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「切り絵で世界旅」万里の長城(北京/中国)緑の山々をうねうねと這う巨大な竜のようだ

 最も中国らしい建造物といえば、文句なく万里の長城だろう。広大な国土に張り巡らせた気の遠くなりそうな城壁。その長さは、東は渤海湾に臨む山海関から、西はシルクロードの桜蘭まで6000km以上にも及ぶ。それだけ匈奴など北方異民族の侵入を恐れていたことになる。だが、異民族だった蒙古族や女真族が権力を奪い、元や清の王朝を打ち立てると、万里の長城は使われなくなり、無用の長物と化したというから皮肉なものだ。

八達嶺長城の階段を慎重に歩く

 最初に北京を訪れた時は、仕事でしかも極寒の冬だったので長城に行く時間も勇気もなく諦めたが、今回は大丈夫だ。北京から登ることのできる長城跡は5カ所ほどあるが、その中で一番人気のある八達嶺長城へ。

 明代に建築された八達嶺長城は、標高1000mの八達嶺にある長城だ。年配客も多く、行きはロープウエイで一気に中腹へ。そこからの眺めは、緑の山々をうねうねと這う巨大な竜のようでもある。

 足を踏み外さないように慎重に歩いていると、スーツ姿でカバンをもち、疲れた様子でフラフラ歩いている日本人らしき中年男性とすれ違った。それは富士山や八ヶ岳の登山道でサラリーマン姿の男性とすれ違うほど違和感を抱かせた。出張のついでに長城まで足を伸ばしたのだろうか。ロープウエイを利用すれば革靴でもスーツ姿でも長城に登るのは可能である。だが北京から75kmも離れた所までやってくる情熱はやはり不可解であり、その理由を聞いてみたいものだ。

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