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岡田監督は佐藤が嫌い?


阪神ファンなら誰しも耳にした「岡田監督は佐藤の事が嫌い」

他の選手よりも風当たりが強い事から阪神ファンの間で「岡田監督は佐藤の事が嫌い」という噂が広まっています。

また、大きく波紋を呼んだ「佐藤二軍降格」がそうした噂を大きく広めた理由かと思われますが、果たして岡田監督は佐藤選手の事をどう思っていたのか。

この記事では岡田監督の佐藤選手への考えについて見ていきたいと思います。





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岡田監督は佐藤の事が嫌い?

そもそもなぜ、こうした発言が見受けられるようになったかといえば、打順降格や二軍降格など岡田監督の采配が原因ではないでしょうか。

元々佐藤選手には2番や3番など前の打順を任せて欲しいという阪神ファンの思いがありましたが岡田監督は基本的に5番固定でした。さらに打撃不振で打順降格となると阪神ファンに不満の声が上がるなど岡田監督の不信感を強め、批判的な声を増やしていきました。

しかし「岡田監督は佐藤選手の事が嫌い」の決定打は2023年、初めて佐藤選手を二軍送りにした6月25日の一件が原因ではないでしょうか。

当時、佐藤選手は打撃不振に陥り、6月の成績は打率179、1本塁打、8打点という内容。

中軸であれば決して見映えのいい数字ではありませんでしたが、降格でなくとも一軍で調整させる方法もあった筈です。

しかし岡田監督は二軍で調整させる事を選択。
岡田監督の代わりに平田ヘッドが抹消の理由について説明。

「今一軍に必要じゃないからファームに行ってる。しっかり鍛え直してもう一回ストライク、ボールの見極め。テーマ、課題はハッキリしてる」
ここまでなら打撃不振による抹消、で済みましたが平田ヘッドは最後に付け加えて、

「プレー以外も見られているぞ。若い選手も練習から見ているんだ。意識せなあかん」と伝えました。

「プレー以外のところも見られているぞ」
この発言が「岡田監督は佐藤が嫌い」の大きな原因になったように思います。

これによって佐藤選手の抹消が「癇癪抹消」と言われるようになり、そのコメントは事あるごとに皮肉として使われるようになりました。

岡田監督は佐藤選手には「起爆剤になってくれ」と声を掛けたそうですが、二軍降格後、佐藤選手は試合に出るなり3安打を放ち、試合後のコメントでは「状態は悪くない。やる事をやるしかない。前だけ向いて頑張ります」と、打撃不振での降格に反発するかのような発言もありました。



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岡田監督が佐藤を抹消した理由

佐藤選手を抹消したキッカケは、抹消前日にありました。

岡田監督はその日、打撃不振を理由に佐藤選手をスタメンから外しました。すると、スタメン落ちを聞かされた佐藤選手は試合前練習のノックに参加しませんでした。その時は室内練習場で打ち込みをしていたそうですが、それを不思議に思った岡田監督は、たまたま近くにいた木浪選手に「去年までスタメンを外れた選手はノックを受けないようにしていたのか?」と訊ねると、木浪選手は「そんな事はありません」と返答。

また、試合が始まっても佐藤選手はベンチにはおらず、コーチ陣に訊ねると「ロッカーでテレビを見ていた」との事で、

岡田監督は「これはあかん」と二軍降格を決めたそう。

岡田監督は、佐藤選手の怠慢がチームに悪影響を及ぼすとして抹消したのが即決断の理由だったそう。

当時の事を振り返って岡田監督は、

「佐藤に厳しく接した指導者は俺が初めてと違うかなぁ。仁川学院、近大とお山の大将でやってきた。それでもトッププレイヤーでいられる身体能力があったのは確かやろう。だから自分のペースでやろうとする。

夏前にスタメンを外した時、拗ねたような態度で守備練習に出てこなかったんよ。試合中もベンチの奥に引っ込んだまま。元々練習中もとことん追い込むような事はしない。適当にこなそうとする傾向がある。

どこかで言わなあかんと思ってた。直接は言わんよ。これは自分で気付くしかないんよ。野球の技術じゃなくて、野球に取り組む姿勢の問題やからな。佐藤の態度は他の選手が見てる。佐藤を特別扱いできない。だから平田ヘッドコーチに二軍に行ってもらう、と言わせた」


全体の規律を守る為、断腸の思いで主力の佐藤選手に厳しく接した岡田監督。

平田ヘッドコーチを介して自分の思いを伝えたのは、平田ヘッドの言葉なら素直に聞くだろうというのが理由でした。

平田ヘッドは一次政権の時から岡田監督のヘッドコーチを務めていましたが、人当たりが柔らかく、常に人を気遣い、気持ちを汲み取れるのは昔からで、そうした人柄を岡田監督は高く評価しています。

言葉少なで誤解を受ける事も少なくない岡田監督にとって平田ヘッドとは、自分の短所を補ってくれる存在だったのでしょう。



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人間性を重視する岡田監督の考え

二軍降格後、佐藤選手について和田二軍監督は、

「試合の準備も怠ってなかったし、攻守交代や一塁までの全力疾走など、気を緩める事なくゲームセットまでやっていた」

と語っており、一軍復帰後もその姿勢は継続され、岡田監督も「今では練習姿勢とか少しずつやけど変わってきたかな」と語っています。

岡田監督が問うた選手としての姿勢についてですが、プレーだけでなく、自分が周りに与える影響力についても大事に考える人で、例えば大山選手を4番に据えた理由についても、人間性を加味しての事でした。

「4番は皆が認めんとあかんからな。やっぱり大山かなぁ、というのがキャンプで見えた。練習の態度とかね。普段見ても、大山の周りに選手が集まっていた。慕われているんやろう。なるほどなぁと思ったよ」

4番はチームの勝敗を背負う重要なポジション。大山ならどんな結果でも皆が納得するだろう、そういう事がキャンプから選手を見てきて岡田監督が感じた事でした。

岡田監督はこうした人間性も成績に影響を及ぼすと考える監督で、また同じく、論語と算盤を愛読する栗山英樹さんも「人間性を育てる事がチームを強くする」と語っています。

論語と算盤とは、渋沢栄一の経営哲学書のタイトルなのですが、言葉の意味を直訳すると、

論語=道徳
算盤=経済


となります。
この書籍を簡単に要約すると、

「金儲けをする事と、世の中を尽くす事を両立せよ」

という事。

自分の為だけに金儲けをすれば、利益追求に走るあまり不正に走るなどして社会に悪影響を及ぼす一方で、利益追求を軽んじれば社会が豊かにならない。だから道徳心をもって金儲けせよ。

道徳と経済活動をバランスよく取り入れる事が大切だよ、と説いた本なのですが、これはビジネスマンのみならず他の職種にも当てはまる話だと思います。

岡田監督は佐藤選手の野球への取り組み、姿勢について指摘していましたが、チームの中心選手である佐藤選手には多大なる影響力がありますから、周りの目を意識した行動を心掛けて欲しかったのではないでしょうか。


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岡田監督は情の人

岡田監督は「采配に情は持ち込まない」と語っていますが、それは勝負事に私情を挟むと適切な判断が下せなくなるからで、

ですから基本的に選手のインセンティブの内容については見てないようです。

しかし一方で「選手の給料を上げてやりたい」とも考えており、その為には選手の能力を見極め、輝ける持ち場を作り、起用のタイミングを見極めるのが監督の仕事だと語っています。

時に、割りの合わない仕事を任せられる選手もいます。チームバッティングで数字を残せない選手も当然出てきます。ですが岡田監督はそうした成績に表れない数字も評価してくれるよう球団に掛け合って、査定に反映してもらうなど、選手の年俸に少しでもプラスになるよう配慮しています。

ですから、選手に対して損をさせる発想は岡田監督にはないのではないでしょうか。

佐藤選手に関しても、別に嫌っている訳ではなく、嫌われる覚悟で向き合っているように思えます。

岡田監督の口から、佐藤選手への期待の言葉がかけられる事は少なくありません。

24年の開幕前のスポーツ番組で、「今年期待する選手は?」の問いに佐藤選手の名前を挙げていますし、またシーズンが始まって6月に行われたインタビューにて岡田監督は、

「打順は佐藤メインで考えているんですよ。なんとか楽に打たそうっていうか。相手ピッチャーにしても」

と打撃不振にあえぐ佐藤選手を気遣っていました。
また、厳しく接するのにも、

「あいつはまだポテンシャルを発揮し切れていない。もっと上の数字を出せるから俺は発破をかけてるんよ。出来ない奴にやれとは言わん」

このように、厳しさは期待の裏返しである事を示唆しています。



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岡田監督は生粋の阪神ファン

岡田監督は大阪生まれで、生粋の阪神ファン。肩書きが選手、コーチ、監督になってもそれは変わらず。

岡田監督は常々、阪神が勝つ為にはどうすればいいか、対戦相手のデータや二軍の試合を常にチェックして四六時中、阪神の事を考え続けてきました。

岡田監督の原動力は間違いなく阪神愛でしょう。でなければプライベートにまで仕事を持ち込み、阪神に没頭する事は不可能でしょうし。

果たしてそれを考えた時に、これほど阪神愛のある岡田監督が好き嫌いで采配をするのか。そうした感情論で勝負に身を委ねるのはあまりに馬鹿げており、蓋然性が低いように思います。

岡田監督は補強を好まない事で有名ですが、そこには選手想いの一面が窺えます。

岡田監督は、補強は適材適所を埋める為のものでなければ本来そこに収まる筈の既存の選手が控えに回ってしまい割りを食う事になりかねないとして、積極的に補強は行わない考えを示しています。

それであれば、自前の選手たちの適性を見極め、輝ける役割を与える事で戦力の底上げを図った方が補強になるし、選手の出場機会と給料を守ってあげられるという考えで、その根底には選手に対する愛情があります。

こうした考えに納得出来ない阪神ファンも中にはいるでしょう。既存の戦力だけで勝てるほど甘くない。実際それで連覇を逃しています。

ですが、少なくとも選手への愛情は感じられます。

岡田監督はただ単に強い阪神が好きなのではなく、選手の事も好きで、その選手と強い阪神を作り上げたいという想いで勝利と育成という矛盾した理想を追い求めてきました。

昭和気質であまり自分語りをしたがらない為に、周りから誤解される事も少なくありませんが、岡田監督の元で野球をしたOBたちから出てくるコメントはどれも好意的ですし、それが岡田監督の本質を表しているように思います。

優しくするだけが指導ではないと思いますし、厳しさの中でしか伝えられないものもあるのではないでしょうか。

岡田監督の厳しさが、愛情に裏打ちされた指導である事を一阪神ファンとしては信じたいです。

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