有理数体の上での実数ベクトル空間
しばらく前からベクトル空間を勉強してるんですが、今のところはほとんど有限次元の例ばっかりやっています。(無限次元ベクトル空間としてみたのは有限多項式ぐらいですかね)
そこで、有理数体Q上での実数ベクトル空間Rは基底が無限個あるんじゃない?と思ったわけですよ。なんなら、体が可算だから、基底も可算個だと足りなさそう?って思うじゃないですか。
ということで、R; Q-ベクトル空間の基底の集合の濃度がRの濃度と等しいことを示していきます。
(集合Aにたいして、Aの濃度をcardAとかきます)
RのQ-基底(以降は単に基底と呼びます。)の存在はzornの補題で保証されてますね。Rの基底を自由にとって、その集合をEとします。
また、Eが整列集合となるように、Eに順序を入れておきます。
示したいのはcardR = cardE です。
$${\boxed{1}}$$ Eは無限集合
RからMap(E, Q) (EからQへの写像全体の集合)への写像Fとして、
$$
f_0(e) \coloneqq 0\\
r \in R-\{0\} , e_1, e_2, \cdots e_n \in E , c_1 ,c_2 \cdots c_n \in Q-\{0\}, r= c_1e_1+\cdots+c_ne_n ,
e \in E\\ f_r(e) \coloneqq \begin{cases} c_i &\text{if } e = e_i(i = 1, 2, \cdots , n)\\ 0 &\text{else} \end{cases}
\\
F(r) \coloneqq f_r\\
$$
とすると、基底表示の一意性よりこれは写像となって、明らかに単射である。よって、$${cardR ≦cardQ^{cardE}}$$
Eが有限集合だと仮定すると、$${cardQ^{cardE} = cardQ}$$であり、
$${cardR ≦ cardQ}$$となる。これは矛盾。よってEは無限集合。
$${\boxed{2}}$$ cardR ≦cardE
$$
r \in R-\{0\} , e_1, e_2, \cdots e_n \in E , c_1 ,c_2 \cdots c_n \in Q-\{0\}, r= c_1e_1+\cdots+c_ne_n ,\\
N_r : \{1, 2, \cdots , n\} \rightarrow E \\
\\
N(1) \coloneqq min\{e_1, e_2, \cdots , e_n\}\\
N(2) \coloneqq min(\{e_1, \cdots, e_n\}-N(1))\\
・\\
・\\
・\\
N(n) \coloneqq min(\{e_1, \cdots, e_n\}-\{N(1) , \N(2) , \cdots N(n-1)\})
$$
ここで、Rから$${\displaystyle{\bigcup_{m \in N}} Map(\{1, \cdots, m\}, E) \times Map(\{1, 2,\cdots , m\}, Q) }$$への写像Gを、
$$
r \in R-\{0\},
G(r) \coloneqq (N_r, f_r \circ N_r)\\
G(0) \coloneqq (N_0, M_0) (N_0:\{1\} \to E, N_0(1) \coloneqq minE, M_0:\{1\} \to Q, M_0(1) = 0)
$$
とおく。これは単射となる. また、任意のm$${\in}$$ N にたいして、$${Map(\{1, \cdots, m\}, E) \times Map(\{1, 2,\cdots , m\}, Q) }$$の濃度は、
$$
cardE^m \times cardQ^m = cardE \times cardQ = cardE
$$
である。
$$
\therefore cardR ≦cardN \times cardE = cardE
$$
EはRの部分集合だから当然cardE ≦cardR.
よってcardR = cardE が得られた。
これでQ上の実数ベクトル空間は連続濃度基底を持つことがわかりましたね。
といいつつも、最近よく見落としなどがあるので、もし間違えてるところがあったらコメントで教えてくれると嬉しいです。
逆に間違えてるところないよ!というコメントも安心できるのでしてくれるとありがたいです。
一般に、体K上のベクトル空間Vに対して、cardK<cardVなとき、Vの基底はVとおなじ濃度を持ちます。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。