ゴミの城〜011~後ろの正面だぁーれ
ゴミを片付けに実家へ行くと、すぐに兄に留守番を頼まれ、玄関の鍵を掛け、更にチェーンも掛けて庭を掃除していた。たまに手を止めて家の中に入り玄関を確認していたのだが、何度目かに家に入ると玄関の方で声がした。
玄関にいたのは家の前に住んでいらっしゃる、おじさんとおばさんでその横に母親が不安そうに立っていた。二人は一人で外に出てきた母を心配して家へ連れ戻してくれたのだ。その方々はうちの事情も知っているし、家の木を切ってもらったりと何かと良くしてもらっていたのでとても助かった。
甘かった。
さすがにチェーンを外してまでは出ていかないだろうと思っていた。
兄が居ない。不安……。それだけなのだろう。もちろん兄は一階に僕が居ることを母に伝えてから買い物へ行っている。母を連れ戻してくれた二人にお礼を言って、母を二階の自分の部屋へと連れて行き
「勝手に出て行ったら。お兄ちゃんが帰ってきたら困るでしょ。それに買い物に行っても、いつも必ず帰ってくるでしょう?」と伝えるが、その説明は届かない。母の口から出たのは、
「アメリカに帰れって言われた」
と訳のわからないことを泣きそうな声で繰り返す。
家の外は外で、亡き父が遺した情けなくなるようなゴミばかり……。カチコチに固まったセメント袋、ボウフラが泳ぐ水槽の数々、白いゴミの袋をはいだら中から鳥籠が出てきた。それも金持ちのお屋敷にあるような、大きな大きな鳥の籠。あれってオウムとかが入っているやつじゃないのかな。
父は鳥なんか飼ったことないのに……。
先日買った手押し車を母に渡して使ってもらったのだが、母はただ車を押すだけなので一人では使えなかった。押していて「曲がらないように」とか「前から人が来るから避けないと」などを考えて押さないので、車は曲がっていき片輪が縁石に当たり転びそうになる。
雨の日が続くが、益々実家へ行く足取りが重くなる。
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