恩愛〜005〜ショートストーリー
男は帰宅するとコートのポケットから小さな箱を取り出し、リビングのテーブルの上に置いて、そのまま妻が待つ寝室へと向かった。
「おかえりなさい」
ベッドの中から妻が声をかける。若くて綺麗な顔立ちだが、いくぶん青白い顔をしている女だった。
「どうだい調子は?」
優しい口調で男が答える。男は妻の顔を覗き込みながら、ゆっくりとコートを脱いで壁のハンガーにコートをかけた。
「うん、あいかわらず」
笑顔を見せる妻に男が微笑む。
「無理するなよ」
男はそのままベッドの隅に腰掛けた。