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韓国の民間信仰と死生観、風水思想
韓国の宗教文化を語るうえで欠かせないのが民間信仰です。これらは特定の教義や体系に縛られず、人々が自然に信じているものです。自覚的な信仰ではなく、生活の中に溶け込んだ信念として息づいています。
韓国の民間信仰
韓国では山が神聖な場所とされ、白頭山、金剛山、鶏龍山、智異山などの霊山では仏教や民間信仰の修行が行われてきました。伝統社会では村の入り口に「ソナンダン」と呼ばれる神樹を立て、その前で祈りを捧げました。また、トラやクマは神聖な動物とされ、特にトラは韓国の伝説や神話で重要な存在として扱われます。国鳥であるカササギは「吉鳥」として縁起の良い象徴です。
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民間信仰に根付く死生観
韓国の死生観や霊魂観は、ドラマや映画でも頻繁に描かれます。例えば、ドラマ『ホテルデルーナ』では、死者が生前の未練や恨みを解放するために立ち寄るホテルが舞台です。このドラマには、「恨みを抱く死者」の典型として、未婚の若い女性の幽霊である「チョニョグィシン(処女鬼神)」や溺死者、客死者が登場します。
また、韓国の伝統的な神々や妖怪も多くの作品に登場します。例えば:
チョスンサジャ(死神)
クミホ(九尾の狐)
トッケビ
サムシンハルメ(三神お婆:産神)
スホシン(守護神)
映画『神と共に』では、仏教的な「輪廻転生」や「因縁」、道教的な「玉皇上帝」や「お札(呪符)」といったテーマが扱われています。これらのモチーフには、中国文化からの影響も色濃く反映されています。
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風水思想と都市計画
韓国では、都市計画や家、墓の位置選びにおいて風水思想が重要な役割を果たしてきました。風水とは、大地に潜む「気」の力が人間の禍福を左右すると考える思想です。この概念は、三国時代に仏教僧によって中国から伝えられました。
朝鮮王朝の首都である漢陽(現在のソウル)は、風水によって決定されました。映画『風水師 王の運命を決めた男(原題:明堂)』では、漢陽を舞台に風水で力を得ようとする人々が描かれています。
また、個々の家や墓を建てる際も、最良の運気が集まる場所を「明堂」として選ぶ風習がありました。特に祖先の墓を良い地に埋葬すれば子孫が繁栄すると信じられており、「陰宅風水」が重視されました。映画『破墓』は、祖先の墓の位置を巡る風水師たちの物語を描いています。
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占い文化の広がり
韓国では占い文化も非常に盛んです。古くからの易学による四柱推命はもちろん、若い世代には西洋占星術、タロット占い、性格診断(MBTI)などが人気を集めています。これらの占い文化は、現代の韓国社会でも重要な役割を果たしています。
韓国の民間信仰や死生観、風水思想は、宗教的教義にとらわれない柔軟さを持ちながらも、伝統や文化に深く根差しています。これらは映画やドラマを通じて現代社会にも息づいており、韓国文化を語る上で欠かせない要素と言えるでしょう。
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