湯けむり温泉殺人事件 前編4
その場にいた全員がそれに注目する。
「あ、あの今……声がしませんでしたか」
作務衣姿の女性が問いかけるが、誰も答えない。
馬頭が体を起こす。
「液体?なんだ……これ」
警部が部屋へ入り、彼の目の前に立つ。
「君、体の調子はどうだ。怪我はないか」
「いえ、なんとも。それよりも……この状況を説明してもらえますか」
「そうだな。まず、私たちは警察官だ。そこのお嬢ちゃんは探偵。君の部屋から不審な物音がして、確かめに来た管理人が、血を流して倒れているのを発見し、通報したんだ。昨日何があったかゆっくりでいいから話してくれ」
「昨日……昨日は仕事を終えここに帰り、どうしたんだ。そうだ、麻雀部の皆と徹マンしたんだ。そうして……たしか罰ゲームでワインのラッパ飲みを……」
「ラッパ飲みだと?おい、nyancatくん。これを調べてくれ」
nyancatが屈み、手であおぐようにして匂いを嗅ぐ。
「詳しい分析は後になりますが、匂いからしてワインで間違いないでしょう」
警部が体のなかにあるものを全て吐き出すようなため息をつき、肩を落とす。
「いや、彼が無事なのはいいんだが、あの話し合いは、徒労だったのか」
「まあまあ、英語の勉強になったと思って」
veiはしばらくの間呆然としていたが、突然弾かれたように抱きつく。安堵のためか、かなりの力で抱き締めている。halpikaは少し苦しそうにしていたが、全く抵抗しない。
「oh, halpika. I thought you were dead, but you're alive. Well, that's good.」
「I am living.」
「Yep, You're living.」
veiは肩に手をのせたまま、彼を見つめる。
「halpika, please pepsi.」
「oh…… ok, today's pepsi」