「切り絵で世界旅」サンパウ病院(バルセロナ/スペイン)芸術には人を癒す力がある
スペインの建築家といえばガウディの名前が浮かぶが、バルセロナで活躍したルイス・ドメネクの存在と作品を知ったときの嬉しさは今も忘れられない。
ガウディが自然から創作のインスピレーションを得ていたのに対して、ドメネクはモデルニスモ(スペイン風のアール・ヌーボー様式)などを駆使して華麗な作品をつくった。その代表作がサンパウ病院とカタルーニャ音楽堂であり、ともに世界遺産に登録されている。
そのサンパウ病院を初めて訪れたとき、「ここが本当に病院だろうか? 美術館か博物館にしか見えないのだが」と思ったものだ。
広大な敷地に48棟の建物が並んでいる。病棟はムデハル様式(イスラム建築とキリスト教建築が融合したスペイン独自の建築様式)が取り入れられ、建物の壁にタイルやレンガなどで幾何学模様の装飾が施され、内部はモデルニスモ様式でカラフルなタイルやモザイク画などで飾られている。目を奪われる豪華さだ。
病院といえば機能重視で殺風景なイメージを抱くだろうが、ここは正反対である。なぜこれほどまでに意匠デザインに凝るのだろか? その答えは、ドメネクが「芸術には人を癒す力がある」と考えていたからだ。
ちなみにドメネクはマドリッドの建築学校を卒業後、すぐにバルセロナの建築学校の教授になったほど優秀で、ガウディは彼の教え子でもあった。すごい師弟関係があったものだ。
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