林浩治「在日朝鮮人作家列伝」06 高史明(コ・サミョン) (その12)
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高史明──
暴力と愛、そして文学
―パンチョッパリとして生きた (その12)
13)長男誕生
結婚して5年目、下北沢に引っ越した。
金天三は野間宏から本を読めと言われて文学書を沢山借りてきて読み倒し、そのうち古本屋から安いものを買ってくるようになった。
そして金天三自ら書くようになった。
1960年4月、韓国で四・一九学生革命が起こり、李承晩政権が倒れる。
日本では日米安全保障条約改定に反対する運動が大きくなっていった。
6月に入ると毎日のように国会前でデモが行われ、共産党員だった百合子も足繁く国会前に通った。天三もときおり足を運んだが、入る隊列のない彼は腕組みをして見ているしかなかった。
6月15日国会デモの高揚のなかで、東大の女子学生樺美智子さんが死んだ。官憲側は転倒による圧迫死、学生側は機動隊による暴行死と主張した。
日本共産党は、官憲の暴力を批判するとともに、樺さんが共産主義者同盟(ブント)の活動家だったことから、トロツキストとして否定的に扱った。
1961年、百合子の父から借金して小平に15坪ほどの小さな家を建てて引っ越した。家の前は見渡す限りの麦畑で風が吹くと土埃が入ってきたが、とにかく家に風呂もあり、三畳一間の狭さながら金天三の書斎もあった。
翌年百合子は妊娠した。二人は結婚したと言っても籍は入れていなかった。子どもは岡の籍に入れて日本人として育てることにした。
百合子はお腹が大きくなるのを隠しながら教員生活を送った。当時は今よりずっと女性に厳しい時代だった。女性が働きながら子どもを生み育てるのは大変だった。
62年9月30日、息子が生まれた。子どもの名は真史とつけた。岡真史だ。
真史は我慢強く、陽気で、誰にも親切、冗談をよく言うよい子に育った、と両親は思った。
「息子の〝演技〟は完璧だった」と後に百合子は回想している。
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※ヘッダー写真:収穫期が近づいたコムギ
撮影:2007年8月7日
ソース: http://www.freepictureclick.com/pictures_of_wheat/ (free source)
著作者:Photographer2008
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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%82%AE より