【Po-Essay】こんなに広い店内で
パスタが食いたいなと
寒々しい日が続く頃は
ペペロンチーノが丁度良い
炊飯担当の昨日の私
ボイコットを決めんでいたので
少し早い寝覚め 目を擦り
ダイナー 足を運ぶ
開店時間から3分後
早すぎたかと思いつつ 店内を見渡す
既に2人 腰を落ち着かせていた
杞憂に終わり
角側立地の一等地へ通される
店内を見渡せる強ポジション
窓からまだ高い日が滲む
暖色のライトは力負け
手早くペペロンチーノ
セットでコーヒー ゆっくり待つ
さて 美文でも書こうかしら
それとも今日の予定でも
そうして画面に気を取られた内に
異常事態が首元に突きつけられた
カップルが 横にいる
こんなに広い店内で
壁際コーナー追いつめられて
私は逃げられなくなっていた
慄然とする私
込み上げる笑い
当てつけとしか思えない
それなら先ほど通したスーツの女性
なぜ横に通さない?
強ポジション
たちまち弱ポジション
見渡しの良さは却って孤立を加速する
ペペロンチーノが目の前へ
正直 それどころじゃない
寝ぼけ眼を開けたのは
カプサイシンでもカフェインでも無かった
「ミックスピザにしよう」
なるほど シェアには丁度良いな
つつがなく交流するレフトコーナー
ごめんなさいねペペロンチーノ
にんにくのアイデア 私は好きだ
でもちょっと バツが悪いか
独りの味わいを楽しんでいると
2人の味が届いたようだ
「見て!おいしそう!」
普通のピザだけどな
「わ!アツアツだよ!」
あたりまえだろ
「ずずずっ!」
ピザ食うのに啜るな彼氏
私の心のツッコミを
店内BGM えげつないテンションコード
助長する
しばらくして
追加のガーリックトースト
頼む気概を無くした頃
店内は埋まりつつあった
配置の意図が見えてくる
でも別に
それとこれとは別問題だからな
このガラガラの店内に人が埋まる
このカラカラの冬空に考えが浮かぶ
人肌の恋しさ
怨嗟の焔に代わって
気づけば心に火はついた
寂しさも埋まれば
隣はグラスビールを頼んでいた
時間も埋まったのだろうか
老夫婦の姿へ代わったことに
気がついた