「切り絵で世界旅」ガートの光景(ベナレス/インド)アジア的混沌を拡大させたパノラマ的風景に圧倒される
早朝、ベナレスの市街地からガートをめざして歩く。細い路地の両脇には、物乞いをする人々が並ぶ。中には手脚のない人も少なくない。物乞いの成功率を上げるために、あえて手脚を切断する人がいるとも聞いた。
ガートとは「沐浴場」を意味し、聖なるガンジス川へ向かって階段状に続いている。そのガートがガンジス川沿岸には80以上もある。そのうちの一つにやっとたどり着き、周辺を感慨深く見回す。
階段部分でふんどしだけ付けて準備体操をしている男性、大きな傘の下で瞑想をする修行僧、歯磨きをしている少年、ガンジス川に身を浸して熱心に沐浴する人、浅瀬で衣類を入れた白い大きな袋を斜めに立てた石板に打ち付けながら洗濯をしている女性たちの姿が目に飛び込む。アジア的混沌を拡大させたようなスペクタクルなパノラマ的風景に圧倒される。
「ナポリを見てから死ね」とゲーテが言ったらしいが、アジア人は「ベナレスを見てから死ね」と言いたいところだ。
ちなみに最後に紹介した洗濯方法はダイナミックで、見るものを感動させるが、かなりの肉体作業であり、かつシャツのボタンなどはことごとく壊れてしまうそうだ。いずれ改善されるに違いない。
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