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雨に濡れたレコード - 八神純子『みずいろの雨』
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ダイジェストとnoteにしか書けないこと。
100円箱の中には、いつだって掘り出し物が眠っていた。昭和のポップスが投げ売りされていた時代、手を突っ込めば歴史的名盤が指先に触れる。それでも、この一枚を引き抜いた瞬間の感触は、他とは違っていた。八神純子『みずいろの雨』──それは単なる「懐メロ」ではなく、時代の狭間に息づく音楽的奇跡だった。
テレビやラジオ、カラオケで何度も耳にしていた曲。だが、レコードとして出会った時、その響きはまるで違うものになった。イントロのピアノはただの旋律ではなく、雨粒が奏でる序章となり、力強いストリングスが嵐の訪れを予感させる。そして、八神純子のボーカルが降り注ぐと、空気が一変する。これは「聴く」のではなく「浴びる」音楽だ。
このレコードをどう使うか
BPMは120台中盤。ハウスセットの中に滑り込ませるには十分なグルーヴがある。しかし、アイスブレイクではない。フロアを一気に引き込む使い方が求められる。前の曲のアウトロを殺さず、イントロの音像を少し隠しながらビートを合わせ、「あー」という歌い出しをドンと前に出す。成功すれば、そこにはシンガロングの嵐が起こる。
ラテンハウスやジャズ寄りのセットにも映える。パーカッシブなリズムに乗せて「みずいろの雨」のメロディを響かせることで、独特の異国情緒が生まれる。前曲のアウトロに巧妙に溶け込ませ、低音をアイソレートしながらアカペラトラックのように浮かび上がらせるのもアリ。ただ、その切り替えには細心の注意が必要。
プレイヤーとして、そしてDJとして
今回はド・メジャーな盤の紹介だが、「珍しいレコード持ってるね」「そんなレア盤どうやって手に入れたの?」と言われることもある。でも、自分はレコードコレクターではない。マニアではない。ただのプレイヤーであり、作曲家だ。掘ることよりも、演奏し、表現し、響かせることに意味がある。
だが、プレイヤーだからこそ出会えるレコードがある。ライブの共演者が、実はレコードを出していた、なんてことがある。音に惹かれ、その場の空気に飲まれ、後でその人がリリースしたレコードを聴く。この出会い方は、どれだけレコード屋を巡っても得られない特権だ。
今後はそんな出会いについても触れてゆく。
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