弟へ

お前と顔を合わせなくなって、もうじき4か月になる。脳梗塞に脳出血、末期癌まで患った。それでもアパートで暮らしたいと言い張った。身体が不自由になり調理もままならなくなった。週に数回おかずを作って運んだこと、病院に通う間隔も日ごとに短くなっていった。

私は、時間の余裕ができてから「もっとやれることがあったのでは」と思うことはやめにした。罪悪間に囚われて、落ち込むだけだから。今は「あの時できることを精一杯やったよ。足りないこともあっただろうけど、でも精一杯やった」と言い聞かせている。

それはそうと、佐賀にも飲み物にトーストが無料でついてくる喫茶店があっったよ。お前が元気な時は、毎週火曜日に一週間の分の食料を買い込んでいたから、今だったら、きっとそこでコーヒーを楽しんだだろうね。

スーパーのレストラン街の前を通るたびに、「ここでお前とご飯を食べた」

と思い胸がつまる。いつも漬物は私に回し、焼き肉店では野菜を、私に押し付けた。大変なことも多かったけど、一緒に笑うこともあった。火葬場で荼毘にふされていると時、湧き上がってきた涙を抑えることができなかった。「ねえさ俺のために泣くな」とお前の声が聞こえた気がした。

「私くらいしか泣く人おらんやろ」と返したが、気にしないで、私は自分の為にも涙を流すのだから。


いいなと思ったら応援しよう!