改装された駅、線路上の太陽

昨日まで狭かった、乗り換え駅の階段が真新しくひらけた。
改装工事が終わって、カバーが外されてた。
地下鉄の暗さと似つかわしい、新品のあたたかい明かりの下、足元のタイルは目視で数え切れそうなほどの幾つかの汚れだけが浮いていた。

大した思い出もなければ、はっきり思い出せないくらいの改装前の階段が恋しくなる。

新しいは、基本的にはわくわくする。
それなのに街の開発はいつもさびしさを漂わせる。自分のものでもなかった。知ってる。
それなのに失ったことを感じさせる。

当駅発列車の車両には誰もいない。
冷たい11月の真昼の太陽が、さっき通って、また通るホーム奥の線路上からきらきらひかる。

がらがらの長椅子にひとりすわる。
誰にも邪魔されない。
誰の目線にも入っていない。
その安心感に心が開いて、空気を吸う。
太陽のひかりを感じる余裕を持てる。

電車のアナウンスとともに忙しなく流れ込む多数の人。
こんなにいるのに、誰とも話さない。
行く先を知らない。
誰も知らない。

扉が閉まれば列車は線路を真っ直ぐなぞり始める。


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