6月20日 私はいつになったらサイボーグになれるんですか?
作業が終わった……と思うと急に体から力が抜けてぐったりとする。
疲れていた、ということに突然気付く。
体力が続かない。しんどい。体は摩耗していくものだし、体質問題でさらに削られていく。
サイボーグになれば、休息も睡眠も不要になってずっと働けるのだが……現実はまだサイボーグ手術を認めていない。
私はいつになったらサイボーグになれるのだろうか。
テロリスト集団として知られるショッカーは、一般人を拉致して改造手術を施していたことで知られる。
私たちのよく知る仮面ライダーは、洗脳を免れていた、ということもあるが基本的にはごく普通の人として暮らすことができていた。戦いに駆りだされるという問題を抱えていたが、それを除けば平和的に過ごせたし、なんとなればいつでも変身して超人パワーを使えることができた。
「変身しなければならない」という一手間があるが、理想的なサイボーグの姿だったといえる。
ふと思うのだが、なぜショッカーはそこまでの優れた医療技術を持ちながら、その技術を一般に公開しなかったのだろうか。そこまでの技術があれば「悪の組織」を結成しなくても、普通の医療行為として公開するだけでも充分な富と名声を得ることができたはずだ。
「洗脳」とか「姿が不気味」とか、あるいは「変身しなければ力が使えない」問題とか、そういう余計なものを省けばスーパーパワーを持った人間を生み出す技術を持っていたわけである。言い換えれば、超絶的に健康的な人間を作ることができたわけである。なぜそういう力を社会貢献のために使わなかったのか……。世界征服を企てなくても、それを公開するだけで同じくらいの富と名声を得たはずなのに。
…………
待てよ。
これはちょっと面白いストーリーアイデアかも知れないぞ。
物語は悪のテロ組織ショッカー解体から始まる。
ショッカーが囲い込んでいた優秀な技師、医師が一般社会に解放され、同時にスーパーパワーを持った人間を生み出す技術がもたされた。ただし、金さえあれば。
貴重な改造手術は高騰し、瞬く間にスーパーパワーは超セレブのものとなった。
スーパーパワーを持てば休息も睡眠も不要になる。24時間働けて、24時間学ぶことができる。
改造手術の条件を得るためには非常に厳しい審査があり、初期の段階から政府が管理していたために(一部のリベラリストに反対されながらも)、技術が悪の側に落ちることもなく、改造超人はよりよい社会を作るためだけに活用された。
ただし、「すでに持てる者」だけが超人になり得る……ゆえに格差社会はかつてないほどに広がっていき、底辺に落とされた人達はルサンチマンを動機に「改造手術解放」を訴えるのだった……。
(当然ながら、優秀な超セレブが超人になってより学びより働いていたから全体としての社会はより良い方向に向かって行っていたわけである。しかしその絶望的格差に一般層は「自身達は底辺である」というコンプレックスを深めていくことになる。それがルサンチマンを起こす原因となった。切っ掛けは「格差社会」「貧富の差」ではなく「妬み」だった)
一般市民による大規模な反発があり、政府は改造手術をより広い一般層に解放するが、同時に技術は犯罪集団の手にもわたってしまい……。
かつて封印されたショッカーの作りし「怪人」が、再び甦ることになる。
ただしそれは「ショッカー」という限られた一部組織によるものではない。どこの誰が製造したのかわからない「怪人」が日本全国のありとあらゆる場所に、時間を選ばず出現するのである。
しかもその技術は犯罪集団の手を借りて、海外へと渡ろうとしている……。
思い付くままに書いたが、さて、主人公は誰であったほうがいいだろう?
主人公はスーパーパワーを持っていない一般人。
一般人の目線で、その社会に起きている現象を、傍観者として見ている。日常ものの視点で、非日常を見る物語。
主人公は改造手術を受けた警察。
悪の犯罪組織に対抗するために、改造手術を受けた警察。犯罪超人に対抗するために特設された特殊警察の第1期生。
主人公は改造手術を施す側。医者。
医者として改造手術をどう見るのか? という視点の物語。改造手術を望む人達とはどんな人達なのか? あるいはこの医者が犯罪組織から莫大なギャラとともに改造手術を依頼されて……一時の富かそれとも良心かの選択に悩む。
主人公は悪の組織の側。
正義の側よりも悪の側から。怪人がどんな目的で、どんな手法で生み出されて社会に放り出されるのか。怪人が生まれる社会的理由を追及する。
ふむ。
最初に思い付いた時は、これはきっと医療ものになりそうだから私には無理。医療ドラマを描ける人に会ったときアイデアを話そうと思ったが、切り口を変えれば色んな風に展開させられそうだ。
ただ、改造手術が一般層に拡散されて……という話にすると、状況的にアメリカンヒーローものと対して変わらないということになる。もうちょっと設定を練ったほうが良さそうだ。
別作品の構想がいくつかあるのだが、たくさんある構想の1つに放り込んでおこう。
それはともかくとして、私はいつになったらサイボーグになれるのだろうか……?