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【300字小説】折りたたみ症候群
平成の中頃、折り畳み式の携帯電話が一世を風靡し、そのトレンドは業界で瞬く間に主流となった。また、局地的なムーブメントだったがある地域ある界隈では一時期、猫も杓子も折り畳み、という行き過ぎた事象が観測されていた。
折り畳みネイルから始まった流行は、あっという間に常軌を逸した広がりをみせた。折り畳みデパート、折り畳み恋愛、折り畳める実家…と、もはや節操がなかった。しかし躍起になって自らの身体を折り畳もうとする輩が出てきたあたりで、誰かが声をあげた。「そのままの方が美しいのでは?」
すべてを折り畳んで手中に収めたかのような錯覚から醒めた人々は、それまでが嘘のようにのびのびと暮らし始めたのだった。