書き込みすぎた漫画は読みにくい」現象が起きてしまう。
 そういう時、全体のバランスを見て「抜け」を作っていかねばならない。それは美的感性がなければならないのだけど、そういう「勘所」がAIにはない。

 とはいえ、AIはこのあたりの問題も早いうちに学習してしまうだろう。すでに並のイラストレーターが勝てないくらいAIイラストのできは良い。さらにAIが高品質になっていて、人の手でコントロールしやすいものになっていったら、イラストレーターは最高レベル絵師以外は生存できない世界になっていくだろう。
 同時に社会もAIに浸食されていき、AIに仕事を奪われる人が一杯出てくる。将来的に、AIに奪われる職種が40%以上あると言われているが、それくらいじゃ効かないかも知れない。そういう時、政府はきちんと対応できるのか(AIに仕事を奪われる人々を「自己責任だ」といって切り捨てず、ベーシックインカムといった策を導入できるのか?)。またそういう時代における「自己実現」の在り方はどうあるべきなのか。そういう考え方は今のうちから始めておいたほうがいいだろう。

 余談2。
 最近、セルシスが「画像生成AIパレット」を無償公開する……と宣伝していたが、結局これは中止になった。また国内のうるさい人が大騒ぎして、中断に追いやった……という「mimic騒動」と同じパターンだ。
 そうこうしているうちに、海外製AIツールはどんどん進化していく。AIは使われれば使われるほど、どんどんパターンを学習して精度を上げていく。日本はその使われる機会が奪われて、どんどん差を開けられていく。AIは人々の仕事を奪う危険性の強いツールである一方、この分野での研究が出遅れていいのか……という葛藤もある。
 うるさく騒いで中断に追い込む人たちがいる一方で、じゃあ海外製のものを使おう……という人たちも一杯いる。まるで海外の研究者に利益を与えているようだ。

 さて中断に追いやって良かった、なのか、中断に追いやった結果、研究に差を開けられるのか……。未来がどうなるかわからない。
 私にはどっちの未来も「アウト!」のような気がしている。「パンドラの箱」はもう開いちゃったんだから、そこは諦めちゃったほうが早いと思うんだが……。


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とらつぐみ
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