toragin

アラフィフの頭の中、心の内、腹の底、指先の感覚などを表現。 やたらとよく食べるねこ2匹に家計が圧迫。 全然理解できないのにコルトレーンを聞く。 「ねこのElegy」よろしくです。

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アラフィフの頭の中、心の内、腹の底、指先の感覚などを表現。 やたらとよく食べるねこ2匹に家計が圧迫。 全然理解できないのにコルトレーンを聞く。 「ねこのElegy」よろしくです。

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〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー⑥【最終話】

その九 異変を感じたよしお スキーは急に食べなくなった。そもそも痩せ型だったが、さらにガリガリになってきた。代わりにお腹だけ広がるように膨れた。  「体型がおかしい…」妻の心配そうな声。  「お腹こわしたんじゃないかな。」妻の気を楽にさせようとして、よしおがはぐらかしたが、はぐらかせなかった。  (何かの病気だな)  2人はスキーをいつもの動物病院に連れて行った。  「別の病院を紹介しますね。」いつも元気のいい医師が、引きつった笑顔で言った。 その十 迷わないよしお 「伝染

    • 〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー⑤

      その六 言えないよしお よしお夫婦の子供は独立しており、長男は、時々家に顔を出す。無口で無駄なことはしゃべらない。笑顔を振りまくタイプではないが、人当たりは優しい。もう酒が飲める年齢だが、よしおと酌み交わしたことはない。  (とっつきにくいが、いいやつなんだろう)  スキー達にも時々おやつを買ってきてくれる。  「最近どうだ?」などとよしおも聞いてみたいが、聞けずにニコニコしている。もっぱら長男と話すのは母親の方だ。ずけずけと色々聞き出す。  (照れ屋だからな)  いつものよ

      • 〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー④

        その五 脱走したスキー 猫は外を見つめる。見張りのように。  スキーも例外ではなく、部屋の中から外をじっと見つめていることが多い。  (外に出たいのかな)  家の中に閉じ込めているようで、よしおは罪悪感をおぼえる。  (よし!)  一念発起した。ホームセンターに行き、万能ネットやビニールロープなどを買い込んだ。  よしおの家はマンションの1階で、ベランダが2階以上に比べて少し広い。柵で囲っているが、猫なら余裕ですり抜ける。その柵や天井部にネットを張り、ベランダをスキーに開放し

        • 〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー③

          その四 チビだったスキー よしおが名付けた名前、スキーについて。  誰からも(妻ですら)聞かれないので、誰にも言ってないが、一応由来がある(大袈裟だか)。  (どうせ大したことない理由だろ)  スキー自体、この名前を気に入ってはないが、嫌いでもない。そもそも名前を付けてもらうなど思ってもなかった。  スキーは漁港近くの住宅地で保護された。お腹をすかし、トボトボと歩いていた。小さいながら、なんとなく先を見据えていた。  (動けないところをカラスにやられるかな)  やられるなら

          〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー②

          その三 言葉が出ないよしお よしおは休みの日、町内の小学生野球チームの練習に顔を出す。コーチというわけではない。よしおの子供がかつて在籍していたチームで、子供が大きくなってからも、懐かしくなって覗いていたら、「手伝ってくれ」と声をかけられ、たまに参加している。  玉拾いやキャッチボールの相手などの雑用だが、いやいやというわけではない。  (むしろ)  汗をかいた爽快感と後のビールのうまさに惹かれ、楽しんでいる部分が大きい。  「行ってくるよ。」  今日も野球に出かけるよしおの

          〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー②

          〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー①

          その一 期待しないスキー (そんなとこに貼ってもねぇ)  飼い主を募集するチラシが公民館の入口に一枚だけ貼られた。茶トラの子猫の写真。のちに「スキー」と名付けられる猫。  スキーは漁港近くの住宅街で拾われた。拾った女性は、すぐさま猫を多頭飼いしている近所の人に一時的にスキーを預け、飼い主募集のチラシを作って公民館の自動ドアに貼った。なぜ公民館なのか。過疎地の漁港内で比較的人が出入りする場所であることと、その女性が公民館に勤めていることの二つの理由による。  (出入りがあると言

          〔ねこねこ小説〕スキーとよしおのエレジー①

          不登校クライシス

           表題は「自分の子供が学校に行かないこと」の危機ではなく「自分の子供が学校に行かないことで、親がダメージを受ける」ことの危機です。  私の子供3人(男3人)が、それぞれ学校に行かなくなり、それに対し何もできなかった親の分際で、勝手な意見を少々述べさせていただきます。  長男は、中学2年の途中から徐々に学校に行かなくなりました。理由は明確でした。いわゆる”ヤンチャ化”です。朝起きなくなり、親が何言っても適当にかわし、時には悪態もつきました。他校のヤンチャとも付き合う様になり、

          不登校クライシス

          「悪いひとたち」との出会い

           そのバンドを知ったのは、若い頃に行ったボーリング場。ジュークボックスから流れてくる「Baby Baby」を聞いてから。映像も同時にモニターに写し出されていて、このバンドのライブが『カッコイイ』ことは一目で分かった。 (昔のロカビリーの雰囲気だな)  特にボーカル&ギターがブライアン・セッツァーと少し被った。ギターはグレッチ。ロカビリーは少々苦手だった私だが、この曲はそれよりハードで、当時ハードロックを聞いていた私にも興味を持たせてくれた。  驚いたのは、この曲が続けて何度も

          「悪いひとたち」との出会い

          シカとミミズのエレジー

          (やはり二足獣は相入れない生き物だな…)  カミュは小さくため息を漏らす。角と角の間にシワがよる。  テレビやネットはこう伝える。 『農作物が荒らされている問題が深刻』『被害は数十億円』『車や電車などとの衝突による交通事故が増加』『森林の下層植生を食べつくすため、集中豪雨の発生による山林崩壊が都市災害につながる』etc  かつては「聖獣」とまで言われ、絶滅を危惧されたカミュ達だが、今では畑を荒らす獣害の親玉としての地位を不動のものにしている。今はこう呼ぶ…害獣と。  (森

          シカとミミズのエレジー