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スピッツ「ホタル」 正しいものはこれじゃなくても 忘れたくない
アルバム「ハヤブサ」(2000年7月26日リリース)の10曲目。
このアルバムはとても好きなアルバムだけど、スカッと明るい曲は皆無。そこがとてもいいんだけどね。
この曲「ホタル」もアルバム最終盤にある「ジュテーム?」と同じく、不倫なのか、浮気なのか、許されぬ恋に戸惑いながら進んでいく様子をつづっているように感じます。
この歌詞の曲名に「ホタル」と付けるセンスも、心が震えるほど素敵です。
きれいな前奏で始まります。
歌詞をしっかりと認識する前から、アルバムの中できらりと光っていたのが「ホタル」と「8823」。歌詞を知ってからは、もっともっと好きになりました。
「時を止めて 君の笑顔が
胸の砂地に 染み込んでいくよ
闇の途中で やっと気づいた
すぐに消えそうな かなしいほどささやかな光」
草野さんの独唱のようなスタイルで始まっていきます。
なるほど、この虚しさをホタルと表現するのかあ・・・。脱帽。
サビは
「甘い言葉 耳に溶かして
僕のすべてを汚してほしい
正しいものはこれじゃなくても
忘れたくない 鮮やかで短い幻」
と続く。
一番最初のフレーズと同じ曲調に載せており、言い換えれば、サビからスタートした曲とも言えるんですね。
この「正しいものはこれじゃなくても 忘れたくない」という宣言が大好きです。
人の感情って、そうそううまくコントロールできませんものね。とっても難しいです。なので、不倫とか浮気とか、そういうものが世の中にはあふれているのですが、それは仕方のないことなのだといつも思わされます。当事者になると、とてもしんどいものですよね。
草野さんは、そのことを優しく包み込むような歌をたくさん書かれています。
妄想なのか、ご自身がそうなのか、よく分かりませんが、なかなか経験しないと書けないような気もする・・・。うーん、どうなんだろ。
「紙のような翼ではばたき
どこか遠いところまで」
今にも壊れてしまいそうな「翼」しかないけど、誰も知らないどこかにたどり着きたいと歌う。でも、決してたどり着くことはないという裏返しでもあるんだろうなあ。この曲は、本当に虚しさしか歌っていない・・・・。
最後は「それは幻」と締めくくる。
この曲が「ホタル」だ。
ほのぼのした郷愁を誘うホタルではない。
決して許されることのない虚しさをホタルと表現している。
とっても悲しい歌。
2022年8月18日 トラジロウ