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「やりたい仕事は何ですか?」面接での質問に隠された真意とは? 〜公務員の配属・異動希望が99%叶わない理由〜

「やりたい仕事は何ですか?」——この面接の定番質問に、あなたはどう答えますか?

「子育て支援の仕事がしたいです」「福祉課に配属されたいです」など、志望動機に沿った回答を考える人が多いでしょう。ですが、実際の公務員生活では、希望した部署に配属される可能性は限りなく低いのが現実です。

特に、異動の際に「やりたい仕事ができるかどうか」といえば、その確率は“わずか1%未満”とも言われます。では、なぜ公務員の異動希望はこれほどまでに通らないのでしょうか?

この記事では、「やりたい仕事」と「異動希望」のリアルな関係性について解説し、その理由を「行政組織の構造」「要配慮事項」「職員数の多さ」の3つの視点から徹底的に深掘りしていきます。

「公務員を志望する方」「すでに公務員として働いている方」にとって、これを知ることで異動に対する不満が減り、ポジティブなキャリア観を持つきっかけになるかもしれません。最後には、異動希望が叶う可能性を高めるための具体的な考え方もご紹介します。

「やりたい仕事ができないから転職したい」と悩む人も、異動の真実を知れば新たな選択肢が見えてくるはずです。

さあ、面接の“あの質問”の意図を知り、公務員の異動希望が叶わない理由に納得を見出しましょう。

1. 行政組織の構造 〜異動希望が通らない理由の1つ目〜


志望先の組織図を見てみよう

公務員の異動希望が通らない理由の1つ目は、「行政組織の構造が複雑すぎる」 ことにあります。企業の部署異動と異なり、行政組織は「首長」「部(または局)」「課」「係」といった多層的な構造を持っています。それぞれの役割が異なり、配属先が非常に多いことが異動希望を通りにくくしているのです。


■行政組織の基本構造

公務員の組織はピラミッド型の階層構造を取っています。それぞれの層について詳しく見ていきましょう。

◉ 1. 首長

行政のトップに立つのが 首長(しゅちょう) です。市町村であれば 市長や町長、都道府県では 知事 が該当します。会社で言えば「社長」に相当し、最終的な意思決定者 です。首長の方針によって、行政の方向性や組織改編が行われるため、職員の異動も間接的にその影響を受けます。


◉ 2. 部(または局)

部(もしくは局) は、いわば「課の集合体」です。企業の「事業部」に近いイメージを持つとわかりやすいでしょう。

  • 部の構成
    例えば「福祉部」があったとすると、福祉課、障害福祉課、子ども福祉課 など、福祉に関連する複数の課がその下に配置されます。
    部は 2〜10の課をまとめて管理する 構造になっており、組織の規模によって部の数は異なります。

  • 部の数

    • 市町村では 5〜10の部 が存在することが多い。

    • 都道府県では 20部を超える こともあり、規模が大きい分だけ複雑になります。


◉ 3. 課


参考:広島県の行政機構図

は、行政組織において 特定の分野を担当する部門 です。企業における「部署」のような位置づけで、業務の中核を担います。

  • 課の構成
    福祉部の例で言えば、福祉課、障害福祉課、子ども福祉課 といった具合に、業務内容ごとに課が設置されます。
    その中でも、例えば「福祉課」であれば、生活保護や障害者支援など、さらに細かい分野に分かれています。

  • 課の数

    • 市町村では 50〜100課 存在することも珍しくありません。

    • 都道府県になると、さらに多くの課が存在します。


◉ 4. 係

は、課の下に設けられる最小単位の業務グループ です。企業の「チーム」や「プロジェクト」に近いイメージです。

  • 係の構成
    例えば、「福祉課」が「社会福祉係」や「生活保護係」などに分かれるように、特定の事業や施策を集中的に担当するグループ です。

  • 係の数
    1つの課の中に 2つ以上の係 が存在するのが一般的です。多い場合は5つ以上の係があることもあります。


■配属先の数のイメージ

異動が通りにくい理由の一つは、配属先が多すぎる ことにあります。部や局は1つのポストに1人しかつけないことが多いため、配属先の数を決める際には「課」と「係」の数が重要なポイント となります。

  • 配属先の計算式
    配属先 = 課の数 × 係の数

  • 人口10〜20万人の市役所を想定した場合

    • 課の数:50課

    • 1課あたりの係の数:2係(福祉課の中に「社会福祉係」と「生活保護係」があるようなイメージ)

つまり、配属先が100か所 あることになります。1つの組織に100か所も配属先があるため、希望の部署が通る確率は非常に低い のです。


■希望の通る確率はわずか3%?


甘めに見ても可能性は3%

では、配属先が100か所ある中で、職員が 「希望する部署は3つ」 しかなかった場合の確率を計算してみましょう。

  • 希望する配属先の数:3か所

  • 全体の配属先の数:100か所

この場合、希望の部署に配属される確率は次のように計算されます。
3 / 100 = 3%

つまり、希望が通る確率はたったの3% ということです。これは、100枚のくじ引きの中から3本の当たりくじを引くのと同じ です。


■異動希望が通りにくい理由のまとめ

行政組織は、「首長」から「部」「課」「係」へと複雑なピラミッド構造をとっています。特に「課」や「係」の数が多いため、配属先の数が膨大 になります。

  • 配属先の数は100か所(人口10〜20万人規模の自治体の場合)

  • 希望する部署は3か所 だとすると、希望が通る確率は3% に過ぎません。

このように、配属先の数が多すぎる ために、職員の希望が叶いにくいのです。異動希望が叶いにくい理由は他にもありますが、構造的な問題 が大きく影響しているのが現実です。

次の章では、管理職の異動や個別的な配慮が優先される理由 を見ていきましょう。これも、異動希望が通らない理由の一つです。

2.要配慮事項 〜異動希望が通らない理由の2つ目〜


個別具体的な事情も考慮しなければならない

管理職の異動に加えて、 職員ごとの個別的な事情 も異動の際に考慮されます。これも、個人の異動希望が通りにくい理由の一つです。

個別の事情は多岐にわたりますが、特に代表的なものを3つご紹介します。


◉ 1. 親族関係の配慮

公務員の世界では、「親族(家族)が同じ部署にいるのは望ましくない」 という考え方が根付いています。これには、組織の公平性や透明性を守るための理由があります。

  • 配属のルール
    原則として、職員の三親等以内の親族(配偶者、親、兄弟姉妹、子、祖父母、孫など)は、 同じ課や係には配属されない ことが多いです。これにより、家族関係が業務に影響を与えないよう配慮がなされます。

  • 実際の配属への影響
    例えば、Aさんが福祉課に配属されており、Aさんの配偶者が同じ市役所に在籍している場合、その配偶者が福祉課に異動することはほぼありません。結果的に、配偶者は福祉課以外の部署へ回されるため、希望が叶わないケースが生じるのです。


◉ 2. 休職歴や賞罰履歴の考慮

過去に 休職経験がある職員賞罰の記録がある職員 も、配属先を決定する際に特別な配慮がなされます。

  • 休職経験のある職員
    例えば、過去に 住民対応のストレスが原因で休職した職員 がいる場合、同じような住民対応が必要な部署には配属しないよう配慮がなされます。

  • 賞罰のある職員
    一方で、何らかの不祥事を起こした職員については、信頼が回復するまで重要な業務を任されることは難しいです。賞罰歴がある場合、組織は リスク管理の一環として「重要な仕事を任せない」 という判断をするため、異動先が制限されることになります。


◉ 3. 不文律のルール

公務員の世界には、 不文律(明文化されていないルール) も存在します。

  • 不文律の例
    例えば、最初の配属先が「A課」だった場合、次の配属先は「B課」といった 慣例的な異動ルート が存在することがあります。このルールは、過去の事例に基づくもので、明文化はされていません。

  • 個別の込み入った事情
    職員の家庭事情や健康状態など、個別の事情 も考慮されるケースがあります。例えば、介護が必要な家族がいる場合、異動先が近場の庁舎になるよう配慮されることがあります。


■まとめ:要配慮事項が異動希望を阻む要因に


周知または暗黙のルールも存在する

ここまで解説してきたように、異動希望が通りにくい理由の2つ目は、「管理職の異動が最優先される」 ことと、「個別の事情が考慮される」 からです。

  1. 管理職の異動が最優先(年間50人の異動先を決定)

  2. 親族関係の配慮(家族は同じ部署に配属されない)

  3. 休職歴や賞罰履歴の考慮(リスク管理の一環)

  4. 不文律の異動ルール(慣例的なルートが存在)

これらの要素が絡み合い、 個人の異動希望が結果的に後回しにされる というのが現実です。次の章では、異動がさらに通りにくくなる「職員数の多さ」に着目して解説していきます。

3. 職員数が多すぎる 〜異動希望が通らない理由の3つ目〜


そもそも職員数は数百人単位の大所帯

異動希望が通らない理由の3つ目は、「職員数が多すぎる」 ことです。これまで解説してきたように、行政組織には数多くの部・課・係が存在し、それに比例して職員の数も膨大になります。職員の数が多ければ多いほど、異動を検討しなければならない対象者の母数が増える ため、個々の希望を考慮することが難しくなります。


■市町村と都道府県における職員数の実態

◉ 市町村の職員数

市町村の職員数は人口に比例して増加する傾向があります。市民にサービスを提供するため、人口が多い自治体では多くの職員が必要になります。以下に人口規模ごとの職員数の目安を示します。

  • 人口 5万人前後の市町村
    職員数:約500人前後

  • 人口 10万人程度の市町村
    職員数:約1000人前後

たとえば、人口5万人の市町村では約500人の職員が在籍し、10万人規模の市役所では約1000人の職員が在籍します。これはあくまで目安であり、観光業が盛んな地域や災害対応のための人員が必要な地域では、これよりも多い人数が配置されることがあります。


◉ 都道府県の職員数

市町村よりもさらに規模の大きい都道府県の職員数は桁違いです。都道府県は広いエリアを管理するため、より多くの職員が必要になります。代表的な都道府県の職員数は次の通りです。

  • 愛知県(人口755万人)
    職員数:約9500人

  • 東京都(人口約1400万人)
    職員数:約33,000人

愛知県の職員数は約9500人、東京都の職員数は約33,000人にも達します。3万人を超える職員が在籍している東京都は、もはや一つの町の人口規模に匹敵します。


■異動希望を考慮することの難しさ

職員数が多いということは、異動の対象者の数が膨大になるということです。これが、異動希望が通らない理由の一つです。

◉ 1. 何千人もの異動希望を考慮するのは物理的に不可能

例えば、1000人の職員が在籍する市役所を考えてみましょう。この中で50人が異動希望を出したとします。もしもこれらの希望を全て考慮しようとした場合、50人の希望を考慮しながら全体の配置バランスを調整する必要があるため、単純な計算では終わりません。

  • 1人の希望を考慮して配置を変更すると、その影響で別の職員の配置も変更が必要になる。

  • さらにその変更が、別の部署の人員にも影響を及ぼす。

このような連鎖が発生するため、まるでジグソーパズルのように全体のバランスを整える必要があるのです。人事担当者は、全体の配置のバランスを考えながら調整するため、職員一人ひとりの希望を考慮する余裕がほとんどありません。


◉ 2. 職員の異動希望を全て考慮すると「無限ループ」に陥る

仮に、すべての職員の異動希望を考慮しようとした場合、無限ループが発生します。Aさんの希望を叶えると、Bさんの配置がずれ、さらにCさんの配置も変わってしまうからです。

具体的なイメージを説明します。

  • Aさん:福祉課から財政課への異動を希望。

  • Bさん:財政課から総務課への異動を希望。

  • Cさん:総務課から福祉課への異動を希望。

このような配置を行うと、A→B→C→A という具合に、配置替えの連鎖が止まらなくなります。このような「無限ループ」を防ぐため、人事担当者は一部の希望を無視する必要が出てきます。全員の希望を叶えるのは事実上不可能なのです。


◉ 3. 「全員公平に考慮しない」という判断が妥当な場合も

職員数が多い場合、公平性を保つためには「希望を考慮しない」という判断が正当化されるケースもあります。

すべての職員の希望を叶えようとすると、前述の「無限ループ」に陥るため、人事担当者はあえて「希望は考慮しない」というスタンスを取ることもあります。この方が、異動の決定プロセスが簡略化され、全体の公平性が保たれやすいからです。

もちろん、「希望を全く考慮しない」と言うと職員のモチベーションが低下してしまうため、希望をヒアリングするケースもありますが、最終的な異動は「公平性」や「全体のバランス」を重視した判断が行われることが多いのが現実です。


■異動希望が通りにくい理由のまとめ

職員数が多すぎることが異動希望が通らない理由の1つです。

  • 市町村の職員数は、人口5万人の市町村で約500人、10万人規模の市町村で約1000人前後。

  • 都道府県では、愛知県が9500人、東京都では33,000人の職員が在籍しており、これらの職員の異動希望を全て考慮するのは事実上不可能です。

異動対象者の数が多いと、パズルのように全体のバランスを考えなければならないため、希望の通る可能性は極めて低くなります。加えて、すべての希望を考慮しようとすると、無限ループに陥るため、人事担当者は「全員の希望を公平に考慮しない」という判断を下す場合もあります。

4. 異動希望が99%叶わない理由 〜希望と現実の折り合いをつけるために〜


目的(目標)に立ち返ろう

ここまで解説してきたように、公務員組織において個々の異動希望をすべて叶えるのは極めて難しいことです。部署数や職員数の多さ、さらに組織運営上の要配慮事項がある中で、すべての希望を考慮するのは非現実的と言えます。しかし、それでも「希望を持つな」と言いたいわけではありません。むしろ、希望は目標であり、前進する原動力でもあるため、積極的に持つべきです。

希望が叶う可能性は低いかもしれませんが、100%不可能ではありません。この現実を理解しつつ、前向きに取り組むためにはどのような姿勢やメンタリティが求められるのでしょうか?


■職員に求められるメンタリティ

◉ 希望をヒアリングしてもらえるだけでも感謝

異動希望が叶わない可能性が高い状況でも、希望をヒアリングしてもらえる機会があること自体を前向きに捉えるべきです。たとえヒアリングが形式的なものであっても、個人にとっては希望を表明する貴重な機会です。この際、単に希望を述べるだけでなく、自分のスキルや経験が希望する部署でどのように活かせるかを具体的に説明することが重要です。

さらに、上司との面談や日常業務の中でコツコツと地道に信頼を積み重ねることも大切です。実際に、こうした地道な取り組みが実を結び、希望が叶ったという事例もあります。


◉ 異動を成長の機会と捉える

異動先が希望と異なった場合でも、それを成長のチャンスとして捉える視点が大切です。どのような部署にも新しい経験が待っています。それは、自分の不得意分野に挑戦する機会かもしれませんし、まだ気づいていない得意分野を見つけるきっかけかもしれません。

異動は、自己理解を深め、強みを明確にする良い機会です。目の前の環境を最大限に活かし、成長の糧とすることで、将来的にさらに良い異動先や希望部署への道が開ける可能性も高まります。


◉ 公務員として働く前提を理解する

そもそも公務員として働く際には、多様な部署での業務に携わる可能性があることを承知しているはずです。配属された部署に対して文句を言うのは本来筋違いであり、与えられた環境でどう最大限の成果を出すかが問われます。公務員の職務には柔軟性が求められることを再認識する必要があります。


■希望が叶う可能性はゼロではない


どう行動するかは自分次第

◉ 適性を考慮される場合もある

希望通りの部署に配属されない場合でも、適性や能力が考慮されていることが多いです。たとえば、「総務課」を希望していた職員が、実際には「福祉部門」に配属された事例もあります。しかし、「困っている人の力になりたい」という志を持つその職員にとっては、福祉部門の業務はやりがいがあり、希望に近いものだったと言えます。このように、必ずしも表面的な希望が叶わなくても、自身の適性に沿った配属がなされることもあるのです。

◉ 実力が認められれば希望が叶う

日常業務で成果を上げることが、希望を実現する近道です。優れた職員は周囲の管理職や人事担当者にその実績が伝わります。場合によっては、上司が人事担当者に推薦してくれるケースもあります。このように、日々の業務に全力を注ぐことが、希望を叶える可能性を高める重要な鍵となります。


■働く目的を明確にしよう

仕事の目的を見失わないことも重要です。仕事そのものは手段であり、最終的な目的は「地域住民の生活を支え、より良い社会を築くこと」です。どの部署に配属されても、その目的に貢献しているという事実を忘れてはいけません。

たとえば、弁当屋が弁当を作るのは「弁当を作ること」が目的ではありません。その人の健康や生活を支えるための手段として弁当を提供しているのです。同じように、公務員の仕事も「特定の部署で働くこと」が目的ではなく、行政サービスを通じて地域や住民の役に立つことが本来の目的です。

どの部署で働いても、この目的を果たしていることに変わりはありません。こうした視点を持つことで、希望が叶わなくても前向きに仕事に取り組むことができます。


■まとめ:異動希望に対する現実的な姿勢


仕事は手段であり、その先に目的がある

異動希望が叶う可能性は非常に低いかもしれませんが、ゼロではありません。希望を持ち続けることは、自分の目標を持つ上で大切なことです。しかし、その希望が叶わなくても、自分の成長や仕事の本来の目的を見据え、与えられた環境で最大限の成果を出す姿勢が求められます。

異動希望が通らない現実に直面しても、自分の仕事が組織全体の目的に貢献していることを忘れずに、日々の業務に全力で取り組みましょう。それが最終的に、希望の叶う道を切り開く鍵となるのです。

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