とらぶた自習室(2)勉強メモ 野口良平『幕末的思考』第1部「外圧」第2章
← マガジン「とらぶた自習室」top
← けいこう舎マガジンtop
← とらぶた自習室(1)野口良平『幕末的思考』第一部 第1章
筆:栗林佐知(けいこう舎)
■2023年1月12~13日読
野口良平『幕末的思想』第一部「外圧」
第二章「状況を担う人」
黒船(西洋文明)は、脅しで開国を迫る理不尽な強者。 その反面、人権、自由平等、社会契約という叡智を持つ者でもあった。
攘夷(「ペリー理不尽! 闘うぞ!」)か 開国(「幕藩体制・身分社会はもはや無理!」)か、 幕末の列島人は引き裂かれる。
こんな状況を担う「時代の人」として、吉田松陰が語られます。《この自己分裂の克服への希求が、松陰においてどれほど切実なものであったか》
野口良平『幕末的思考』みすず書房 第1部 第2章「状況を担う人」p27
1977年のNHK大河ドラマ「花神」では、正直すぎる吉田松陰(篠田三郎)が、安政の大獄で捕まり「取調べの役人を説得しようとして、疑われてないことまで言っちゃう」という場面がありました。
これは大河ドラマの脚色なのかと思ってたら……本当なんですね。
どんだけ純粋なの、吉田松陰。
■ "イメージ"はいったんはずして……
私たちは 「尊皇攘夷」なんて聞くと、ネトウヨみたいな人を想像し、進んだ西洋文明を学ぶ「開国派」のほうがステキに感じる。
けれど、それは乱暴すぎないか。
歴史の大事な現実を無視してしまわないか。
野口良平『幕末的思考』 が画期的なのは、まず攘夷思想の必然を正面から見たところかも。 そこから人々の真摯な思考の過程をたどる。
圧倒的強者(黒船でやってきた西洋社会)の脅しを前に、弱者はどのように正義を主張しえるかということ。
現代とは違うのだ。
清がアヘン戦争でやられていた。
松陰は藩を脱し、学び、人に会い、攘夷思想を抱くと同時に、西洋の社会思想にも近づく。
けれど結局、彼は正解?を出せずに刑死。
「下々のくせに政治を語った」という罪で。
「留めおかまし大和魂」という松陰の辞世句は、 私たちには一見「げー大和魂だって~」と思える。
けど、答えを求めた松陰の切実な軌跡を追えば気づく 。
それは「自分は答えを出せなかったが、続く誰かが…」 という声だったに違いない。
《その呼応の想定なしにこの歌を理解することはできない》
野口良平『幕末的思考』みすず書房 第1部 第2章「状況を担う人」p43
■ またしても、いろんな人に巡り会う!
私たちはたいてい、幕末の有名な人しか知らないですが、本当にもういろんな個性がそれぞれ考え、語り、影響し合ってたのですね 。
たとえば、松陰と文通した、聾唖の僧、黙霖。
諸国を遍歴しつつ、筆談で王政復古を説き続けた。 す、すごい。なんなの、このファイトは!
(「尊皇」「王政復古」って今聞くと、なんだか気味悪いけど 、この当時には、「民を安んずる道」と考えられてたようです)
← マガジン「とらぶた自習室」top
← けいこう舎マガジンtop
← とらぶた自習室(1)野口良平『幕末的思考』第一部 第1章
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?