母がいなくなった日

7月の末にたおれて、意識不明のまま5日後に亡くなった。10数年前のことだ。この季節になると、いろいろ思い出されて、涙っぽくなる。元気で突然亡くなったので、自死ではないかとの噂も流れたという。生き急いだ母は、亡くなるのにも躊躇しなかった。義父母の長患いに付き合い、看取った母は、「自分が寝たきりになったら、毒でももって死なせてほしい」と言い続けた。母らしいといえば母らしい引き際だった。一家の矛盾を一身に背負い、表面はうらやましがられる家庭を、世間に見せてきた母、いなくなってから、それまで何とか隠してきたことが、徐々に表に出てきて、びっくりもしたが、その対応をする必要に迫られた。父は田舎の長男らしく、威厳を保つことが優先で、よくないことはいつも人のせいにしてきた。跡取りも父の性格を引き継ぎ、問題を人に転嫁する術には長けていた。父は母のせいにし、跡取りは次男のせいにして自分を守ってきた。跡取りはいい子で次男はちょっとねと親族からも見られていた。みんなの期待にたがわず次男はアルコール依存と、多重債務の達人になった。次男を貶すだけで、具体的に何をするかは脳裏になかったようだ。私は次男の境遇も見てきた。いいところもたくさんある子だった。母がかばい続けてきて、自分で何とかるをみにつけないまま大人になった。私への母からの相続は次男だった。

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