ハチミツ
母は、昔からハチミツやシロップの注ぎ口についた余りを、蓋を閉める際に手で掬って舐める癖がある。どうにも不衛生に思えてならないので前々からやめてほしいと思って2、3度やんわり注意したこともあるが、1度きりしか拭ってないから(2度舐めはしていないという意味か)大丈夫だと言って改める様子がない。
先日の朝食時、当然のように掬い取って舐めているのを目撃し、たまりかねて、舐めるのはナシ!と言った。(こういうことを言うのも、幼少時からの刷り込みがあり、「母といつ会えなくなるか分からないから、嫌なことを言って傷つけたら自分も後悔する」という縛りから抜け出せない。なかなかの勇気を伴うのだ。)
母はけろりといつもの反論をしてきたのだが、そこに息子も加わり、「そうだよ、だめだよおばあちゃん。菌がつくよ」と言ったのだ。
菌までいうことはないかなと思ったのだが、私も咄嗟にどちらにも何のフォローもできず、変な沈黙が流れた。
あーあ、老い先短い母に好きなようにさせた方が良かったかな、言わなきゃよかったかな、という思いと、でも、いやなものはいやなんだもん、はっきり言った方がいいよ、という私の最深部からの反論もあり、しばらく心がざわついていたのだが、今朝母がまたハチミツの注ぎ口を指で拭いてから蓋をし、その指をぺろっとしていたのを目撃した。
あの会話はなんらダメージをもたらしていなかったんだ、ということが分かり、母の響かなさ加減に、腹が立ちつつもなんだかホッとした(笑)
追記
食べる時に啜り込むくせもあり、トマトのように口に放り込めば済むようなものまで音を立てて吸い込んでいる。自分としても音を聞くのも嫌なのはもちろんのこと、母は上品な老婦人にみられることが多いため、がっかりしている御仁も多いのでは、と余計な心配をして、最初はやんわり、途中から割とはっきり目に、すすり込みはやめようと提案している。
提案する時は毎回ハチミツ案件と同じ心理的逡巡があるが、オチもハチミツ案件と全く同じである。