『吟醸掌篇』とは何か(2)──『吟醸掌篇』のはじまり
(ヘッダー画・山﨑まどか)
栗林佐知(けいこう舎編集人)
■『吟醸掌篇』のはじまり
上質で面白い、短篇小説の文芸誌を作りたい。
同人誌や寄せ集め文集ではない、読者に愉しんでもらえる、商品として流通できる文芸誌!
『吟醸掌篇』は、そんな思いで始まりました。
なぜ、そういう文芸誌を作りたかったかというと……
まず、わたくし編集人(栗林佐知)のことなのですが、
わたしは35歳の時に「これからは小説を書いて生きていこう」と、毎日小説を書くことに決めました。3年後の2002年に「小説現代新人賞」を頂き、その後、編集者さんに、毎月作品を見てもらいましたが、23戦22敗。
あきらめてまた新人賞に応募し、2006年、「太宰治賞」を頂いて、本を一冊出してもらえたものの、担当編集者さんは、「うちは有名な作家としか仕事をしない」等々とのこと。
幸いなことに、別の出版社の編集者さんが声をかけてくださり、市販の文芸誌に作品を何回か載せていただくことができました(本当に、とても感謝しています)。
ところが、そこまでです。あとが続きません。
新人賞は、頂いてからが地獄の始まりです。
これまで励まし合って「応募」してきた仲間たちがいなくなり、編集者からきついことを言われたり、密室の中でヒドイしうちにあったりしても、訴える場がありません。精神状態もささくれだってきて、あんなに好きだった「小説を書くこと」が、「聞くのもいや」になって……“八方塞がり”という感じになりがちです。
若い方は再度の受賞のチャンスがありそうですが、うそかまことか、「一度受賞した高年齢者に二度はない」などという噂も聞こえてきますし(本当かどうかわかりませんけどね)。
ではどうしたらいいか。
「どこにも載らない」などと嘆いていても仕方ない。
ならば自分で活躍の場をプロデュースすればいい!
それも、自分だけじゃなくて、同じような状況で負けずに「売れないけど良い作品を書いている」人たちと一緒に、ムーブメントができたらすごいんじゃないか! と思ったのです。
だけど、「ジャイアンのリサイタル」みたいなものを出したら、
「やっぱ下手くそだね、だから売れないんだよ」という「負の証拠」の品になってしまいます。だからぜったい、ちゃんと「買ってもらえる」値打ちのあるものじゃなきゃダメだと思いました。
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