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現役ドラフトは補強の目玉になるか?成功に必要な課題と改善

大竹、細川、水谷、鈴木選手らが新天地で活躍するなど、現役ドラフトに意義を感じられる明るい話題も増えてきましたが、以前として悲観的な見方も少なくない制度。しかし、選手の才能の受け皿として現役ドラフトは必要な制度だと思いますし、戦力補強として目玉になる可能性を秘めていると思います。

この記事では現役ドラフトの課題と改善について書いていきます。




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まずはじめに

現役ドラフトは才能の受け皿


出場機会に恵まれない事を理由に活躍できない若手を減らす為、ポジション争いの激しいチームから手薄なチームへと再分配するのが現役ドラフトの役割で、

いわば自前のプロスペクトにこだわらず、

12球団のプロスペクトが共有の財産となる事を目指した制度ではないでしょうか。

日本のプロ野球はメジャーほどトレードやFAなど活発ではありませんが、現役ドラフトのように選手の流動性を高める事で少しでも多くの才能を活かす道を作る事はとても大切だと思いますし、課題は多いものの、今後も議論を深めていくべき議題だと思います。

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現役ドラフトの課題と改善

現役ドラフトの課題を見る為に、まずは現行のルールについて記載しておきます。

まず12球団が条件に合った選手を必ず2人以上はリストアップする(年俸5000万未満)

※第2回となる2023年では、リストアップする選手について「年俸が5,000万円以上1億円未満の選手をリストアップした球団は、5,000万円未満の選手を追加し、3人以上の対象選手をリストアップする」ことが新たに定められた

※現役ドラフト対象外選手
・外国人選手 ・複数年契約を結んでいる選手 ・翌季の年俸が5,000万円以上(ただし、1名に限り年俸5,000万円以上1億円未満の選手を対象とすることができる)

・FA権を保有している、または行使したことがある ・育成選手 ・前年の年度連盟選手権試合終了の日の翌日以降に、選手契約の譲渡によって獲得した選手

・シーズン終了後に育成から支配下契約となった選手

各球団が指名したい選手1名に投票 最も多くの票を獲得した球団が1番目の指名権を獲得 最多得票の球団が複数となった場合、同年のドラフト会議におけるウエーバー順で指名権を決定 指名権を獲得した球団が選手を指名し、指名権は選手を指名された球団に移行同様の手順で、12球団が各1人を指名した時点で1巡目の指名を終了 1巡目終了後、2巡目の指名意思を示した球団で2巡目の指名を行う

以上のルールを踏まえて課題と改善について考察していきたいと思います。

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課題1 必ず誰か指名しなければいけない


現役ドラフトは確定で選手を指名しなければいけません。球団に拒否権がない為、戦力の見込みが感じられないと感じた場合でも支配下枠を一つ消費する事となり、チーム的にはネガティブな要素でしょう。

改善案

指名するかどうかは球団の任意でいいと思います。強制的に指名する事は選手獲得にネガティブな印象を与えかねませんし、戦力補強という観点から見れば、ニーズに合わない選手を獲得するのは球団の意に反しますから、ここは今後検討していくべきかと。


課題2 移籍した選手の出場数が確約されていない


出場機会を増やす為の制度であるにも関わらず現状は移籍選手に出場数が確約されていません。これでは他球団に移籍しても飼い殺しの懸念は消えないので、現役ドラフトの本質からすると、改善すべきポイントではないでしょうか。

改善案

一定の出場数を担保した方が、本来の現役ドラフトの主旨には合うかと思います。
球団側のリスクもありますが、一つ目の改善案として、選手を指名するか否かを球団が任意で選べれば、戦力として見込んでいる選手の指名ならば出場数確約は納得出来るのではないでしょうか。


課題3 リストアップする選手は球団が決める


メジャーのルール5ドラフトでは自動的に選手が選ばれるのですが、日本では球団が選んでリストアップする仕組みになっています。

これによってなにが起きるかと言えば、恣意的に戦力外のような選手を選んでしまうリスクがあるという事です。

現に一回目のドラフトでは手探りだった事もあり、ほとんど翌年には戦力外になる選手が多かったです。

改善案

恣意的な選択を減らす為に完全自動で選手をリストアップする事で、懸念は解消されるかと思われます。

ですが、球団が選べるというのは裏を返せば細川、水谷選手のように、選手の為を思って温情で現役ドラフトにかけるという選択も出来るので一概に自動化がいいとも言い切れないのが難しいところ。

二回目の現役ドラフトでは、全くの1軍未経験の水谷瞬選手がいたり、佐々木千隼、鈴木博志投手のように1軍経験のある選手がいましたが、対象を絞り込むと、選手の取りこぼしの懸念があります。

ですから、実践を繰り返しながらその都度細かいルール変更などは必要ではないでしょうか。


課題3 育成選手は対象外


現役ドラフトに掛かる選手は支配下選手の中から選ばれますが、これによって生じる不具合が

一時的な育成契約で指名回避。
これはFAでも例があり、育成による実質的なプロテクトとして問題視されています。

・改善案

こうした抜け道を作ってしまうのは取りこぼしが懸念されますし、育成選手も指名出来るようルール変更はするべきではないでしょうか。


課題4 1巡目指名が得票数で決められる


現役ドラフトの1巡目は得票数を集めた選手のチームから順に指名が行われるのですが、これは通常のドラフト会議と同様に、戦力均衡化を図る場合、上位チームと下位チームの差を詰めるには至らないルールだと思います。

現役ドラフトが戦力補強の目玉となるには、下位チームの救済になるルールにした方がいいのではないでしょうか。

改善案

指名順を完全ウェーバー制にして、最下位チームから順に指名できる制度にするべきではないでしょうか。



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さいごに


現役ドラフトは今後、戦力補強の一つとして大きな役割になる可能性を秘めた制度だと思います。

戦力補強として目処が立てば、FAのように人的保証もなく金銭面の不利で獲得出来ないという事も起きませんから、コストを押さえた補強になる筈です。

自前のプロスペクトを手放すのは抵抗感もあるかもしれませんが結局、才能は開花しなければ宝の持ち腐れです。

それに12球団でプロスペクトを共有すれば、それだけ選択肢も増え、可能性の幅も広がる訳ですから、むしろ自前のプロスペクトにこだわる事はチームとして可能性を閉ざしているとも取れます。

まして、選手層の厚さからプロスペクト選手を起用できずにただ保有する事は果たして最適な運用なのか。


アスリートは選手生命が短いだけに、若いうちに経験を積まなければ次の世代の選手により多くのチャンスが渡ってしまいますし、出場機会が少ない事を理由に才能が活かせないのは球界にとっても損失でしょう。

プロ野球の発展、そして選手がより輝ける環境になる為に現役ドラフトが前向きなものであって欲しいと思います。

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