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「卒業」「卒業」「卒業-GRADUATION」尾崎・斉藤・菊池
尾崎豊さんの「卒業」(1985年1月21日リリース、CBSソニー)
斉藤由貴さんの「卒業」(1985年2月21日、キャニオンレコード)
菊池桃子さんの「卒業-GRADUATION」(1985年2月27日リリース、バップ)
この世に「卒業」という曲はさまざまなアーティストが山ほど歌っている。でも、これだけ短期間にリリースされた「卒業」が3曲とも後世に歌い継がれているのは非常に珍しいのでは?と勝手に思い、当時の自分の記憶などを掘り起こしながら、この3曲について書いてみたい。
どれも、思い入れがそれなりにあって、とても懐かしい。1985年の初めと言えば、私はまだ12歳。小学6年生だ。
小学6年に、この大人びた3曲の卒業の意味が分かるはずがないとお思いの皆さん!その通り、確かに、分かるはずがない。
でも、切なさと寂しさのようなものを小学校卒業の時にも、曲の感傷に浸っていたような記憶はかすかにある。
まず、尾崎豊さんの「卒業」。
あ、これは正直言えば、高校になってから友人に借りたCDで初めて聴いた。小中時代の私には尾崎ロックに触れるほど繊細な心を持っていなかった。まだ、売れ線の曲ばかりに触れていた。
このころ、尾崎「卒業」にハマっていたら、何かに反発して、勉強しなかったかもなあ・・・。そういう事情で、後回しに。
斉藤由貴さんと菊池桃子さんの卒業はほぼ同時期というイメージがとても強い。
3月の卒業時期を見越して、それぞれ2月下旬にリリースしているあたりは当時の策略もしっかりと感じられる。
ネットなど一切ない当時、音楽情報はもっぱら「トップテン」などの音楽番組で仕入れるしかなかった。この2人はよく登場していた記憶があるなあ。
斉藤「卒業」
「制服の胸のボタンを下級生たちにねだられ
頭をかきながら逃げるのね ほんとはうれしいくせして」
女の子視点の歌詞が展開されていきます。
「離れても電話するよと 小指差し出して言うけど
守れそうにない約束はしない方がいい ごめんね」
なんだか、ドライな女の子だなあ、なんて思ってたのかなあ。
「ああ 卒業しても 友達ね それは嘘ではないけれど
でも過ぎる季節に流されて会えないことも知っている」
こんな歌詞を小学生が理解できるはずもなかった。
今、改めて聴き直して考えると、かなり現実的な女の子を歌っていたんだなあ。
で、最後。
「ああ 卒業式で泣かないと 冷たい人と言われそう
でも もっと哀しい瞬間に 涙はとっておきたいの」
ああ、完全なる別れが卒業後に別れというか決別がくることをしっかりと予感していたんだね。「そのときまで、涙はとっておく」という強がり。
今なら、少しは分かる。
アイドルが歌っていた曲だけど、現代にも通ずるとってもいい別れの曲。大好き。
菊池「卒業」
ほのぼの菊池さんが、くぐもったような声で歌う。
「帰るときはいつでも遠回りしながらポプラを数えた
4月になるとここへきて 卒業写真めくるのよ
あれほど誰かを 愛せやしないと」
高校生ぐらいかな。
令和の今に比べると、女子生徒が東京に進学するのは少し難しかったかもしれない。男は東京に、女は地元に、みたいな別れの曲が多いよね。
太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」はもう少し時代をさかのぼりますが、まさにその典型ですね。
「4月が過ぎて 都会へと旅立っていくあの人の
素敵な生き方 うなづいた私」
まさに前時代的な感覚ですね。
でも、あの頃はそれが当たり前だったのかもね。今から40年近く前だもんね。
ただ一言。
「あれほど誰かを愛せやしないと」というのはすぐにウソだと気づいたはず。そんなことはない。人間にはしっかりとした忘却機能があって、次に進める力を持っている。
自分もそうだった・・・。
で、最後。尾崎「卒業」。
これは、半端な別れの歌ではない。
これほど過激な「卒業」ソングをいまだ聞いたことがない。尾崎「卒業」を歌う卒業式など行われないだろうしね。あまりにも反体制過ぎる。
高校や中学の卒業を尾崎は「この支配からの卒業」と歌う。
これを聞いた同年代は、この表現に熱狂的に共感した。
私の解説よりも引用を進める。
「卒業していったい何わかるというのか?
思い出のほかに何が残るというのか?
人は誰も縛られたか弱き子羊ならば
先生、あなたはか弱き大人の代弁者なのか?
俺たちの怒りどこへ向かうべきなのか?
これからは何が俺を縛り付けるだろう?
あと何度自分自身 卒業すれば
本当の自分にたどり着けるだろう?」
ああ、50歳になる自分にも刺さってくるなあ。まだまだ何も卒業してないなあ。本当の自分ってなんだろうね。
「仕組まれた自由に
誰も気づかずに
あがいた日々も終わる
この支配からの卒業
闘いからの卒業」
26歳で早逝した尾崎さん。こんな歌をつくれる人はもう出てこないだろうなあ。
もう尾崎さんの倍近く生きてきたけど、ぬるま湯に浸かって生きてるなあ・・・。
この3曲ともに、とても好きな曲です。
2022年8月24日 トラジロウ