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6月21日 防衛省の研究する最新テクノロジーに期待

 先日、こんなニュースが出ていた。

電磁バリアー、立体ホログラム…防衛省が将来技術指針
(リンク元、記事消失)

政府は20日、他国に先駆けた装備品開発を目指し、新たに策定する「防衛技術指針」を自民党に示し、大筋で了承された。重要技術として、電磁波を利用して衝撃を減らすバリアーや架空の物体を見せ、相手を混乱させる立体ホログラムなどを例示した。政府は防衛産業の生産基盤強化法に基づく施策を実行するための基本方針案も示した。

 え? なにこのニュース。軍が電磁バリアや立体ホログラムの研究をしているって……そのアニメ、いつ放送?

 いやいや防衛省の話なんだけど。

 ここ最近、防衛費が増えたということもあって、このあたりの研究もにわかに活発になりかけているらしい。
 国防や軍事については私はまったくわからないが、興味があるのはこういった技術がいつ、どのような形で民生品として私たちの暮らしに下りてくるのか。
 軍事研究は時として私たちの暮らしを革命的に変えてしまうことがある。
 例えばこんなお話し。
 1960年アメリカ合衆国国防総省高等研究計画局(通称DARPA・ダーパ)は新しい情報の共有システムを構築するプロジェクトを立ち上げた。切っ掛けとなったのは1957年にスプートニク・ショック……ソ連が打ち上げた軍事衛星スプートニクがアメリカ上空を通過し、「空から核ミサイルを撃ち込まれるんじゃないか」という不安が広がったこの年だ。これを切っ掛けにDARPAは「もしも核ミサイルを撃ち込まれて、大地が放射能で汚染されても通信ができるシステム」を考案した。これが《インターネット》の雛形となるシステムであるARPANETだ。
 ただ、1960年代のお話しなので、すぐにこの技術が私たちの元に下りてきたわけではない。その後、長い期間をかけて電子メール、ファイル送信、音声トラフィック……といったシステムを一つ一つ構築し、1980年代にやっと私たちのもとにインターネットとしてやってきた。
 私がインターネットに触れたのは2000年代に入ってからなので、歴史全体から見るとかなり遅い方だ。

 他にもDARPAは全地球測位システムGPSを発明。
 同じくDARPAは1960年頃マイクロチップを発明。この技術を元に1971年インテル社のテッド・ホフとマイク・フリーマンがマイクロプロセッサ「インテル4004」を発明し、この技術は現在に至っている。
 アメリカ国防総省が1945年に発明したマイクロウェーブオーブンは後に電子レンジに。
 他にもハイテク防護服、画像認識システム……軍事研究発の技術は実は一杯ある。遡ると、「缶詰」も1804年、遠征時の食糧確保問題を解決するために発明された。私たちの生活は意外なくらい、軍事研究の上に成り立っている。

 今回出てきた話の中で「おっ!」と思ったのが「立体ホログラム」技術。現代では映像を照射する「壁」がなければいけない……という制約があるけど、もしも空間上にポンと画像を浮かび上がらせることができたら、これはエンタメの世界に革命的な変化をもたらす。
 想像してみよう。現代でもペッパーゴーストの技術を応用して、バーチャルアイドルをステージ上に浮かび上がらせる技術があるが、未来では「鏡」なんてものを使わず、その空間に、私たちと変わらない実在感を持ったバーチャルアイドルを出現させられる。いや、自分の部屋に召喚することだってできる。さらにいまいちパッとしない自分の部屋を緑豊かな森や海に変換しちゃう……ということもできるかもしれない。広告の世界にも革命をもたらすだろう。
 電磁バリアもうまくいけばセキュリティの世界に革命をもたらすかも知れない。もしも一般にバリア技術が下りてきたら、家族と友人以外その空間に入れない……というシステムを作れるかも知れない。泥棒の心配は永久に消える(その裏をかいてくるのが泥棒だけど)。
 他にも農業をやっている人は、山から下りてくる害獣の存在を電磁バリアによって心配しなくて済むようになるかも知れない。応用できるシチュエーションはいくらでも思いつく。

 他にもアバターコントロール技術、破壊されても自己修復可能な素材の研究、大量のデータを活用した未来予測……。それ、「軍」よりも庶民の暮らしに影響を与えない? ……みたいな研究がたくさんだ。
 インターネットは民生品として下りてくるまで時間がかかった。世の中の技術が追いついてなかった……というのもあるけど、インターネットなるものが何の役に立つのか、よくわかってなかったからだ。でも立体ホログラムや電磁バリアは何の役に立つかすぐにピンと来る。
 もしかして民間企業での研究が難しいから、防衛省が国費で代わりに研究してくれるって話なのか……みたいに考えてしまう。

 日本学術会議は1950年代から「戦争を目的とする科学研究を絶対に行わない」という宣言をして現在に至っている。
(※ 2022年7月、軍民両用の先端科学について「単純な二分は困難」とする見解を発表した)
 なーに言ってんだ……という感じ。軍での研究が巡り巡って私たちの暮らしをアップデートさせている。大学で学者をやっている連中がそれを知らないのは驚き。どうせなら戦争のためではなく、その後の平和利用を見据えたうえで研究をやればよい。鉄腕アトムなんて物騒なロボットも、私たちは平和的なキャラクターとしてきているわけだから。
 私たちは欧米発の技術ばかりに囲まれている。ここで一つ、「日本オリジナル」の発明品を作ってもらいたい。


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