貼り付ける

 
 A氏が今週、施設から帰宅するので、彼の部屋を掃除している。
この湿気で、なんと畳に青かびが発生していた。カーテン、座布団、あらゆる物を洗濯しようとしている。
 暖簾をはずそうとしたら、暖簾までテープで止めてある。彼の部屋は、ガムテープで、固定された物で一杯だ。
 この性癖は、たぶん性格や生育暦とつながりがある。地主の長男として生まれ、自分で人生を開拓していくのではなく、あるものを守る生き方が主流になってしまったのだろう。

 「男は40にもなったら、3千万円くらい貯金があって当たり前だ」
かっての彼のセリフだ。もちろん彼の場合自分で稼ぎ出したものではない。先祖伝来の土地がお金になっただけだ。
 自分の長男にも、自分がされたように大事に育て、私ともう1人の弟とは、差のある育て方をした。
が、A氏は分け隔てなく育てたと思い込もうとしてきた。

 まず弟が、破綻した。長男もうまく隠してはきたが、少なくとも精神的には破綻しつつある。A氏は自分が中心で安定して生活が、いつまでも続くのが「当たり前」だと思ってきた。私からみれば、「子供もそのためのツール」だった。

 今は故郷を追われ、私の元に身を寄せている。こうなったのは自分以外の者が悪いとの感じ方で、恨みや怒りで、その身を削っている。

#cakesコンテスト

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