
韓国の犬にまつわる言葉・文化
韓国で犬といえば?
개(犬)の話題といえば、中高年は韓国の犬食文化を思い浮かべるかもしれない。
伝統的な食文化として犬肉が食されてきましたが、88年のオリンピックから衰退をします。さらにグローバル化の流れの中で衰退は加速し、もはや犬食は風前の灯火となっています。最近のある世論調査では「9割の韓国人が今後食べる気がない」と解答しています。
2024年1月9日、韓国国会で「犬食禁止特別法」が可決され、この法律の施行により、2027年から食用目的での犬の飼育、屠殺、販売が禁止されます。現時点では、犬食は完全に違法ではなく2027年までの3年間は猶予期間とされており、その間は犬食関連の行為に対する罰則は適用されませんので、犬食を提供するレストランは存在します。
朝鮮半島の伝統的な犬のイメージ
古来から犬は人々の身近で生活する動物でした。雑鬼、病鬼などがもたらす禍をはらい、家庭の幸福を守る能力があると信じられたり、説話の中では義理堅く友好的で犠牲を惜しまない動物として登場してきました。一方身近である動物のため、重要な栄養補給として夏バテ防止のために食されたりした。伝統的には天然記念物に指定されている「珍島犬(진도개)」は有名ですね。


韓国語の犬に関する言葉
身近な存在の犬は、性質や言動が粗暴な人に対する悪口として개(犬)という言葉が使われてもきました。それだけでなくスラングとして言語文化にも入り込んでいます。개새끼は代表的な욕설(罵り言葉)。새끼は「子」の謙譲語あるいは蔑称で、「犬の子」という意味です。韓国で、「欠席」と日本語で言うと、ビクッとされるというのはよくある話です(笑)。
「犬死に」をそのまま개죽음といいますが、「無駄な、くだらない、馬鹿げた」という意味の接頭辞としても개が用いられます。개꿈は「くだらない夢」、개소리は「くだらない話」、개수작は「馬鹿げた言動」、개판は「メチャクチャな状況」のことです。近年の若者は、副詞としても使っている。개 예뻐(くそかわいい)、개 웃겨(くそうける)といったポジティブな개表現が、SNS空間を飛び交っています。「子犬」は강아지、幼児語の「ワンワン」は멍멍이といいます。インターネットやSNS空間で댕댕이と書かれているのは、멍멍이をふざけて書いたものです。
若者と犬文化:アイドルを中心に
韓国においてここ15年ぐらいで急速に広がっている犬のイメージは日本同様にペット(반려견)というものです。アイドルのプロフィールの家族欄などをみてもペットの犬の名前が見られるなど、日本同様に犬を家族同然と考えている。少子化も相まってか犬を飼う人口も増えてきています。
BTSのVは포메라니안(ポメラニアン)、ソン・イェジンは말티즈(マルチーズ)、SHINeeのKEYは토이푸들(トイプードル)を飼っています。愛犬家だったサムスングループの二代目会長の故・李健熙は、韓国原産の犬種で柴犬似の진돗개(珍道犬)を世界に広める活動を行いました。

現在は、愛犬の姿がSNSを賑わせ、「아이돌 멍멍 선수권대회(アイドルわんわん選手権大会)」という番組も放送されるほどです。かつて똥개と呼ばれた「雑種犬」は、語感の良い믹스견(MIX犬)に言い換えられ、시고르자브종(시골잡종〈田舎雑種〉の表記をあえて開き、フランス語風にしたもの)という造語まで生まれました。BLACKPINKのロゼは유기견(捨て犬)だった믹스견を養子(입양)にしています。