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【キリスト教】② なぜクリスチャンが多いのか
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韓国におけるキリスト教の成長を象徴する存在として挙げられるのが、汝矣島純福音教会です。この教会は韓国のキリスト教の拡大を示す重要な事例であり、その成長の背景を分析することが、韓国でのキリスト教の普及理由を理解する鍵となります。
メガチャーチの発展:汝矣島純福音教会
解放後から1980年代にかけて、韓国では「メガチャーチ(大型教会)」と呼ばれる大規模な教会が次々と誕生しました。これは、一つの教会で1万人以上の信徒を抱える教会のことで、韓国は世界でもメガチャーチが多い国として知られています。
その中でも汝矣島純福音教会は、韓国キリスト教の象徴的な存在です。2021年時点で57万人もの信徒を抱え、一度に2万5000人を収容できる世界最大級の礼拝堂を備えています。日曜日の礼拝は複数回に分けて行われますが、それでも収容しきれない信徒のため、周辺施設で礼拝の生中継が行われます。まるで人気アーティストのコンサートのような熱気に包まれるこの教会は、1980年代の韓国の高度成長期に信徒数世界一としてギネスブックにも掲載されました。この事例は、韓国社会におけるキリスト教の定着と成長の象徴とされています。
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成長の背景:伝統的信仰観との融合
汝矣島純福音教会の設立者である**趙鏞基牧師(1936-2021)**は、韓国で最も有名な牧師の一人です。彼のカリスマ的な説教は、「救いの三重祝福」と呼ばれ、「イエスを信じれば金持ちになれる、健康になれる、霊的に平安を得られる」と強調しました。信徒たちが「マイホームを手に入れた」「病気が治った」と証言を重ねることで、教会は急速に信徒数を増やしました。
この「イエスを信じれば願いが叶う」という信仰観は、韓国の伝統的な除災招福的信仰観(無病長寿や事業繁栄を祈る民間信仰)と、一神教的なキリスト教の信仰観が融合したものでした。このようなダイナミズムが、韓国の宗教空間に独自の発展をもたらしました。
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聖霊体験と祈祷院文化
趙鏞基牧師は、ペンテコステ派の影響を受け、聖霊体験を重視しました。聖霊体験とは、感情の高まりや異言(未知の言語を話す現象)、病気の癒しなど、神の存在を直接感じるような現象を指します。この文化は、韓国独自の「祈祷院」という施設に発展しました。祈祷院は、病気治療や悪霊退治を専門とする施設であり、韓国のキリスト教文化の一つの特徴となっています。
映画『シークレット・サンシャイン』では、息子を亡くした主人公が復興会に参加し、劇的な癒やしを得るシーンが描かれています。こうした場面は、韓国キリスト教の宗教体験の特徴を示しています。
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主流派との対立と現代の変化
聖霊体験や奇跡を重視する文化は、キリスト教主流派である長老派内から批判を受けることもありました。特に、病気治癒や奇跡を過度に強調することに対して、近年では否定的な見解が強まっています。一部の教会では、こうした現象を重視しない傾向も見られます。
韓国におけるキリスト教の特徴
韓国のキリスト教は、伝統的な信仰観や社会文化と融合しながら独自の発展を遂げてきました。一神教的な信仰観とアジア的な民間信仰が混ざり合うダイナミズムが、韓国の宗教空間を特徴づけています。汝矣島純福音教会の成功例や祈祷院文化の発展は、韓国のキリスト教がいかに社会と密接に結びついて成長してきたかを物語っています。