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サブスクよりCDを買え!ジャケ買いをしろ!三十半ばにして老害に片足つっこんでも声を大にして言う

 私は今年36歳になったのだが、割と新しい文化についていけなくなってきている感じがする。新しいものを受け容れられないのは、経験が増せば増すほど過去の似たようなものと比べてしまうから致し方ない部分もあるとは思う。しかし、いつまでも若者気分でいたい気持ちもある。
 そんなジレンマを抱えている私が、特に受け容れたくないでいるのが音楽のサブスクリプション(定額制)サービスだ。

音楽のサブサービスはありがたみがない?

 月額1,000円程度を払えば色々な音楽を聴き放題。CDアルバムが2,000円~3,000円ということを考えれば破格のサービスだ。YouTubeにいたってはアーティストがMVを無料で公開している。
 しかし、これに対し思うことがある。そこにディグる楽しみ、ありがたみはあろうのだろうか、と。

ジャケ買いしたことある?

 今の若い人は"ジャケ買い"という言葉を知っているだろうか。「お店でCDを物色し、ジャケットを見てピンと来たものを買う」という行為だ。
 試聴もせずに買うジャケ買いはは博打行為なのだが、ジャケットというのはそのアーティストの趣向を表しているので、割と当たりを引けたりする。予想通がはずれても新しいジャンルを開拓できたりするし、大金を払って買ったからと意地で何度も聴いているうちに良さに気付くこともある。こうやって知らないアーティスト、あまり知名度の高くないアーティストを発掘するのは一つの楽しみだった。
 そうやって良いアーティストを発見した人は、ある種のヒーローになれた。友達との間ではセンスが良いという太鼓判を押されるし、そのCDやダビングしたカセットやMDを貸せばみんな喜ぶ。学校やクラスの中のインフルエンサー的な立場だ。

 対して、SNSで誰かがオススメしているアーティストには、そうやって見つけたアーティストと同じような価値は感じられない。また、それを教えてくれる友達に対してセンスが良いとも思えない。
 この違いは何なのだろうか。一つはCDアルバムに3,000円という大金を払っているかどうかという単純なことだろう。そしてもう一つは、かけている情熱だと思う。サブスクサービスには数多の音楽があるが、それは即ち時間さえかければいくらでも聴けてしまうということになる。言ってみれば、ひたすら流していてたまたま良いと感じたもの、イントロやサビだけを聴いて良いと感じたものをオススメすることだってできてしまう。
 それに対し、CDは買う前に吟味が入る。どんなアーティストなのかという事前知識、他のCDや趣味との兼ね合いの予算、ジャケットの見た目など、様々な条件を踏まえて選択する必要がある。私はそうやって誰かの想いが載ったものに価値を感じてしまうのだ。
 「インフルエンサーの〇〇さんがオススメしていた曲聴いてみたら、これめっちゃエモい」と言われるより「今月の小遣いで厳選した1枚がこれ!」と言われた方がグッと来る。誰かが作ったプレイリストよりも、友達の作った"俺的BEST盤"を聴きたい。

「苦労に価値を感じる」という老害ポイント

 「私が若いころには……」と枕詞を付けて、不便だった時代の苦労話をする人がいるが、私の言っていることもそれと同じだろう。手間もお金も掛けずにたくさんの音楽に触れられることは素晴らしいし、それにより耳が肥えた人が新しい音楽を生み出していると思う。特に昨今のボカロを幼少時から聴いてきた世代が作る音楽は複雑で奥深いものばかりと感じる。誰も損をしていないし、むしろ全体では面白い方向に向かっているだろう。
 そうと分かっていながらも、やはりジャケ買いのような不便を楽しみ、そこから生まれるドラマや交流に期待を寄せてしまう。嗚呼、老害哉。

オススメのジャケ買いの仕方

 最近、昭和レトロだか平成レトロだかでLPレコードやカセットテープが見直されている。レコードはアナログ録音だから音質が良いらしいし、カセットは独特な音質やデザインが人気のようだ。同じようにCDのジャケ買いの良さも見直されてほしいので、私の最近のジャケ買いの仕方を書いておく。

 それは、ブックオフで安い中古のCDを一度に3~5枚程度買うという方法だ。もちろん別のお店でも良いが、どこにでもあって立ち寄りやすいし、他の用事もついでにこなせるので一石二鳥。
 名前だけ知っているアーティスト、アルバム名やアーティスト名を見て気になったもの、ジャケットのアートが気に入ったものを組み合わせて買って帰って、ゲームや作業をしながら流しておく。必ず最後まで聴く。それで全部聴き終わったら私は妻と寸評を言い合う。気に入ったものがあれば、また同じアーティストのCDを買う。予算も1,000円~1,500円ほどで済むので、週1くらいでやる分には財布にも優しい。

 当たりを引いたときの嬉しさも良いが、ハズレを引いたときのがっかり感さえも小さな思い出になる。誰かのレビューばかり気にして失敗を引かない人生よりも色味が増して面白いではないだろうか。さあ、CDを買いに行こう。


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