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フジファブリック「タイムマシン」 誰か僕に 誰でもいいよ 優しくしてくれないかい

志村正彦さんの遺作となったフジファブリックのアルバム「CHRONICLE(クロニクル)」の13曲目。

「虹」や「若者のすべて」などなどフジファブリックのメジャー曲はたくさんあります。しかし、この「タイムマシン」は、【私に寄り添ってくれている度】では、圧倒的トップに躍り出てくる一曲。

静かな、静かな曲です。

まるで、死ぬことを予感しているかのような歌詞のよう・・・。
そんな風に、どうしても感じてしまいます。
実際のところ、志村さんは死ぬとは思ってなかっただろうから、誰か(たとえば、過去の恋人とか、自身にとって大切な人)に対して歌っているんだろうけど・・・。

「欲を言えば 欲を言えば 君の声が聞きたいんだ」ってフレーズ。
志村さん、あなたの声が聞きたいです。
心の底から、あなたの声が聞いてみたかった。
録音だけじゃなく、ライブでのあなたのパフォーマンスを見てみたかった。

歌詞を見ていきます。

「時が経ったら 何か変わるかな 少しは偉くなるものなのかな
なりたかった大人になれたのか 悩む今日であります」

自身を振り返り、郷愁に浸っているのでしょうか。自分自身で自分に合格点をつけるのは非常に難しい。

「誰か 僕に 誰でもいいよ
優しくしてくれないかい」

私にとっては、このフレーズがこの曲で最も大切な部分。こんなに情けないこと、なかなか言えないよね・・・。ホントは言いたい。優しくしてもらいたい。でも、現実には誰も優しくなんてしてくれない・・・。

ポール・マッカートニーがビートルズとしての最後の楽曲「The End」の中でこんな風に歌ってる。

「And in the end,the love you take is equal to the love you make」

結局のところ、あんたが受け取る愛(優しさ)は、あんたが誰かに捧げた愛(優しさ)と同じ量になるんだよ。

確かにそうだよな。自分だけ、優しくしてもらうなんて、都合がいいよね。

まあ、でも、なかなか優しくできないし、優しくしてもらいにくい世の中だよね。1人で生きていくのが楽だしね。
もしかしたら、「タイムマシン」に共感することさえ、身勝手なことなのかもしれない・・・。

歌詞に戻る。

「大きな声で歌えば 届くかと できるだけ 歌うんだ」

もうこれもね、志村さんが死んじゃった後では、「志村さん、あなたに届けたい」としかファンはもう感じられないよね・・・。だから、みんなで歌ってる。

「僕はまあまあ 元気でいるけど
すべてうまくいくことはあんまない
誰かに話すことで楽になる そんな日もね あるよ」

そうね。なかなかうまくいかないよねえ。誰かに話す・・・かあ。

「欲を言えば 欲を言えば 君の声が聞きたいんだ
戻れるのかな タイムマシンのように
同じように笑えるかい」

タイムマシンは、ないんよねえ。あればなあ・・・。絶対にないことが分かってて、こう歌ってるからこそ、むなしさが強調されているね。

「だいたいそうだ ホントにそうだ
すべてがうまくいくわけない
だいたいそうだ なるべくそうだ
後悔だけはしたくないのです」

誰が、誰に宣言しているんだろうか・・・。明確には分かりませんが、志村さんが亡くなった後に聞くと、もの悲しさしかありませんね。後悔せずに逝けたのでしょうか。

この「タイムマシン」という曲。時折、無性に聴きたくなる、とっても大切な曲です。

2022年9月4日 トラジロウ

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