就活は靴づれに似ていた
こないだ、横断歩道で私の前で信号待ちをしていたリクルートスーツに身を包んだ女子大生は、左足のかかとが血まみれになっていた。
よく就活は結婚に例えられるけれど、靴選びにも似ていると思う。自分にぴったりのパートナーを見つけるのも大変だけど、自分にぴったりな靴を見つけるのも大変だ。
見た目が気に入っても、あの彼女みたいに、片足だけ靴づれしてしまうこともある。
今日は書ける部分だけ書く。社会人1年目最後だし、2018年度最後だし、平成最後だし、一つの区切りだ。気が向いたら、編集・追記してるかも。
私は、2017年4月に大学4年生となり、就活に違和感を抱いたまま、就活を始めた。業種も職種も絞らぬまま、地方の大学から中途半端に進んだ卒業研究を置いて、東京の実家に戻ってきた。休学してたから同期は社会人1年目で、特に頼れる人もいなかった。
何のためにやるのかわからないSPIをこなし、とりあえずリクナビでネットサーフィンするように会社を見ていた。行きたい会社も仕事も特になかった。(あるし、あったんだけど、当時心の声はかき消されてた。)
そのうち、面接の前には不安になって、寝つけなくなった。夜に寝つけないから睡眠が浅く、日中は気怠かった。
「精神科に行ったら?」という母の勧めで、近所の精神科で不安に効く漢方をもらい、飲み始めた。病名をつけるなら「適応障害」と言われた。就活というシステムに適応できてなかったのだろう。
完全に『就活うつ』だった。症状をざっと上げると、こんな感じだ。
1 乗り換えができない。
電車に乗ったら安心して眠ってしまい、乗り換えの駅を過ごすことがあった。それで丸ノ内線は1往復したこともある。思い出したくないね。ある種トラウマだ。
2 15分の帰り道が1時間かかる。
なんとか最寄り駅に着いても、そこから15分かかる家までの道が1時間かかった。就活や将来のことも家に帰りたくなかった。
3 お風呂に3時間かかる。脱衣所で寝る。
お風呂で考えごとをしてしまって、冷たくなった湯船に入っていた。シャンプーして休憩、考えごと、リンスして休憩、考えごと。とにかくぼーーっとしていた。「みんなで暮らしているんだから気を使いなさい」と言われたのは覚えている。ドライヤーなんかするのは大変で、力尽きて、脱衣所で寝ていた。「寝ていた」というより「眠りについてしまっていた」という表現に近い。
4 家族に会いたくない。
実家暮らしで、バイトもせず、ただ食べ物を消費していくだけの自分に無力感を感じていた。家族と話したくないから、リビングにいて誰かが来たら部屋に行っていた。ほとんど自分の部屋にいた。何もない日は初めて食事をするのが午後4時とかだった。うつは午前中が辛く、午後になると回復するのだった。それでも、「おはよう」と声をかけてくれる家族はありがたかった。心配していたんだと思う。
身支度ができないとか、脳みそに寒天がある感じとか、他にもたくさんある。「死んだ目をした魚みたいだよ」って友人に言われたこともある。
それでも、そばにいてくれた友人や、そっと見守ってくれていた後輩には感謝している。内定をいただいた企業に、本当に悪いこともした。いろんな人に迷惑をかけた。人間って死ぬのは簡単じゃないんだ、と身体で感じたこともある。
今はここまでしか書けないけれど、もう会社近くのカフェで涙で顔がぐちゃぐちゃなので行きます。感謝しながら、1年目の仕事を終えよう。明日から、一応部署異動だ。
また、この話はどこかで。きっと、そのときは来る。