左利きのブルース
我が家の子供たちは2人とも完全な左利き。
私も基本左だけど、字の時だけは右。それが一番楽。
幼稚園卒園前に、各自自分の名前をノートに練習する時間があった。そこでみんなが右で書いていたので、真似しているうちに習慣になった。
(というのが私の記憶なのだが、母は、「字は右で書くようにできているから右で書こうねと私が導いた」と言っている。)
そのときの光景は今でも覚えている。お手本として一行目にそれぞれの名前がひらがなで書かれたノートが配られ、それをみながら一生懸命書き写して練習した。
1ページ目は問題なくすぎたのだが、めくって次ページになった瞬間、前のページから透けて見える文字をそのままなぞり始める(言うなれば鏡文字の状態)子が出現し、それは変だ、いや先生のお手本通りだから間違い無いのだ、と園児が二派に分かれて争ったのも懐かしい記憶だ。
正直、左利きで困っていることはほぼない。自動改札機とか、片側にしか注ぎ口がないお玉とか、ふと立ち止まれば不便なことはたくさんある。でも、それしかないのだから自然に自分をそれらの環境に適応させてきた。
ハサミも、実は左利き用の方が使いづらい。右利き用のハサミで切れる角度をいつしか身につけたようだ。
あとは、左利きを自覚するのは、誰かと食事をする時に左側をキープしたくなることくらいか。
会話のきっかけにもなったりするし、みんなとちょっと違うワタシというのも悪くない気分だった。
子供たちが手でものを掴むようになった時、自然に左が出ていたので、私は左が強いんだな〜とあまり気に留めなかった。
字を書くときに左だとやりづらそうだなと思ったけど、書きやすいのが一番だと思って注意することはなかった。
が、義母にとっては左利き放置はありえないことらしかった。子どもたちが絵や字をかけるようになった頃、喜ばれるかと思ってその様子を写真や動画に撮って送ったが、絵や字がどうのというのは二の次で、「左利きは直した方がいい。私の子供達(うち1人は私の夫)も左を使っていたが、私は矯正した。そのおかげで2人は右が使えるようになった。直すのは親の愛。親の勤め。」という長ーいメールがきた。
一度や二度ではない。
世の中は右利き用にできてるから、子どもたちが苦労する、
左利きのままでは悪目立ちする、
躾がなってないと思われる、と何度も何度も言われた。
それも、「お父さん(=義父)がそう言って心配していたので、私が代わりに伝えました。この話をしたことはお父さん(=義父)には内緒です。」なんて、お義母さんがお義父さんを隠れ蓑にしてるのバレバレやーとツッコミたくなる一文を添えて。
お義母さんは、もしこの世が左利き優勢だったら利き手を左手に矯正するんですか?
その右手を使うな、全部左手でやれ、と言われたら右手を使わないでいられるんですか?
ほぼ左利きで生きてきて、それなりに折り合いをつけてやっていってる私に向かって、なぜそんなこというんですか?
当時この思いで悶々としてた。
でも当時はまだ若かったので、ずばずばとは言えず。
自分でもなるべく柔らかい言葉を選んで自己主張を入れたお返事をしつつ、夫をつついて間に入ってもらった。
夫が味方してくれたのはありがたかった。
最終的に、夫の、「俺たちに任せてほしい」という言葉で義母は諦めたようだ。
夫は左右盲なところがあり、咄嗟に右と左が分からなくなる。焦ったときは、えーと、お箸がこっちだから、とか、茶碗と同じ方か、など、一旦左右という言葉から離れて確認作業をしてから理解しているようだ。ここ左だよ、と言うと一瞬、え?どっち?とパニックにやることもあり、運転しているときなどは怖い。
夫はもしかしたら使いたい方の手を心置きなく使える環境でいたら違っていたのかもしれないと密かに思っている。
左利き右利きのみならず、あ、オタクはそうなんですね、ワタシはこうなんですよ、とお互いの好きとか得意を認め合えれば、世の中の大半の揉め事は減ると思うのだが、、
そんな日が来るといいな。
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