見出し画像

とらぶた自習室(5)勉強メモ 野口良平『幕末的思考』第1部「外圧」第4章-1

← マガジン「とらぶた自習室」top
← けいこう舎マガジンtop
← とらぶた自習室(4)野口良平『幕末的思考』第一部 第三章-5

筆:栗林佐知(けいこう舎)

2023年1月20日読
野口良平『幕末的思想』第一部「外圧」
第四章「変革の主人公とは誰か」-1


■ 坂本龍馬、登場

朝勉強。数行読むごとに、ええっ、へーっ、なになに!? となる『幕末的思考』。で、ナメクジのようなスピードで進んでおります。

第四章「変革の主人公とは誰か」-1では、坂本龍馬が登場。

脱藩して、勝海舟を斬ろうとしたら逆に説得されて子分になった龍馬は、長州藩の久坂玄瑞たちにも出会い、「藩を越えて手を携え、列強に対峙しよう!」という考えに共鳴し、走り回って人をつなぐ役割を果たしていた。

勝海舟の使いで坂本龍馬が、越前藩の藩政改革派村田巳三郎に会いに。
「外国の商船を攻撃して報復を受けてボロ負けした長州を助けてやらねばならない」と、龍馬は持ちかける。
「放っておけば長州は欧米の植民地になってしまい、そうなれば、日本全体の問題だ」と。
だから、「越前の殿様、松平春嶽土佐の山内様ら有力大名が江戸へ行き、幕府開明派の大久保忠寛らと提携して、幕政を改革し外国との交渉に向かうべき、 《今は有志者が傍観してすむ時ではない》p63 と。

村田は、 「今度のことは長州が勝手にやらかしたことだ。(そうだよ~) 幕府が交渉して、列強の艦隊に引いてもらうとしても、賠償金を払わねばならない。だが朝廷はこんどの長州のやらかしを『よくやった』といっていて(くれーじー!)、賠償金なんか払うなというだろう」

坂本は、 「そうだけど、長州があんなことをしたのは、列島全体がピンチだと考えたからだし、やつらを見捨てるとゼツボーして暴発する。もし列強と交渉が決裂して戦争になるなら、列島全体で向かうべきだ」

2度目の訪問でやっと相談がまとまったが、結局、越前藩の改革は失敗して村田たちは処罰され、計画は頓挫してしまう。

■ 坂本龍馬の本気

坂本龍馬はドラマでも小説・漫画でもよく表象されてる。あの、青空を背にジャンプしてる元気なイメージが、逆に、この人の本気を覆ってしまっているような気がする。かっこだけ印象づけてしまってるような。

本書に引用された坂本の手紙に、ギョッとする。
松陰といい、坂本といい、なんというまじめさだ。人の好さというか。
こういう純粋さは、子どもには無理で、大人にも無理だろう。青年期の潔癖さゆえかもしれない。が、今では絶滅した生き方の姿勢でありましょう。

《「昨今の困難な状況に際しては、ものの数にも入らない自分たちのような存在でさえ、日本という国全体のことを憂い、(略)懸命に尽力しています。それなのに、将軍も諸大名もその意味を理解せず、弥縫的な議論に終始しているのは、いかにも恥ずかしいことではないでしょうか。郷里には、脱藩し、父母を見捨て、妻子を見捨ててまで(略)尽くしても、それは当然の義務にはあたらない、という考えをもつ方々もいるようですが、それは、列島全体が瀕している困難を知ろうとせず、何の努力もせずに現状維持が可能だと思い込んでいる「ヘボクレ役人」や「ムチャクチャをやぢ」流の考え方なのです」(56)》『幕末的思考』p65
同志、池内蔵太の両親に宛てた手紙。
((56)=平尾道雄監修、宮地佐一郎編集解説『坂本龍馬全集』光風社、増補四訂版、1983年、p22-26)

ぶっちゃけ「植民地になっても戦争だけはいや」という考えはダメ? と思っていた私は、龍馬に「ムチャクチャをやぢ」といわれてしまいました。

で、実は(略)のところには《天子の御心を安んじたてまつろうと》《朝廷に》が入ってたのですが、混乱を招くのでちょっと省きました。 なぜ「世を建て直す」=「朝廷に尽くす」のかはよくわからないのですが、これについては、追い追い著者が語ってくれるだろうと予想します。

■ 私が怖いこと──松陰・龍馬の本気が利用されること

いやしかし、 龍馬も松陰も、志士たちも、そのイメージを、後の時代の侵略の果てにむちゃくちゃな戦争に飛び込む「大日本帝国」に利用されたのですね。「国のために死ねる」というのは、自分たちの共同体づくりには命をはらないと無理だ、という覚悟であって、アホで狡くて国民を搾取することしか考えてない政府によって兵隊に取られるのとはぜんぜん違うんだけど、こんなに違うことを、一緒くたにしちゃう言動が今もある。
私はそれが怖いです。

あと、もう一つ思ったのは、 もしかしたら、坂本龍馬とか吉田松陰とかは、260年内戦のなかった世界史上類のない国特有の人間かもしれない(どうなんだろう)と。
戦国時代だったら、龍馬はともかく松陰なんか、3秒で毛利元就にやられてただろうな。
列強が来たのが戦国時代だったら、台湾の映画「セデック・バレ」(部族同士の首狩り戦争が続く中、日本帝国軍の植民地化に対して、先住民たちが果敢なゲリラ戦で戦う)みたいなかんじになっちゃったのかな。
そんな想像したって意味ないけど。

→ とらぶた自習室(6)野口良平『幕末的思考』第一部 第四章-2

← マガジン「とらぶた自習室」top
← けいこう舎マガジンtop
← とらぶた自習室(4)野口良平『幕末的思考』第一部 第三章-5


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?