TORABARD Season1 作者あとがき
全国のトラバーの皆さんこんにちは。
初恋はヤクルトレディのNITROです。
とりあえず、コンテスト応募の締め切りがあったので、小説を一区切りさせました。
結果発表は今年の10月になるらしいです。
小説を書いてるときは、原稿データがPCトラブルで全て消えてしまって、顔面は蒼白になり、コーヒーをこぼしてデスクは茶色になり、お先は真っ暗になったときもありますが……
「この世で大根おろしが一番ウマイ」
「娘の水ぼうそうがやっと治りました」
「なんで深夜ってバンテリンのCMが多いの?」
という皆さまからのメッセージが心の支えとなり、なんとかコツコツとやってこれました。
一応、「小さなイノベーションをデザインするコンテンツの創造」をコンセプトにしたプロジェクトなので、
「デザイン」をモチーフにしたエンタメコンテンツを制作するのがTORABARD PROJECTの役割です。
デザインの根っこにあるのは、人を想う気持ちだと考えています。
そして、人を想うということは、想い出すということ。
なので、活動のスタンスとしては啓蒙活動ではなく、皆さんに元からある忘れていた大切な気持ちを思い出してもらうための想起活動です。
僕たちは、それを様々な表現手段を用いてコンテンツを制作して実行する「想い出させ屋さん」です。
このことを常に意識しながら活動し、小説や音楽にもその想いを詰め込んだつもりです。
小説が一区切りしたところで、一旦プロジェクトのガイドライン、制作スタイルの説明と合わせて、Season1のあとがきを添えさせていただきます。
▫️価値観共有のための三大原則とEHE(エヘ)エボリューション
プロジェクトを進行するにあたり、ガイドラインやルールを決めるということは、ろ過するザルの網目を細かくするようなもので、
本来であれば、必要のない不純物を取り除く作業であり、資源を有効活用し純度高く昇華するために必要とされると思っています。
TORABARDは読者さんからアイデア商品を募集し、それを基に小説と音楽を制作するといったスタイルなのですが、
投稿アイデアに三大原則である「E:エモーショナル H:ハイブリッド E:エキサイティングという要素を入れること」という選考基準を設けたのは、
必要のない要素を取り除くスクリーニング効果があるので選考の時短になるのと、原則やルールというのは一つの文化なので、その文化に合わせてくれたほうが、
発信するコンテンツ自体に一貫性が増し、制作もスムーズにいくとだろうということを考慮して設定しました。
そして、これは僕の活動名の由来やNITROロゴにも貫通することなのですが、言葉を発するだけで、その人の口角が上がるようにEHE(エヘ)エボリューションというネーミングにしました。
▫️読者参加型オープンイノベーション制作
TORABARDには、トラバーと言われる、活動理念に共感してくださった方や作品を気に入ってくださった方、ただ単に面白いことをやりたい方、日常に新たな刺激が欲しい方、趣味を探していた方、コンテンツ制作を通じて社会貢献したい方、ただ暇なだけのニートなど(笑)JKからご隠居さんまで国内外問わず、出身地や年齢層、職業も様々で多種多様なメンバーが集まり制作をサポートして下さっています。
オープンイノベーションとは、〝企業が製品開発の全ての行程をファンに開示し、協力してもらうことで、製品プロモーションにも強い味方を得ることができ、ニーズや課題そのものの発見から課題解決、さらには新たな価値創造までを企業とファンが恊働して取り組むことで、需要創造型マーケティングが実現できるスタイル〟のことです。
これは、産業組織の新たなモデルであり、参加者の大部分が専属スタッフ、社員ではなく、その道のプロでないことで、所属意識や義務からではなく能力と必要性に従って「隠れたエネルギー」や「知力の余剰」を発揮でき、各々が持つスキルや能力、できることをバーチャルでカジュアルに共有し合うことで、既成概念を超越した新たな価値が生まれること。
そしてファンの方を制作サポートメンバーにお招きすることで、作品制作をする過程で、あうんの呼吸が通用し、暗黙知での理解が可能となる、作者の意図や価値観共有の効率化を目的としています。
現段階ではトラバーの人たちにはソーシャルオピニオンとしてサポートいただいており、クリエイティブの範囲はNITROが1人で行っていますが、今後はクリエイトメンバーとして参加してもらい、みんなで一緒に面白いことをやっていこうと考えています。
現在は試運営で行っていますが、準備が整い次第TORABARDの共創コミュニティをオープンする予定です。
▫️デザイン = ゼロイチ
小説の全話に共通していえることですが、作中でニトロは自分の周りにある限られた資源の中で利害をマッチさせてイノベーションを起こします。
お金は一銭もかかっていません。
実際、これまでに制作した小説と音楽は全てスマホの無料アプリで創ったものです。
レコーディングのマイクなんてIPhoneについてきたイヤホンのマイクです(笑)
今の時代、その辺のJKでも持ってる資源だけで全て創りました。
その辺のJKが持ってないのは〝コンテンツに触れてくれた方に小さなイノベーションが起こってくれたら嬉しい〟という想いだけです。
ゼロイチを共有することに重きを置いていたので、どれもクオリティは少々難ありで荒削りですが、まぁこれも8ミリカメラで撮影した映画のようなエモーショナルな味があって、エモさがウリのTORABARDらしくていいかなぁというノリで創りました。
▫️メインとサブの2つのテーマ
TORABARDでは1話ごとにストーリーのメインテーマとサブテーマを設定しています。
第1話『小さなしあわせのうた』でいうと、「小さなしあわせ」がメインテーマであり、「新興」がサブテーマという感じです。
これは、音楽でいうメインボーカルとサブボーカル(ハモり)のようなもので、
お互いの歌声が重なり、作用し合うことで歌声が太くなるように、
テーマを2つにすることでストーリーの芯(骨子)がより一層太くなるのではないか?という意図がありました。
〜あとがき〜
〝小さなイノベーションをデザインする〟
TORABARDのストーリーの骨子は「小さなイノベーションをデザインする」です。
イノベーションの意味は〝古くからの習慣・制度・状態・考え方などを新しく変えようとすること〟です。
言葉だけでは少し大げさに聞こえるかもですが、僕のスタンスとしては、
〝これまでにない新たな行動をして自分も周りもハッピーになること〟だと思っています。
この新たな行動というのは、例えば今まで通ったことのない道を通って帰ってみたり、行ったことのないお店で食事をしてみたり、
話したことのないタイプの人と一緒に遊んでみたり、自分がこれまで避けてきたコトや目を背けてきたモノに興味を示してみると、案外そこにハッピーの種が転がってたりする。
小さなというのは、どんな些細なことでもいいので自分の周りからというニュアンスで、何か特別なことをしなくても、悩んでいる人の話を少し聞いてあげるだけでもいいし、
道に落ちているゴミを拾うだけでもいい。
歩きタバコをしているおっさんがいたら、「貴重なチビちゃんたちの顔にもしタバコが触れてもうたらどないするんじゃ!! ゴルアァァ!!」と注意するのもアリ(笑)
どれも立派なイノベーションです。
大切なのはイノベーションを起こすことではなく、身の周りの問題に心を傾けてそれを解決しようと想像すること、つまりデザインすることで、
そのマインドさえあれば、ハッピーの種を何度も咲かせることができると僕は信じています。
イノベーションとはデザインの果てにあるもので、創造することよりも想像することのほうが重要だということ。
想像することで、汲み取った〝人のキモチをつないでカタチにする〟ということ。
そしてそれがやがて大きなイノベーションへと繋がるというプロジェクトの理念をストーリーを通して発信したつもりです。
●第1話『小さなしあわせのうた』
季節:春
場所:渋谷
メインテーマ:「小さなしあわせ」
サブテーマ:「新興」
既に最終回を読んでくださった方はご存知だと思いますが、小説TORABARDは〝ニトロ〟という名前を使ったトリックが一番の見せ所で、実はこの第1話が本当の意味での最終回だったんです。
この第1話にTORABARDの本質や意図、プロジェクトの方針やスタンスを全て詰め込んでいます。
組織としての名刺代わりに読んでもらいたい話。
●第2話『やさしさのうた』
季節:梅雨
場所:名古屋
メインテーマ:「寛容」
サブテーマ:「共振性」
第2話では〝やさしさに気づく心〟というのを描きたくて、それを表現するには作り手とファンの関係性を取り入れたストーリーにしたほうがいいなと思って書きました。
ファンというのは作り手がどんな言葉や装飾で着飾ろうと、その表面だけでなく、根っこにあるやさしさ=愛に気づいていて、
その愛が見える眼鏡をかけている人たちだと思っています。
作り手とファンはその同じ眼鏡をかけている似た者同士だからこそ磁石のように引き寄せ合いお互いの人生に繋がっていく。
眼鏡少女が乗っていたブランコは共振性を表現したシーンなのですが、
〝眼鏡で一人ぼっち〟という共通項があった学と眼鏡少女は公園で出会ってから作り手とファンという関係性になり、お互いの寂しさを埋めていくようになる。
いじめが原因で医者の道を諦めた過去を持つ学は幼馴染で元親友だった医者のつねよしと再会する。
ニトロがきっかけでつねよしの〝見せないやさしさ〟を知った学は、長年抱えていた心の傷が癒え、風船を使って心を癒す医者として少女を救おうと決心する。
そして〝人を救いたい〟という同じ志を持った2人はお互いに高め合いながら問題解決に取り組む。
共振性とはお互いにリスペクトできてこそ発揮されるものであり、リスペクトの根っこはその相手が持つやさしさ(寛容さ)だという話です。
●第3話『勇気のうた』
季節:夏
場所:京都
メインテーマ:「勇気」
サブテーマ:「変化」
夏なのでナンパや合コン、デートと開放的に漫画っぽくコミカルに書いた話。
僕は小学校の6年間、器械体操を習っていたので、その経験を活かして体操ネタを入れました。(ちなみに子供の頃の夢は体操選手でした)
個人的にはナンパシーンがお気に入り。
●第4話『和のうた』
季節:秋
場所:奈良
メインテーマ:「和」
サブテーマ:「フラット」
これは華道の師範である母親から学んだことと、趣味の料理の経験を活かした話。
ストーリー上、接待する相手は久子の肩書きやバックボーンを上回る人物にする必要があったので、アメリカの投資家という設定にしました。
ちなみに僕は大和撫子みたいな女子ではなく、おっさんみたいな女子が好きです(笑)
●第5話『想い出のうた』
季節:冬
場所:石川
メインテーマ:「想い出」
サブテーマ:「バリエーション」
三大原則のExciting(ワクワクする)を特に意識して書きました。
〝作品に触れてくれた方が小さなイノベーションをデザインしてくれたら〟という発信目的があるので、
実は、当初の三大原則はEmotional(情緒的)Hybrid(多様性)Excitation(励起)にしようと思ってました。
励起(れいき):量子力学において,原子や分子などの粒子があるエネルギーをもった定常状態に,外部からエネルギーを与えて,より高いエネルギーをもつ定常状態に移すこと。
でも、さすがに三大原則で励起は馴染みにくいなぁと思ったのでワクワクするに変えました。
個人的にコメディとシリアス、知的情報をバランスよく書けて一番バラエティに富んでいると思う話。
●最終話『キモチのうた』
季節:真冬
場所:大阪
メインテーマ:「キモチ」
サブテーマ:「ツナガリ」
最終話というよりはエピソード0的な話です。
僕の親父とじいちゃんは共に建築デザイン事務所の経営者で設計士だったので、建築デザインと建設会社ネタを入れました。(※エピソードはフィクションです)
親父と喧嘩して家を飛び出したというのは実話です。
元番長で野球と空手をやっていたデカくてガタイのいい親父は、俳優のリーアム・ニーソンと指揮者のレナード・バーンスタインを足して割ったようなルックスで、
悪さをするといつもブン殴られてました。 女には超甘く、男にはハイパー厳しい暴君&独裁ぶりに嫌気がさして親子喧嘩になり、
「出て行け!! クソガキ!!」と一喝された16歳の高校生だった僕は実家を飛び出して1人で生きていく道を選んだのです。
しかし、このとき家を出たおかげで培われた基礎体力やマインド、様々なスキルを考えると… 結果、親父に感謝することになるのですが…。
僕が歌が大好きなのは、趣味で詩吟の師範をやっていたじいちゃんの影響が大きいです。
〝人のキモチをつなげてカタチにする〟ということを色濃く書いた話。
▫️主人公を問題提起型ミュージシャンにした理由
主人公ニトロ(西本太郎)の名前の由来は芸術家の岡本太郎さんです。
一般常識に捉われず、物事を理性ベースの損得勘定だけで判断しない、感性ベースのアーティスト型の人物像にしたかったので、実際に幼稚園中退という経歴を持つ岡本太郎さんの設定を入れました。
ワケあり(問題を抱える)マドンナに振り向いてもらうために、自分の身の周りにある資源を使って問題を解決し小さなイノベーションを起こすことがお約束のストーリー構成だったのですが、
作中でニトロが行っていたのは、潜在する問題を提起してその解決方法を提示することだけです。
そしてその顕在化された問題を解決するためにニトロ以外の人物が構想を具現化し小さなイノベーションを起こすという流れでした。
本来のイノベーションから見たデザインの立ち位置というのは問題解決方法を探求しそれを構想して提示することです。
続いて提示された解決方法をテクノロジーで具現化し、解決方法の継続的実行のためにそれをビジネスにするという流れです。
しかしデザインの前に潜在する課題を発見し問題提起を行う必要があります。
この問題提起の部分を、ミュージシャン(アーティスト)が行うことで、
従来の延長である問題解決型イノベーションではなく、これまで顕在化されていなかった問題提起型イノベーションが可能になる。
なぜなら、アーティストとは、他の人間にとっては全く意味を持たない大義でも、自分にとってはそれがすべてという大義であれば、命懸けでそれを追求する人種なので、
他の人間が見落とす部分に着眼を当て、フォーカスする特性があるからです。
その特性と合わせて、言葉とメロディをつかって問いを代弁する特性を備えたミュージシャンであれば、問題提起をよりエモーショナルに人の心に届けることができるという意図があり、主人公ニトロを問題提起型ミュージシャンにしました。
問題提起型アーティストとイノベーションはこれからの時代どんどん密接になりスタンダートになっていくと思うので、今後のTORABARDは問題提起に特化したコンテンツを発信していこうと考えています。
▫️TORABARD第1章から第2章へ
想い出させ屋さんとしてのプロライセンスを取得するため、その基礎体力と体幹を鍛え軸足を固めることをフェーズ1とし、TORABARD第1章では小説と音楽という手段で発信してきました。
第1章でマラソン的な筋肉が鍛えられたので、第2章ではこの時代によりマッチした、断片的な情報で人を惹きつけらるような短距離走的な鋭利な発想で面白いコンテンツを創れたらいいなと思ってます。
それにはテーマと作り手の思想との明確な収斂が必要で、まだまだ力不足なので日々精進していきたいです。
こんなノリでこれからもやっていきますので今後ともTORABARDを宜しくチェケラお願いします。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
written by TORABARD PROJECT Creative Director NITRO