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未だ正解が分からない

実家でひとり暮らしだった父がこの4月グループホームに入所した。
父がもしかして認知症じゃないかと疑いが出てきたのが丁度1年前の4月だった。
その頃は介護の知識がなにもなく、グループホームがどういった施設なのかはもちろん、介護保険についてもなんの知識もなかった。

父に認知症の疑いが出始めた頃、本屋で目にした1冊で家族信託という制度を知った。
親が認知症になってしまうと預貯金や財産の管理ができなくなってしまうから、家族が財産管理をできるようにしておく制度があるらしい。
早速兄弟に相談、父にも話してこの制度を利用しようとしたが、費用がかかりすぎる。
前にもお世話になったことのある司法書士さんに相談して父と私の間で任意後見人の契約を結ぶことにした。
この頃はとにかく焦っていた。
司法書士さんに手続きをお願いしたものの、一向にすすめてくれない。
当初の予定で1ヶ月くらいと言われたのに、1ヶ月を過ぎても何の連絡もなく、結局何度も急かして2か月以上かかった。
その間に父の認知症が進行したらどうするの?
認知症になってしまったら契約もできないんじゃないの?

認知症がどんなスピードで進んでいくものか分からなかったから、何か打てる手は打っておかなきゃ、と焦っていた。
もちろん病院へも連れて行った。
でも、実家近くの認知症外来は、やっと取れた予約が2ヶ月先だった。
2ヶ月も何もしないで放っておくわけには行かない。
 
もし、父が本当に認知症だったらどうしたらいいのか。
兄弟は4人いても誰も父を引き取り同居できる状況ではない。

とりあえずは車の運転をやめさせたい。
でも、実家は車がなければ買い物にも行けないような場所。
どこかに家事代行サービスを頼む?どこに?
行政?介護保険?ヘルパーさん?
単語だけは聞いた事があっても、何なのか分からないことばかり。
それまで無縁な分野だったから、とっかかりになるものが分からない!

ネットやら人の話やらで、なんとか「地域包括支援センター」に相談すると良いらしい、と判明した。
早速、実家のある自治体の「地域包括支援センター」へ行ってみた。
窓口の人に今の父の状況を話し、免許を返納した場合、行政で支援してもらえることはあるのか聞いてみた。
「なにもないんですよねぇ。」で終わってしまった。

介護保険を使ってのサービスを受けるには介護認定を受けなければならないらしい。
介護認定を受けるためには医師の診断書が必要で。
父の場合、歯科にはかかっているが、身体は丈夫で、かかりつけ医もない。
病院にかかるのは2ヶ月先。

何かあってからでは遅いから、車は兄が強制的に取り上げた。
買い物は週に1回私が連れて行くことにした。
それにしても、父の生活能力が目に見えて劣ってきている。
私が週に1回行くだけでは不安しかない。

何か相談に乗ってもらえるかも、と一縷の望みをかけて「〇〇介護支援センター」というところに電話をかけてみた。
後でわかったのだけど、電話口はこの後お世話になることになったケアマネジャーさんだった。
この頃はケアマネさんが何なのかもよく分かっていなかったけど。
このケアマネさんがすぐに動いてくれて、介護認定の申請を進めてくれた。
残るは医師の診断書のみってところまで。
認定は降りていないけど暫定でヘルパーさんやデイサービスも利用できることになった。
すごく助かったし、私の気も少し楽になった。

その後認知症外来で認知症の診断を受け、介護認定も正式に手続き、今まで以上に介護サービスを利用できることになった。
それでも、父の生活を支えるために 私は最低週2回以上実家へ行かなければならなくなった。
実家までは車で往復2時間、実家エリアのごみの収集日に合わせて毎週通った。
その間に父が入居できそうなグループホームを探した。
4施設見学したけど、どの施設もすぐには入居できない。
入居は順番待ちで、いつになるかはわからないと言う。
認知症の父にはグループホームが良いのでは、と思ってグループホームにこだわっていたけど、他の施設も考えるべき?
高齢者施設の種類がありすぎて、何を基準にどう選べば良いかが分からない。
それに、少し疲れてしまった。

この時期につらかったのは夫の理解が得られなかったこと。
結婚当初から言われていたのだけど、私は夫の家に嫁に入ったわけで、私の親の世話や介護は長男である兄や兄嫁の義務だと。
私が私の実家の事で煩うのは間違っている、と昭和の価値観で攻めてくる。

私が実家へ行く頻度を減らしたくてケアマネさんに相談してみたけど、多分人手不足なのだと思う。
改善策はなかった。
兄も弟も実家からは離れた場所にいるし、なにより仕事がある。
年齢的にそれなりの立場で仕事も頻繁には休めないだろう。
必然的に、実家に一番近い私、仕事をしていない私、兄弟で唯一女の私が父の世話を引き受けることになる。
私自身、実の父親の世話自体は別に苦にならないのだけど、なんだかなぁ。

父の認知症の進行は穏やかだった。
病院で処方してもらった薬の効果もあるのかもしれないし、デイサービスに通って同年代の人と交流が増えたせいかもしれない。
1年前よりも明らかに生き生きしている。
グループホームに入所が決まった時も、説明したら納得して入所してくれた。
ホームに面会に行くと、栄養状態が良いせいか、実家でひとりだった頃よりしっかりしている気もする。
1年前、慌てて任意後見の契約をしたけど、今のところその契約は役に立っていない。
本当に必要だったんだろうか。
それでも、住人の居なくなった実家をどうするのか、という課題はまだ残っている。
どうしても実家を売却しなければならなくなった時に契約が役に立つんだろうか?
この1年間、自分ができることはやってきたつもり。
父がグループホームに入ったとは言え、ホームの行事や運営会議があったり、実家も時々は空気を入れ替えに行かなきゃいけない。
後々の実家の処分なんかを考えると、もっと他にやっておくべきことがあったんじゃないかとも思ってしまう。

そう言えば、知人のひとりに
「親の介護はこの先の自分のためにやるんだよ。今頑張っておけば後悔しないから。」
と言われた。
そうだね。
今までやってきたことが、その時の私ができることだったんだから、と思ってもう少し頑張ることにしよう。

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