宇宙の広がり
第二次世界大戦が終結しても、宗教的・哲学的考え以外にも定常宇宙論が科学者の間で支持されていました。立場により解釈は様々でしょうが、宇宙というのは一定の世界であるということです。
古代より人間は星の動きを観察し、その運動を理解していました。ところが宇宙空間そのものに対する理解は不足していた(考える必要もなかった?)状態が長く続きます。
現在では宇宙空間は一定ではなく、宇宙には始まりがあり現在も成長を続けているというビッグバン理論が主流となっていますし、これを明確に否定する理論は数学の理論が根本から覆らない限り発表されないと思います。
ビッグバンという言葉で一般の方々は宇宙が爆発して誕生したと理解されているでしょう。諸説ありますが、とある科学者がこの理論に対して揶揄して「ビッグバン宇宙論」と語ったという説もあり、やはり当初は賛否両論の考え方でした。
※https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140328/390249/?P=4
ビッグバンは上図のモデルで表現されることが多いです。図では、左から右に時間が流れています。順番では「量子のゆらぎ」「インフレーション」「宇宙の晴れ上がり」となり、「インフレーション」以降がビッグバンとなります。
ただし、この図を見てもよく分かりませんね。
さて、そもそもなぜビッグバン宇宙論が検討されてきたところから話を始めましょう。これについては学校で習ったり、本で読んだ方も多いと思います。
ハッブルという天文学者(望遠鏡で観測をする人)がいました。彼は様々な銀河を観察しているうちに、遠くの銀河ほど遠ざかっていることを発見しました。どうやって銀河の距離を測定するかはここでは省略します。
唐突ですが光には速さがあって、それが最も速いものということは皆さんご存知でしょう。遠くの天体までの距離は、有限である光の速さで何年かかるかで表現します。地球から一番近い恒星(自ら核融合で輝いている星)までは、およそ光の速度で4年かかります。すなわち望遠鏡で見るその星は、光を発して4年後に地球に届いたので、4年前の姿を見ていることになります。遠くの天体を見るということは過去を見ていることになります。太陽も地球からは光速で約8分の距離にあります。同じ太陽系で兄弟と思って見ている太陽も8分前の太陽です。すぐ隣の月も1.5秒前の月を見ています。
遠くの天体は、過去の天体を見ているのです。
ハッブルはその遠くの天体ほど赤いことに気が付きました。救急車のサイレンなどで、音のドップラー効果は有名ですが、波の性質をもつ光にもドップラー効果はあります。光の速度は非常に速いので、私達の生活の中では光のドップラー効果を認識することは少ないのですが、宇宙空間では光でさえ波長を変化させます。遠くの銀河が赤く見えることは、光の波長が伸ばされた(長くなった)ことを意味し、その銀河が非常に光速で遠ざかっているということです。
遠くの銀河が遠ざかっていることが事実であれば、過去にはそれらの銀河を含む宇宙空間が現在よりも狭かった、ということになり、それを突き詰めると最終的には大きさが無い一点にたどり着きます。
特殊相対性理論では、全くの無であるある特異点とされます。相対性理論では微小世界の量子論を反映されていないので、ここに量子論を展開させるのが現在の理論のようですが、私自身量子論はチンプンカンプンですので、最初は何もなかった、というところから話を進めます(いい加減に見えるかもしれませんが、正解です)。
初めは無でした。空間も時間もありません。
いまから138億年前、突然空間と時間が始まりました。これ以降は、全てが物理の法則によって宇宙が誕生します。そして、その物理法則により最初の1秒の間に宇宙の設計図が完成しました。
誕生したばかりの宇宙は原子よりも小さく、エネルギーに満ち溢れ非常に高温でした。一般相対性理論ではエネルギーと質量(物質)は等価であり、非常に狭い宇宙の中でエネルギーより物質と反物質が生成されました。両者は反対の電荷を持ち、衝突すると消滅します。
このとき生成された、物質と反物質の量が同じであれば最終的に物質は消滅して、宇宙はエネルギーのみの空間となったはずです。しかし実際には、宇宙は物質で満ち溢れ、様々な天体が存在しています。
何らかの理由で、1億個に1個程度の割合で反物質より物質が残りました。
このときに残った物質が、現在の宇宙全体の物質となります。
空間と時間が始まってここまでの時間は10の−35秒です。ゼロに小数点をつけて、さらにゼロが34個続く非常に短い時間です。
その後、空間は非常に速い速度で膨張しました(インフレーション)。しかし素粒子で満ち溢れていたこの時期、素粒子の一つである光子ですら自由に運動できないでいました(光が届かない状態かな?)。
このインフレーション後の宇宙の膨張を「ビッグバン」といいます。つまり、宇宙の始まりはビッグバンではありません。
宇宙誕生後38万年後、ようやく光が解き放たれ宇宙は光に満ち溢れます。このことを「宇宙の晴れ上がり」といいます。
人類は宇宙を可視光を含む電磁波で観測しています。もし、このときの光を観測できれば、宇宙創世記を観測できたことになります。
前述で、遠い天体ほど過去を見ていると書きましたが、遠くにあって遠ざかっているのは天体です。「宇宙の晴れ上がり」は宇宙が膨張し冷却され、素粒子が結合して陽子や中性子などが生成された結果に光子が飛び出した瞬間です。ファーストスターも星雲や銀河もありません。
ところが光は飛び出しました。そして宇宙の膨張速度は光速より速いのです。
ビッグバン理論を証明する予測がある科学者から予測されていました。宇宙の晴れ上がり時の光が、宇宙の膨張によりドップラーにより可視光から電波に変わって観測されれば、それがビッグバン理論の証明になると。
先の図は、説明として宇宙を外側から描いています(実際にはそんなことはできないのでしょうが)。自分が宇宙の中にいると考えてください。
極初期の時は宇宙は小さく物質が邪魔をして光さえ進めなかったけど、光を超える速さで宇宙が膨張し、素粒子から陽子や中性子が誕生すると光がすすめるようになる。自分がこの空間の中にいると。
それから時間が経つと、自分の周りに密にあった物質が全方向に拡散しますが、その情報を与える光より速く宇宙は膨張する。光が届くのには時間がかかって、全方向から光が届く。
実際に、宇宙のあらゆる方向から「宇宙背景マイクロ放射」という電波が観測されています。宇宙の晴れ上がり時の光が電波に変わって、現在私達のもとに届いているのです。銀河などの天体がない方向からも電波は届きます。これはまさに、まだ小さく物質でみちていたときの名残です。
ここで疑問になるのは、物質が空間に均一に存在すれば、重力の偏りによる天体の誕生が無かったのではないかということです。
「宇宙背景マイクロ放射」は地上でも観測できますが、人工衛星によって全方向が観測されWMAPとして記録されました。
その結果、初期の宇宙の物質の分布にはムラがあり、物質の多いところの重力により星雲、星、銀河が誕生したことが分かりました。
これによりビッグバン宇宙論が観測として証明されます。
なお、「宇宙背景マイクロ放射」は個人でも体験可能であり、FM放送のチューニングを外れたときの雑音、アナログテレビの砂の嵐の1%がこれにあたるとされています。
宇宙の始まりから、広がり続ける宇宙を見てきましたが、宇宙の膨張は現在も進んでおりなお加速しているそうです。
将来的には宇宙空間での物質の密度は非常に小さくなり、重力による星の誕生も無くなり、恒星は燃え尽きたり、他の天体はブラックホールに吸収されていくのでしょう。
最後の恒星(黒色矮星と言われますが、この状態の天体は今現在はありません)が燃え尽きたときには宇宙には何も起こらず、時間という概念も意味をなさなくなります。これを宇宙の熱的死といいますが、光輝く宇宙はまだ誕生したばかりです。
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