「ザ・ノンフィクション」私が踊り続けるわけ ~53歳のストリッパー物語~
ストリッパーの星愛美さんが出演された「ザ・ノンフィクション」。
私の住む地域では放送されていないので、Twitterで愛美さんからの告知を見て即、関東在住の妹に録画を依頼。無事に見ることができたので感想を書くよー。
愛美さんのステージは、度々A級小倉劇場で拝見していた。
初めて記憶にあるのはペンキ塗りに扮したちょっとコミカルな演目。小柄で痩せぎすと言ってもいいくらい華奢な愛美さんがビシビシとキレのあるダンスを披露するのに驚いた。
しっかりと彼女を認識したのは、鮮やかなブルーの「踊り子の衣装」(後宮のハーレムの踊り子が着てそうなやつを自分の中でそう呼んでる)で舞い踊る演目。あまりにも圧倒的なパワーに「これはアメノウズメだ!この人はアメノウズメの生まれ変わりだ!!」と衝撃を受けた。
番組を見て初めて、愛美さんがお身体を悪くされていたこと、今も股関節の痛みや諸々の身体の不調や不安と戦いながらステージに立っていることを知って大層驚いた。
ステージでの愛美さんは、そんなことは一ミリも感じさせない。笑って、踊って、踊って、笑って、見る人達の魂を揺さぶる。
番組内でポーズができない、動けない、と仰っていた頃のステージを見ていたはずなのに、全く気づかなかった。「プロだから」と言ってしまえばその通りなんだろうけど、彼女はいつでもステージ上で艶やかに舞い踊る「踊り子、星愛美」として誰かの記憶に残りたいんじゃないのだろうかと感じた。
鬼気迫るような激しいステージとは打って変わって、お話しすると謙虚で少女のように可愛らしい愛美さん。ステージでの舞に力を、お話しする時の可愛らしさに癒しを沢山頂いている。
私の名前なんて覚えてくれてなくてもいいのに、「お顔はわかるけどお名前が出て来ないのー!」ってポラのたびに困ってくれる愛美さんが可愛いくて、お会いする度に好きになっていくし、もっと色んなステージを見てみたい!と思う。
53歳という年齢は、一般企業でも第一線からぼちぼち退きつつ後進の育成に勤め始める年齢だと思う。
でも31周年を超えてなお、愛するストリップという文化、所属を超えて慕ってくれる後輩たち、そして自分を愛してくれるお客さん達の為に最前線で踊り続ける愛美さんは、先陣を切って茨を切り開いていく戦士のようだ。
A級小倉劇場で見た31周年作の「ボディーガード」、とても素晴らしかった。次々と早替えしていくのがもったいないくらいの豪華な衣装たちが、所属劇場や、愛美さんより早く辞めてしまった後輩達からもらった衣装で作られていることも番組を見て初めて知った。色んな人の想いを背負ってこの人は踊っている。だからこんなに神々しく輝くのだろう。
「いつでももう辞めようって思ってるの。」
「星愛美」は、番組の中でずっとそう言っているようだった。
番組内では「Show Must Go On」を地で行くようなある種の悲壮感と破滅型のような人生がクローズアップされていたように思える。
でも実際にお会いする彼女は、そんなことを微塵も感じさせない。息を切らしてステージごとに力を込めて踊る愛美さん、ステージ後のポラで「この羽、リンスするとふわふわになるの~」と笑う愛美さん、A級小倉劇場のステージで、所属の違う初乗りの踊り子に優しく手順を教える愛美さんは、その名前の通り愛しく美しい人だと思う。
劇場からの帰り、「まなみん姐さん、またね」と入口のポスターにあいさつをして帰路につく。
「星愛美」という踊り子を、私はこっそり「まなみん姐さん」と呼んでいる。そうすると少しだけ、彼女を慕う後輩踊り子達の仲間になれたような気がするから。