アンフレンドのすすめ/VRChat雑考
突然ですが、皆さんは「アンフレンド/Unfriend」ってどう思いますか?
聞き馴染みのない方に説明すると、アンフレンドとは相手を「友達リストから除外する」ことで、「交友関係の終わり」と呼べるものです。SNSではよくある機能なのですが……ちょっと穏やかではないですよね。
そもそも相手とフレンドになるからには、どこかで出会って、気が合う、好感が持てる、共通点があったなど、「つながりたい」と思えるような縁があったはず。それなのにアンフレンドするからには、やはりそれなりの事情があるのでしょう。それこそ「友達ではいられない」と感じてしまう程の。
僕が普段過ごしているVRSNS『VRChat』は、フレンド関係になることで、相手の居場所がわかるようになり、そこへ行くこと=「ジョイン/Join」ができます。そうやってフレンドが集まり、みんなで楽しく過ごすわけです。
みんなで楽しく。……いつもそうなら理想的なのですが。残念なことに、楽しく過ごせないときだってあるのです。なぜなら、メタバースだろうと、アバターだろうと、『人間関係』であることには変わらないのですから。
この記事ではアンフレンドについて、僕の体験や考えをまとめています。読む人によっては拒否感を覚えるかもしれませんので、ご注意ください。
■アンフレンドしたい?
さて、皆さんはどんなときに「アンフレンドしたい」と思うでしょうか。もしかしたら「アンフレンドだって!?考えたこともないよ!」という方もいるかもしれません。それはきっと、フレンドに恵まれたか、あなたの器が大きいか。誰しも一度くらいは、頭をよぎったことがあるかと思います。
よくある理由としては、相手から何か嫌なことをされた、性格や価値観が違い過ぎる、一緒にいると疲れてしまう、などでしょうか。ひとそれぞれ、色んなケースが考えられますが、僕の場合は「二つの理由」があります。
理由①「会わないから」
ひとつは、単純に会わないから。別に嫌いとかじゃないけれど、自分からジョインしたり、相手からジョインされたりしない。共通の話題もなくて、お互いにそこまで関心がない。そもそも会う機会がない。そういう相手とは様子を見ながら、そっとアンフレンドしています。
急いで決断する必要もないのですが、そのままにするのも「少し怖い」と思うのです。最後にいつ会ったか思い出せない人が、何かの間違いで突然、ジョインしてきたら。きっと困惑しますし、気疲れもしてしまうでしょう。
もちろん、いまは関わりがなくても、またどこかで会うかもしれないし、思わないところで「つながる可能性」だってあります。フレンドのフレンドだったとか、イベントでばったり会うとか。でもそれなら再会したときに、あらためてフレンド申請してみてもいい。そんな風に考えています。
もしもそのとき「一度アンフレンドされたから無理です」と言われたら。それは仕方のないこと。一方的にアンフレンドしたのは、こちらですから。
将来つながる可能性を残すか、いまこのときを、穏やかに過ごしたいか。自分にとって大切な方を選べたらいいのかな、と思うのです。
理由②「合わないから」
もうひとつの、そして悩ましい理由がこちら。「合わない」というのは、性格や価値観はもちろん、VRSNSに求めるものまで含めた、広い意味です。
性格や価値観が合わないというのは、物理現実だって「よくあること」。それはそうですよね。これだけ沢山の人がいて、その一人ひとり、生まれも育ちも、好き嫌いだって全然違うわけですから。気の合う人に出会える方が有難い、めったにないことだと思います。
だからもし「なんか合わないな」と思うなら。距離を置いたっていいし、無理して相手に合わせたり、合わせてもらったりすることはないでしょう。実社会と違って、「距離を置くこと」を妨げるものは少ないはずですから。(もっとも、VRSNSだって立派な「実社会」なのですが…)
実際に、僕が「合わないな」と思ってアンフレンドしたケースとしては、「しつこく追い回してくる」「攻撃的、高圧的な言動が多い」とか「自分の思いどおりにしようとする」など。ひと言で言えば、一緒にいても楽しいと思えない場合です。
例えば、静かな場所でのんびり過ごしているのに、自分の都合であちこち連れ回そうとしたり、何かを命令してきたり。尋ねてもいないのに、自分の話を延々としてきたり。「いったい何なんだろう?」と思ってしまいます。
でもきっと相手には悪気も悪意もなくて。それどころか「遊んであげた、声を掛けてあげた」なんて、思っているかもしれません。僕はこれが怖い。「善意の押し付け」あるいは「無自覚な悪意」とでも言うのでしょうか。
■ステータスを変える?
「そういうのが嫌なら、ステータスを『オレンジ』にしとけばいいんだよ」
なんて言われたこともあります(それも、合わないと思っている相手から)
VRChatには、自分のステータスを設定する機能があって、例えば緑色なら「ジョイン可能」、赤色なら「取り込み中」など、自由に設定ができます。そして、オレンジとは「相手の承認を得ないと、ジョインできない状態」。これに設定することで、いきなりジョインされる心配はなくなります。
ただ、ジョインして欲しくないのは一部のひとで、ほかのフレンドには、気兼ねなくジョインして欲しい。だから基本的には、緑色にしておきたい。
どうして苦手なフレンドのためだけに、自分のステータスを変えるのか。ジョインしてもらえたら、嬉しいフレンドだって沢山いるのに。そもそも、ジョインされるのが嫌なひとって、フレンドと呼べるのでしょうか。
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もちろん、相手の嫌がることをしてしまうのは、誰にでもあり得ること。僕だってそうです。例えばこの記事も、嫌だと感じる人はきっといるはず。でも記事は、読まないこともできますし、問題があるなら運営に報告して、削除を依頼することも可能です。
では、フレンド関係はどうでしょうか。フレンドにはなってみたものの、合わないな、苦手だな、とても耐えられないと思ったなら。アンフレンドを選んだっていいでしょう。そういった「選択可能性」があるということが、健全なコミュニティには大切だ思うのです。
■話せばわかりあえる?
「ちょっと待って。アンフレンドの前に『話せばわかる』でしょ?」
そう思った方もいるかもしれません。確かにそうですね。互いに少しずつ、相手を思いやり、関係性を修復できたら。わかりあえたら。素敵ですよね。
ただ、上記のような「行為」には何の悪意もなく、むしろ「好意」の表れだったりするわけで(「好きだから、追いかけまわしちゃうの」みたいな)そういう盲目状態の相手に、こちらの意図が伝わるものでしょうか。
それに話し合いというは、程度の差こそあれど「相手にわからせる」か、「自分がわからせられる」かのどちらかです。相手にわかってほしいという素直な気持ちであっても、それがきちんと伝わるとは限りません。
「こういうの困るから、やめてくれない?」と伝えたとして、その結果、関係性は改善できるでしょうか。もしも子犬や子猫なら「しつけ」も必要。だけど相手はひとりの人間で、立派なひとつの人格です。自分の価値観で、それを矯正しようだなんて、「おこがましい」とも思ってしまうわけで。
だからこそ「合わない」なら「距離を置く」という選択肢を選ぶ。つまりアンフレンドしてみてはいかがでしょうか。
アンフレンドしたからと言って、相手の人格や人間性を否定するわけではありません。ただ自分とは感じ方や考え方、つまり「価値観」が違うから、距離を置かせて欲しいという話。
アンフレンドした後でも、あの人のこういうところは好きだったなとか、見習いたいなと思うことだってあります。ただ、フレンドではいたくない。友達にはなれない。それだけのこと。
自分と合わなかっただけで、他の人とは合うかもしれない。似た者同士、気の合う人同士で集まって、楽しく過ごせたらいいのですから。
(補足)そもそもフレンドって?
ここまで読んでみて、自分とは「フレンド観が違う」と思われた方もいるかもしれません。僕にとってフレンドは、一緒に楽しく過ごせる友達です。でも人によっては、フレンドは「どこかで会ったことがある人」だったり、「(ジョインの)入場券や許可証」であったりと、きっと様々でしょう。
特にイベントを主催する人だったりすると、相手がどんな人か関係なく、フレンドにならざるを得ないこともあって、悩ましいのかもしれませんね。この問題は、最近実装された「グループ機能」で解消できるのでしょうか。
*フレンドについての記事もありますので、よければ読んでみてください。
もっとアンフレンドして
とりあえずフレンドになるのだから、もっとアンフレンドしたっていい。
みんな限られた時間のなかでログインしているのに。苦手な人のために、苦しむのはもったいない。ログアウトしてからも嫌な気持ちになるなんて、なおさら馬鹿げていますよね。
「みんなと仲良くできる」のは素晴らしいことですが、絶対ではないし。そのために苦しむのはおかしな話でしょう。もちろん実社会では、そういうことも少なくないのですが。
また「アンフレンドしたら可哀そうだから」。そう思って付き合い続け、余計に依存されてしまうケースもあります。
その優しい気持ちは立派です。だから同じくらい、あなた自身にも優しくしてあげてほしいのです。自分自身を犠牲にして、誰かに優しくしたって、いつか破綻してしまう。あなたの心が。あなたが幸せにならないことには、誰も幸せにできないと思いますから。
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僕は「お悩み相談室」というのもやっているのですが、「そんなに苦しむならアンフレンドしてみてはどうですか?」と、伝えるケースがあります。相談される方も、そうして誰かに「後押し」して欲しいのかもしれません。
あなたは誰かのために生きているわけではないし、相手もあなたのために生きているわけではないから。合わないなと思ったら距離を置いてもいい。それだけのシンプルな話だと思うのです。
(もちろん、あなたが自ら望んで、誰かのために生きたいと思えるのなら。それは素敵なことだと思います)
それから「アンフレンドする理由」なんて説明しなくていい。説明しても仕方ないからとか、どうせわかってもらえないなんて話ではなく。あなたがそうしたいと思ったなら、それが理由だから。アンフレンドしたい事実が、すべてを説明しているからです。
それをどう解釈するかは相手の問題。あなたが考える必要なんてないし、説明する責任なんてない。考えることがあるとすれば、これからどうやって「健全に楽しむか」だけ。心から楽しむあなたの姿は、大切なフレンドまで「楽しい気持ち」にさせてくれるはずです。
罪悪感なんて覚える必要はありません。あなたは悪くないし、相手だって別に悪いわけじゃないから。ただちょっと言葉の選び方や気持ちの伝え方、アプローチの仕方に「違い」があっただけ。その違いが耐えられないようなものだったという。それだけなのですから。
だからどうか「もっとアンフレンドして」みてくださいね。
ここまで読んでもアンフレンドできませんか?ひょっとするとあなたは、アンフレンドなんて望んでいないのかもしれません……それもひとつです。
それでは最後に、アンフレンドするところを想像してみましょう。
ソーシャル欄から、アンフレンドを選ぶ。本当にいいのかな。楽しいときもあったな。きっと色んな想いが巡ることでしょう。
でもそれを乗り越えてアンフレンドができたら、たぶんスッキリします。これでもうあの人に振り回されなくて済むのかと。それが想像できるなら、それだけあなたが追い詰められて、精神的にも参っているということです。
どうか無理しないで、アンフレンドも選択肢のひとつにしてくださいね。
撮影ワールド:CARNATION˸Recollectionー想い出ー/雨降り(あめふり)さん