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特別な試合。

4月28日。
前所属のイトゥアーノFC横浜との試合。
試合前から元チームメイト、スタッフ、代表やGM、応援してくださっていたサポーターの方。見覚えのある面々と話をしたりと和やかな表情を見せていたかと思う。その反面、中には不思議な気持ちでこの試合を迎えていた。

この週は頭からずっとソワソワしていた。
楽しみなような、不安なような。
言葉にするのが難しい、そんな時間を過ごしていた。
特に前日。すぐ寝れたかと思えば、夜中に目が覚め、そこから2時間くらいは目を閉じながらも頭の中では試合の光景ばかりが浮かぶ。

こんな感情になるのは初めてだったんじゃないか。

昨年度、2位まで勝ち点2差で関東昇格戦には進めなかった。その中でもリーグ戦16試合中15試合で先発起用してもらい、出場時間もチームで4番目。12得点を取り得点王を取らせていただいた恩のあるチームなわけで。神奈川で少しばかり名前を知られるようになったのはイトゥアーノがあったから。

そんなチームと、元仲間達と関東昇格戦の座をかけて本気で戦わないといけない。

鎌倉に来た時点でこの試合を迎えることは分かっていたことだけれど、やはり単純な気持ちでは迎えられないものだった。

鎌倉インターナショナルFCの原虎之介と
イトゥアーノFC横浜の原虎之介。

個人的には、どちらの原虎之介に価値があるのか。
それを証明するための試合であった。

公式戦として本気でマッチアップする元チームメイトは嫌な選手ばかりだった。仲間にいたら心強い。そんなメンバーばかりだったのだと思う。

結果は5-1で勝ち。
個人としても1G1Aと結果もついてきた。

点を取った時、勝利をした時、彼等の前で喜ぶことは出来なかった。チームメイトに囲まれ、祝福されながらも、どこか心の底から喜ぶことは出来なかった。

こんな想いにさせてくれたのは去年の自分、本気で関東を目指したイトゥアーノがあったから。そんなイトゥアーノに対して真っ向から勝とうとした鎌倉があったから。人生でまた1つ、新しい想いを感じることができた。そんな瞬間に幸福感、決断への安堵を感じた。

満足をしているわけではない。
けれど、イトゥアーノを退団する決断をしたこと。鎌倉に入団する決断をしたこと。どちらに対しても恩を示せたのではないかと思う。そういった意味での安堵だった。

試合が終われば鎌倉のサポーターから祝福され、子供からサインを求められ、激励の言葉をかけられ。サッカーをする意味はなんなのかを考えさせてくれる。
去年までは勝利給として報酬をいただいていたのが、まるで違う。

あのサポーターと全員で写真を撮る瞬間。
このために戦っていると言っても過言ではないのかもしれない。

そんな試合の中、印象的なシーンがあった。
得点を取った時、GKの修也が鎌倉のエンブレムを叩くジェスチャーをしてきた。お前は鎌倉の選手だ!そんなことを言われてるいるような、そんな気がした。
もうイトゥアーノの原虎之介ではない。そこに恩、感謝はあるけれど、ここからは鎌倉インテルの原虎之介として戦うんだ。
そんなことを改めて感じさせられた。

鎌倉インターナショナルFCに加入してからの4ヶ月。試合を振り返り、仲間からの言葉を受け、練習に熱く取り組み、サッカーを考える時間は格段に増えた。
要求をされ、改善をして、また課題が見えて、また改善に向かい。

元々の知り合いもいない中、
特徴も分からない中、始まったシーズンだったわけだが、この試合でようやく掴んだ気がする。

鎌倉インターナショナルFCの原虎之介として、自信を持って戦おう。
この仲間達、サポーター達と進んでいこう。

そして、どちらのチームのためにもイトゥアーノには負けてはいけない。
あいつは鎌倉に行って正解だった。
そう思わせないといけない。

まだまだ18分の4。
勝利に浸るには早い。

後期、イトゥアーノは潰しにくる。
受けたら負ける。あのチームの勢いは恐ろしい。
その試合までにまた勝ち点を積んでいこう。

そしてまた特別な試合をしよう。

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